H1 KIZZNA 紲きずな 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」2016 Winter Vol.10 TAKE FREE!! ご自由にお持ち下さい ロングインタビュー 一般社団法人 日本障がい者サッカー連盟会長 北澤 豪 Join together, advance together. 手を取り合って、 共に。 未来創人/香川由美 NPO法人 患者スピーカーバンク 理事長 ボランティア活動TOPICS P2 KIZZNA vol.10 Theme 結ぶ 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」紲。 記念すべき節目の第10号。キーワードは「結ぶ」です。 私たちの暮らしには、人との結びつきはなくてはならないもの。 人との結びつきが道を開いてくれた経験は、誰しも持っているのではないでしょうか。 今回ご紹介するのは、結びつくことでさらに未来を明るく照らしていこうとしている人たちや、 人と人とが結びつく「場づくり」のために日々工夫を重ねている人たち。 そんな皆さんの言葉は常に前向きで、魅力に溢れています。 きっと明日に向かう元気の源になるはず。 どうぞページをめくって、あなたの心に響く言葉を探してみてください。 P3 KIZZNA 紲きずな 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」kizzna 2016 Winter Vol.10 CONTENTS 04 ロングインタビュー サッカーの力で、 心の貧困がない社会を。 一般社団法人 日本障がい者サッカー連盟 会長 北澤 豪さん 07 日本障がい者サッカー連盟が目指す未来 公益財団法人 日本サッカー協会 グラスルーツ推進部 部長 一般社団法人 日本障がい者サッカー連盟 専務理事 事務総長 松田薫二さん 09 ケアフィットファーム勝沼レポート 巨峰狩り&収穫祭が開催されました! 10未来創人〜みらいつくりびと NPO法人 患者スピーカーバンク 理事長 香川由美さん 12 おも活掲示板/おも活 14 ボランティア活動TOPICS 16 学生団体flat〜ふらっと〜 ふらっと日記 17 care-fit通信 24 特集 : 商業施設 ようこそ、バリアフリー最前線へ。 25 こんなところまでバリアフリー! 商業施設のユニバーサルデザイン 29 Interview with leader 三井不動産商業マネジメント株式会社 代表取締役社長 青柳雄久さん 発行人 畑中 稔 発行所 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 〒101-0061 東京都千代田区三崎町2-2-6 TEL:03-6261-2333 FAX:03-6261-2334 URL: http://www.carefit.org E-mail: toiawase@carefit.org 製作 タクトシステム株式会社 制作 株式会社フリート 編集長 中川純一 編集 城田晃久 取材・文 城田晃久 撮影 西原樹里 平野慎一 和田咲子 アートディレクション 笛木 暁 デザイン 田辺淳志 印刷 日経印刷株式会社 本誌の一部あるいは全部を無断で複写、複製、転載することは禁じます。 Kizzna 2016 Printed in Japan P4-6 一般社団法人  日本障がい者サッカー連盟 会長 北澤 豪 サッカーの力で、 心の貧困がない社会を。 今年の4月に、障がい者サッカーの7つの競技団体を統括する 一般社団法人 日本障がい者サッカー連盟が設立されました。 会長に就任したのは、元日本代表の北澤豪さん。 現役時代“中盤のダイナモ”と異名を取る抜群の運動量でチームに貢献した北澤さんですが、 誰もがスポーツを楽しめる社会を目指して、今日も走り回っています。 日本障がい者サッカー連盟が統括する7つの競技団体 ● 特定非営利活動法人 日本知的障がい者サッカー連盟 ● 一般社団法人 日本ろう者サッカー協会 ● 一般社団法人 日本CPサッカー協会 ● 特定非営利活動法人 日本ブラインドサッカー協会 ● 特定非営利活動法人 日本アンプティサッカー協会 ● 一般社団法人 日本電動車椅子サッカー協会 ● 特定非営利活動法人 日本ソーシャルフットボール協会 スポーツをすることは、誰もが平等に持っている権利。 支援を受けるだけではなく、魅力も発信していきたい。 ――日本障がい者サッカー連盟(以下JIFF)についてお聞かせください。  スポーツをすることは、誰もが持っている権利です。JIFFの目標は、サッカーをはじめとして、誰もが平等にスポーツができる環境づくりを進めることです。それは障がい者や健常者という枠だけではなくて、子どもからお年寄り、世界的に見れば国籍のない人や貧困の人たちも含んだ、本当の意味ですべての人がスポーツを楽しめる社会を目指すということです。  さらに、選手たちの生活や仕事といった部分までカバーできるようになるのが理想です。そのためにはスポーツ界だけでなく、社会全体が変わる必要があると思っています。スポーツを通して社会を変えていく。共生社会を実現していくことが最も大きな目標ですね。  私は、日本にもっとお互いが助け合う文化が根づく必要があると感じています。というのも、国際協力機構(JICA)のオフィシャルサポーターとして世界の紛争地域や貧困地域に赴いたときに見た光景が、今も頭に残っているからです。カンボジアでは、地雷で脚を失った子どもたちも、ほかの子たちと一緒に学校に通い、自然に混じり合って助け合う生活をしていました。国としても早い段階から社会復帰プログラムや車いすバスケットボールなどのスポーツを振興しています。彼らは経済的には貧しいけれど心は豊かで、人というものをしっかりと見ている。果たして日本でも同じように人というものを見ようとしているのか。そう考えたときに、経済的には恵まれているはずの今の日本社会に“心の貧困”を見たような気がしたんです。ですから私にとっても、JIFFの初代会長に就任させていただいたことは、そのときに感じた課題に取り組む大きなきっかけになると感じています。 ――JIFFではどのような取り組みをされているのでしょうか。  まずは、7つの競技団体の相談窓口として、日本サッカー協会(JFA)と連携しながら支援することですね。それぞれの団体がどんなに一生懸命活動しても、規模が小さいままであれば、普及も強化もなかなか進みません。彼らが自費で大会に参加したり、練習施設を探さなければいけない現状を少しずつでも変えていくこと。そのためにまずは金銭面での支援、それから結果に繋がるような強化が必要だと思っています。  具体的には、パートナー企業の募集であったり、世界大会の誘致ですね。実際にレベルの高いプレーを見てもらうことで周りの見方が大きく変わりますし、理解も進みます。リオパラリンピックではメディアでも障がい者スポーツをたくさん取り上げてくれたので、一般への認知、理解はかなり広がったと感じています。この流れは大切にしていきたいですね。  一方で、競技団体側から発信していくことも必要だと思います。自分たちはどれだけの競技レベルにあって、人々にどんなメッセージを伝えることができるのか。支援を受けるだけでなく、障がい者スポーツを通して、発信する側と受け取る側がお互いに得るものがある状態が理想ですね。 私たちは誰しも、 いつか歩けなくなるかもしれない。 ――障がい者サッカーの魅力を教えてください。  見えないからこそ神経を研ぎ澄ます。動けないからこそ頭を使う。選手たちがどんな状況で、どんな工夫をしてプレーしているかに注目してもらえれば、見え方や捉え方が変わってくるのではないかと思います。健常者のサッカーと比べてレベルが高いとか低いということではなくて、身体の動きや機能を制限されたなかでどれだけの創造性を発揮できるか。そこが障がい者サッカーの一番の魅力だと思います。  もし私が現役時代に障がい者サッカーと出会えていたら、もっとうまくなっていたと思いますよ。見えない部分を想像したり、先を読んでプレーするといったスキルは、障がい者サッカーを経験するとかなり鍛えられますからね。そういった意味でも、現役アスリートたちにはもっと障がい者スポーツに関わってもらいたいと思っています。  障がいがありながらサッカーを続けている選手たちは、健常者より乗り越えてきたものが大きいというのが私の持論です。彼らの姿を見るたびに、JIFFのキャッチコピーである“サッカーならどんな障害も超えられる”という言葉の持つ意味を実感しますよ。彼らは、文字通り、命を削ってサッカーをやっています。重い障がいのある人が参加することが多い電動車いすサッカーの試合では、キックオフ前に黙祷を捧げるのが恒例行事になっているほどです。    ひと月先、一週間先に自分の身体がどうなるかわからない。それでもスポーツを楽しめて、充実感を得られる社会であってほしいと願ってやみません。 ――スポーツの現場におけるボランティアの重要性についてお聞かせください。   最近は若いボランティアの人たちが増えていますよね。若い人たちが大会運営に参加してくれれば活気が出るし、彼らは受け身ではなく積極的に行動しますから、そのスポーツのファンにもなって、さらに発信者になってくれるかもしれない。そういった意味でも、ボランティアの人たちの力は大きいと思います。日本のスポーツ界の発展にとって、2020年というのはとても大きなステップになると思います。それまでにボランティアとしてのスキルを身につける人がたくさん増えてくれることを期待しています。  そもそも長い目で見れば、私たちは誰しも、いつか歩けなくなるかもしれないし、目が見えなくなるかもしれない。高齢社会で車いすユーザーが車いすユーザーを介助しなければいけないような時代が来るかもしれない。そんなときに車いすの操作スキルを持っていることがどんなに役立つか。ボランティア体験を通して今から馴染んでおくことはとても重要だと思います。実は私自身が車いすやクラッチ(杖)、眼帯などを使った体験をさせてもらう時はそういったことも意識しています。生涯、大好きなサッカーを続けたいですからね。 障がい者サッカーの奥深い魅力に気づけば、世界が変わる。 一般社団法人 日本電動車椅子サッカー協会 想像以上の高い競技性に、ファンを拡大しているブラインドサッカー。 Profile きたざわ つよし 1968年、東京都生まれ。プロサッカー選手として、読売クラブ、東京ヴェルディで活躍。日本代表としても国際Aマッチ59試合に出場した経験を持つ。2003年の引退後は社会貢献活動にも積極的に取り組み、国際協力機構オフィシャルサポーター、公益財団法人 日本サッカー協会理事兼フットサル・ビーチサッカー委員長として活動。2016年4月、一般社団法人 日本障がい者サッカー連盟の会長に就任した。 P7 日本障がい者サッカー連盟が 目指す未来 公益財団法人 日本サッカー協会 グラスルーツ推進部 部長 一般社団法人 日本障がい者サッカー連盟 専務理事 事務総長 松田(まつだ)薫二(くんじ)さん 10月5日に、日本障がい者サッカー連盟(JIFF)はパートナー企業との提携を発表しました。日本ケアフィット共育機構も、アライアンス・パートナーとして、 ボランティアの養成・派遣や障がい者サッカーの普及・啓蒙活動を行うことになりました。 そこで、JIFFの専務理事である松田さんに、JIFFが目指す未来について伺いました。 未来@ サッカーのグラスルーツ(草の根)から、 誰もが住みやすい社会を目指す。  2014年5月15日に日本サッカー協会(JFA)が「グラスルーツ宣言」を行いました。これは、「誰もが、いつでもどこでも安心・安全にサッカーが楽しめる環境を提供していく」という宣言になります。その「誰もが」というなかには、もちろん障がいのある人も含まれています。そこで、障がいのある人たちがその生涯を通じてサッカーを楽しむために、7つの障がい者サッカー団体の連盟をつくろう、という方向でまとまったのが、JIFF設立の経緯です。  JIFFは今年の4月に発足し、今回、6社のパートナー企業の協力を得ることができました。今後は、パートナー企業をはじめとする皆さまからのご支援を7団体の活動のために使っていくことがひとつ、もうひとつは、JFAや日本代表選手などが持つさまざまなネットワークを使いながら、障がい者サッカーを普及していくこと。このふたつが私たちの役割になります。  さらに、JIFFの活動を、サッカーを通じた社会貢献にも繋げていきたいと考えています。障がい者サッカーが浸透し、障がいのことを多くの人が理解することで、誰もが住みやすい社会になっていくことが大きな目標です。 未来A ボランティアと障がい者サッカーの 高い親和性を生かして「居場所」をつくる。  このたび、日本ケアフィット共育機構さんと私どもJIFFは、アライアンス・パートナーとして提携させていただくことになりました。  私もそうですが、歳を重ねるとなにか社会に貢献したいと考える人が増えてきます。えてしてボランティア活動というのは安い労働力のように捉えられがちですが、社会に役立ちたいと考える人たちの居場所をつくるという側面もあると思います。ですから、ボランティアとしての素養を養える日本ケアフィット共育機構さんの「サービス介助士」という資格は、今後ますますニーズが増えてくると思いますし、この提携によって、彼らが活躍できる場をつくれるということも大変意義のあることだと考えています。  障がい者スポーツの現場では、障がいのある人たちを助けるだけではなくて、頑張っている選手たちから学んだり、試合を見て勇気づけられることもある。そういった意味で、ボランティアと障がい者スポーツとの親和性は高いと思います。大会の運営スタッフとしてだけではなくて、観戦ボランティアや練習パートナーなど、たくさんの人がさまざまな局面で障がい者サッカーに関わってもらえたら嬉しいです。 10月5日のプレスリリースにて。北澤会長、各競技の選手と日本ケアフィット共育機構職員。 P8 見たらハマること間違いなし!?  障がい者サッカーを知ろう!! 日本障がい者サッカー連盟に加盟している7つのサッカーについてご紹介します。 観戦に行ってみるもよし、練習をお手伝いしたり、一緒にプレーできる種目もありますよ!! 01 知的障がい者サッカー 7団体のうち最も競技人口の多い種目で、国体の後に開催される「日本障がい者スポーツ大会」の正式種目。見た目は一般のサッカーとほとんど変わらないが、知的障がいの特質上、ダーティなプレーが少なく、とても爽やかな試合が行われる。健常者と一緒に開催される大会やイベントもあり、誰もが混じりやすい種目と言える。 JFFID2014 02 聴覚障がい者サッカー デフサッカーとデフフットサルがある。選手たちは、競技中は補聴器を外して音のない状況でプレーし、審判はフラッグでプレーの停止を指示する。声が使えない分、手話やボディランゲージでのコミュニケーションやアイコンタクトなどでいかに意思疎通を図れるかがポイント。応援や指示の声がない試合風景もこの種目ならでは。 03 脳性まひ者7人制サッカー 脳性まひ、脳卒中、脳外傷など、なんらかの原因による脳の損傷によって運動機能障がいのある人で、自力で歩くか走れる人がプレーする7人制のサッカー。「CPサッカー」とも呼ばれる。障がいの程度によってクラス分けがあり、混ざってチームを構成するため、互いの特徴を理解したプレー、チームワークがとても重要になる。 JCPFA 04 視覚障がい者サッカー 全盲クラス(ブラインドサッカー)とロービジョンクラス(ロービジョンフットサル)がある。音の出るボールを使用し、サイドラインに腰上の高さの壁をおいて行われる。監督や相手ゴール裏に控える「ガイド」の声が重要。ゴールキーパーは晴眼者が務めるため、パラリンピックのなかで唯一、健常者が選手としてプレーできる種目。 JBFA 05 アンプティサッカー 上肢または下肢の切断障がいの人がプレーするサッカー。「クラッチ」と呼ばれる杖状の医療用器具を使用する。フィールドプレーヤーは片足しか使えないため、キックの正確性やクラッチさばきが重要。クラッチを支点にしたボレーシュートやオーバーヘッドキックなどアクロバティックなプレーも見られ、エンターテインメント性が高い。 JAFA 06 電動車椅子サッカー 男女関係なしの混合チームで、電動車いすにフットガードをつけて行われる「足で蹴らないサッカー」。選手たちは、自立した歩行ができないほどの重度な障がいの場合も多い。顎や指先など、使える機能を使った車いすさばきから繰り出される繊細なパスやドリブル、頭脳的な連携プレー、車いす同士のぶつかり合いも辞さない激しさが見どころ。 一般社団法人日本電動車椅子サッカー協会 07 精神障がい者サッカー 「ソーシャルフットボール」とも呼ばれ、精神障がいのある人が、サッカーを通じて他人との繋がりや自己肯定感を得ることで社会復帰を目指すリハビリという性格も持つため、症状がよくなると出場資格を失うのが特徴。健常者と合同で行われる大会や試合も多く、その様子は通常のフットサルの試合とほとんど見分けがつかない。 JSFA P9 ケアフィットファーム勝沼レポート 障がい者就労支援事業所 就労移行支援 就労継続支援B型 ケアフィットファーム勝沼の 日々をレポートします! ~ 障がいの有無にかかわらず、みんなが活躍できる場の実現を目指して~ ケアフィットファーム活動レポート 巨峰狩り&収穫祭が開催されました! 8月28日(日)に、山梨県の高齢者施設や特別支援学校の方々など、200名を超える人たちがケアフィットファームに集合。巨峰の収穫祭が盛大に開催されました。今年は特設ステージが設置され、『甲州ろうあ太鼓』の皆さんと『マルヒアカイ』の皆さんがパフォーマンスを披露。じゃがいもやワインの試食・試飲会も開催され、参加者の皆さんは思い思いに楽しんでいる様子でした。去年も参加したというリピーターの方も多く、巨峰のできは過去最高レベル。年々ケアフィットファームの収穫物も収穫祭も発展しています。 山ア(やまさき) 舞佳(まいか)さん(大学4年生) 甘くて美味しいぶどうをたくさん頂き、大変満足です。催しものやスタッフの皆さんの心配りに触れ、温かい気持ちになりました。 石渡(いしわたり) 幸絵(ゆきえ)さん(大学4年生) イベントで行われていた、甲州ろうあ太鼓の迫力のステージ、フラダンスも素敵でした! 会場内の皆さんが楽しまれていたことが印象的でした。 ケアフィットファームの1日 ?利用メンバー手塚さんの場合? 手塚さんは、事業所に通い始めて2カ月の利用メンバー。 毎日楽しく農作業に励んでいます。そんな手塚さんの1日をご紹介します! 9:30 朝礼。今日の作業を確認します。 ↓ 9:40 作業前にみんなでラジオ体操。 ↓ 11:00 いろいろな作業をこなします。 ↓ 12:00 お昼ごはんがおいしい! ↓ 13:00 午後の作業もがんばります。 ↓ 14:00 休憩中も和気あいあいと過ごします。 ↓ 16:00 今日も1日、お疲れ様でした! 大変なこともあるけど、 作業がとても楽しいです。 丁寧に仕事をやり遂げることを 目標にしてがんばります! ケアフィットファームは、あらゆる人たちが共に働き、共に学べる場を創造し、みんなが活躍できる場の実現を目指します! 平野 隆司  平野 夏芽  竹川 華 お問い合わせ 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 甲州事業所 ケアフィットファーム 〒404-0033 山梨県甲州市塩山赤尾650 TEL:0553-39-8681 FAX:0553-39-8682 E-mail:koshu@carefit.org WEB http://www.carefit.org/farm/ P10-11 未来創人 みらいつくりびと 未来を見据え、 どんな困難も 楽しみながら乗り越える。 そんな人生の達人を、 私たちは 『未来創人(みらいつくりびと)』 と名づけました。 NPO法人 患者スピーカーバンク 理事長 香川由美さん ここに集う人たちと一緒に、 誰もが自分らしく生きられる社会を目指します。 これが自分のライフワーク。 もっと患者が医療に参加できるように。 「インタビューってあまり慣れていなくて…洋服とか、大丈夫ですか?」緊張してます、と顔を扇ぐ香川由美さん。さまざまな病気のある人たちが『患者スピーカー』として自身の経験や思いを語る講演活動の支援、普及を行うNPO法人『患者スピーカーバンク』の2代目理事長として活躍する未来創人だ。そのほんわかとした雰囲気と屈託のない笑顔からは、失礼ながら100名近い会員を抱えるNPO法人のリーダーとして奮闘する様子は想像がつきにくい。が、受け答えの端々には、NPO活動にかける情熱と、その活動に携われている喜びが垣間見え、この活動を広めたいという大きなエネルギーが伝わってきた。 香川さんは、9歳のときに1型糖尿病(※)を発症。患者スピーカーバンク設立以前から、患者当事者として患者会や製薬会社の社員研修などで体験談を語ってきたという。ただ、言葉に詰まったり、時間をオーバーしてしまうことも多く「なんの工夫もない丸腰の状態でお話しすることが、本当に聞いてくれる皆さんの役に立つのかと、限界を感じていました」。 そんな香川さんが患者スピーカーという概念に出会ったのは2011年。東京大学の社会人ゼミが開催した『育み生かす患者スピーカー』と題されたシンポジウムの内容に「びびっときた」のだという。「私自身、それまでの個人的な活動を通して、もっと患者が積極的に医療に参加していくことや、そのための仕組みづくりの必要性を感じていたのですが、そこで聞いた、患者スピーカーバンク初代理事長である鈴木(信行氏)の講演がまさにその核心をついたものだったんです」と振り返る。 病気だからこそ得られたものがある。 相手を思いやれる心の襞(ひだ)はその証。 最初は、鈴木氏と有志5人でのスタート。仕事の合間を縫って講演活動や法人の運営業務に携わるうちに、「これが自分のライフワーク」という確信を得た香川さんは、少しずつ法人活動の割合を増やし、2016年4月からは東京大学大学院の博士課程に進学。患者スピーカーバンクの活動とも密接にリンクする医療コミュニケーション分野の研究を進めながら、鈴木氏から理事長職を受け継ぎ、現在は法人のマネジメント業務を中心に活動している。 1型糖尿病は、常にインスリンのコントロールが必要で、体調管理が難しい病気だ。少なからず体調が優れないときもあるに違いない。そんななかで、香川さんを突き動かしているものはなんなのだろう。香川さんは、「この活動の恩恵を一番受けているのは私」と語る。「この活動に出会う前は、病気は私の足をひっぱるもので、人生のお荷物でした。でも、この活動に携わるようになってから、さまざまな場面で、病気だからこそ得られたものがある、ということに気づけたんです。例えば、病気によって生きづらさを感じている人のリアルな気持ちが私にはわかります。そういった、相手の気持ちを理解できる『心の襞(ひだ)』みたいなものが私に備わっているのであれば、それは、病気で苦労しなかった人生よりも豊かに生きられているということなんじゃないかと思うんです」。“病気も個性”“幸せかどうかは自分の気持ちしだい”といった、若い頃には『きれいごと』だと思って反発していた言葉も、法人活動に集う人たちとの会話や、一緒に過ごした時間の積み重ねによって、心から信じられるようになったのだという。 誰もが大切なことを感じ取れる、 誰もが居場所だと思える場所にしたい。 「この活動を続けることで、できるだけ病気を防ぐことは大前提として、『病気や困難も、プラスに変えられる』と信じられる人が、今より増えてほしいんです」と語る香川さん。「そのためには、教育の現場や医療に関係ない分野の人たちにも届いて、聞く人や患者本人が大切なことを感じ取れる活動にしていかないと」と気を引き締める。 現在、会員数は約90名。そのうち患者スピーカーは約60名で、それ以外は活動に共感して参加している一般スタッフだ。さらに、約15名のボランティアスタッフが法人活動を支えている。「病気かどうかは関係なく、一人ひとりが“好き”と“得意”を生かせて、『ここが自分の居場所』と思えるような活動にしていきたいです」と香川さん。その瞳は出会ったときの印象とは打って変わって凛々しく、未来をまっすぐに見据えていた。 (※)1型糖尿病 主に子どもに起こる原因不明の難病。日本での発症率は10万人あたり1?2名と言われる。生活習慣を原因とした2型(成人型)糖尿病とは原因も治療の考え方も異なる。体内でインスリンをつくることができなくなるため、生涯に渡って厳密な治療が必要とされる。 参照:http://japan-iddm.net/(認定特定非営利活動法人日本IDDMネットワークホームページ) 患者スピーカーの講演スキルを高める研修風景。一般の聴衆に向けて自分の体験談を話すことで、患者本人の気づきの場にもなっている。 今は博士課程に在学中。患者スピーカーバンクの活動を自己満足で終わらせないために、患者の体験談の教育効果や診療行為への効果などを研究している。 Profile NPO法人 患者スピーカーバンク 理事長 香川由美(かがわ ゆみ) 1981年神戸市出身。東京大学大学院医学系研究科 社会医学専攻 医療コミュニケーション学分野(博士課程)在籍。2011年から患者スピーカーバンクの立ち上げメンバーとして活動に携わり、2016年6月に理事長就任。患者当事者としての講演活動や、患者スピーカーバンクの活動を広めるためのマネジメント業務を行う。 NPO法人 患者スピーカーバンク 2012年設立。『患者がみな、病気の経験は自分を形づくるもののひとつと思え、誰もが自分らしく生きられる社会』をビジョンとし、『患者スピーカー』と呼ばれる患者当事者による講演活動と、患者スピーカーの語りを聞く場づくりを中心とした活動を行っている。同様の活動を行う組織は世界的にも少なく、新しい病気との関わり方を模索するパイオニア団体として注目されている。 HP:http://npoksb.org/ P12 おも活掲示板 お知らせ 「おも活」のWEBページが できました! 実施内容のご報告や参加者の皆さんから寄せられたコメントなどをご紹介していきます。おも活の実施内容もご案内していますので、興味のある方はぜひ覗いてみてください! WEB http://www.carefit.org/personal/omokatsu.php 募 集 学生アシスタント大募集! 2017年からアシスタントとしておも活に参加してくれる学生さんを募集します! 一緒におも活を盛り上げませんか? ●参加の流れ 2017年1〜3月 研修(スポ育・おも活見学、アシスタント養成講座) 2017年4月〜 おも活アシスタント参加 ●募集要項 資格:大学生もしくは専門学生。日本ケアフィット共育機構の理念と事業に共感できる方で、サービス介助士・サービス介助基礎検定・TASKALセミナー修了者。 ※ 交通費・謝金として1,000円支給 詳細は左記の「おも活WEBページ」まで! ご報告 関西でも「おも活」広がっています! 10月19日(水)に今年2回目の関西でのおも活実施。 大阪市立小路小学校の4年生、計46名が参加してくれました。 関西でおも活を 担当している岩橋です! 小路小学校の皆さんは、自分の言葉が相手にきちんと伝わること、相手を思いやる気持ちを持とうということを授業を通じてしっかり学んでくれたと思います。困っている人だけではなく、身近な人にも優しい気持ちを持って接していけば、きっとすべての人にとって過ごしやすい社会ができる! おも活の学びを通じて、どんどん優しい輪が広がっていければと思っています。 アンケートより □目が見えなくて怖い思いをしたので目が見えない人に対して思いやりのある行動をしようと思いました。 □おも活で学んだことを生かして、街なかで困っている人がいたら助けてあげたい! □どんなふうに声をかけたらいいのかが分かったので、友だちにも教えてあげたいです。 P13 おもてなしの心、 おもいやりの心を大切に。 おも活 「そっと、さっと、あんしんを。」プロジェクト おも活とは・・・ 日本ケアフィット共育機構のサービス介助士・講師が小学校を訪問し、子どもたちに障がいのある方への案内方法やレクリエーションを通して、相手の立場になって考えることの大切さを伝える活動。日本ブラインドサッカー協会が開催するダイバーシティ教育プログラム「スポ育」実施校に対しても活動を展開し、2020年に向けてボランティア文化を育てていきます。 アンケートを見ると、参加してくれたみんなが思いやりの大切さをよーく学んでくれたことがわかるね! 障がい者スポーツにもどんどん興味を持ってくれるといいな! 9月22日(木祝) 品川区青少年委員会「親子でチャレンジ! ?おもいやり?ブラインドサッカー体験」 参加されたのは、品川区にお住まいの親子の皆さん。終始意欲的で、なんと全員がアンケートに回答してくれたそうです。「こんなことは初めて」と担当の方も驚かれていました。それだけおも活が皆さんの心に響いたのですね。お子さんだけでなく、付き添いの大人の皆さんも一緒に楽しみながら参加してもらえたのが印象的でした。 アンケートより □相手の立場に立って考えることが重要だと思った。 □勇気を出して困っていることや助けてほしいことがあるか聞いてみたい。 □ちょっと怖かったけど勉強になった! □どこを歩いているかわからなくて不安だった。 □普段の自分の伝え方が抽象的でわかりにくいことがわかった。 9月25日(日) 蒲田地区リーダー講習会「パラリンピアン体験」 日本ブラインドサッカー協会と合同で、ブラインドサッカー体験とおも活を実施しました。参加した約80名のお子さんと付き添いの大人の方々で、体育館を目一杯使って体験。とてもにぎやかな雰囲気でした。 平成28年度 蒲田地区 リーダー講習会運営委員長 藤井 ツヤ子さん 目隠しをした人を誘導する声かけを体験し、私自身が難しさを学びました。受講した子どもたちが今回の経験をもとに障がい者福祉に理解を深め、行動に移せるようになることを期待しています。 学校関係者、保護者の皆さまへ 日本ケアフィット共育機構では「おも活」に参加していただける学校、施設を募集しています。どうぞお気軽にお問い合わせください。 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 〒101-0061 東京都千代田区三崎町2-2-6 TEL:03-6261-2333 FAX:03-6261-2334 WEB http://www.carefit.org/ P14-15 ボランティア活動TOPICS 日本ケアフィット共育機構では、サービス介助士やボランティアの皆さんとともに、 さまざまなイベント会場で、誰もが娯楽やスポーツを楽しめるお手伝いをしています。 次はあなたも一緒に参加してみませんか? いよいよ開幕! 男子プロバスケットボールリーグB.LEAGUE サービス介助士がサポートします。 10月1日(土)に開幕した男子プロバスケットボールリーグB.LEAGUE。日本ケアフィット共育機構は「アースフレンズ東京Z」のホームゲームでサービス介助士によるボランティア活動を行うことになりました。約2,000名もの方が来場し、会場の大田区総合体育館が大変な熱気に包まれた開幕戦では、サービス介助士の皆さんが車いす利用の方を観戦スペースにご案内したり、お子さま連れの方のベビーカーをお預かりしたりと、てきぱきとお手伝い。歴史的な開幕戦の成功に貢献できたのではないでしょうか。 たくさんの観客からの熱い声援が降り注ぐコートで、選手たちは激しい試合を見せてくれました。 小林 淳さん (電機メーカー勤務) 昨年勤務先が協賛した車いすバスケットボールの大会をきっかけに、サービス介助士の存在を知りました。その後資格を取得して、ボランティア活動に参加させていただいています。アースフレンズのホーム開幕戦では、ベビーカーでのお客さま、車いす利用のお客さま、ボランティアスタッフの皆さんと、ワクワク、ドキドキ、楽しい時間を過ごせました。 今年も素晴らしいアーティストが多数出演! 第13回ゴールドコンサートをお手伝いしました。 10月10日(月祝)に開催された、障がいのあるミュージシャンによる国内最大級のコンサート「第13回ゴールドコンサート」に今年も「リレーションセンターTASKAL」を設置。過去最多の154組の応募から勝ち抜いたミュージシャンによるハイレベルな演奏を、より多くの方が楽しめるようにお手伝いしました。 年々規模が拡大するゴールドコンサート。今年は韓国からもアーティストが参加していました。 バリアフリー・ファッションショー「バリコレ2016」 きらびやかな ファションショーが 開催されました。 10月10日(月祝)に、六本木ヒルズアリーナで、障がいのある方などがモデルを務めるバリアフリー・ファッションショー「バリコレ2016」が開催されました。NHKのバリアフリー・バラエティー番組「バリバラ」から生まれたこのイベントでは、個性的な衣装に身を包んだモデルの皆さんがランウェイを闊歩。ポーズを決めるたびに満席の会場から大きな拍手が送られていました。日本ケアフィット共育機構は事前に会場のバリアフリーチェックと人員配置を行い、当日は「リレーションセンターTASKAL」を設置。来場者の介助や誘導をしました。 はるな愛さんや道端アンジェリカさん、パラリンピアンも多数参加。華やかなステージになりました。 磯飛(いそひ) 健太さん(車いすユーザー) 僕の身長にサイズが合う服にはおしゃれなものが少ないのですが、今日は、こんな着方ができるんだ、とか、こんなアレンジをすれば自分でも着られるかも、ということがわかってすごくいい体験になりました。こういったイベントを通して、障がいのある人も自分で壁をつくったりせずに、もっとアクティブになれる社会になったらいいな、と思います。 第9回車いす利用者江の島見学会 今年も大学生の皆さんが 大活躍してくれました。 今年も藤沢湘南ライオンズクラブ主催の車いす利用者のための江の島見学会が開催され、東洋大学島川ゼミの皆さんを中心にたくさんのボランティアスタッフがお手伝いしてくれました。湘南地域の高齢者施設や障がいのある方が参加するこのイベントも今年で9回目。当日は天気に恵まれ、頂上からの景色を堪能することができました。島川ゼミの皆さんはサービス介助士の資格を取得したばかりの人が多く、最初は緊張しているようでしたが、車いすユーザーの方々と触れ合ううちにリラックスできたようで、交流を楽しんでいました。 大学生たちと一緒に散策を楽しんだ参加者の皆さん。「リハビリにも力が入るね」と笑顔を見せる方も。 小島 紫月(しづき)さん (東洋大学 国際地域学部 国際観光学科2年) 初めてのボランティア活動で、最初は緊張しました。それでも一緒にお散歩しているうちに共通の話題が見つかったり、楽しみながら活動することができました。 小林 千夏さん (東洋大学 国際地域学部 国際観光学科4年) 去年参加したときは不安でしたが、今年は交流も楽しむことができました。4月からホテルへの就職が決まったのですが、ボランティアの経験が生きたと思います。 P16 Universal Tourism 学生団体flatふらっと日記 気の合う4人で始めた「学生団体flat?ふらっと?」。右も左もわからない、 でもなにか楽しいことがやりたい! そんな彼らの奮闘記をお届けします。 9月4日(日)@浅草 雷おこし体験ツアー 日記担当:まいきー 今日は浅草土産の定番雷おこしづくりツアーでした。移動支援を行う株式会社Beansの利用者の方とヘルパーの方5組を含めた計16名の方々にご参加いただきました。体験前には“ミッション”と称して、地図を辿って任務をクリアしながら浅草を散策しました。そして雷おこし体験。参加者の皆さんも初めての体験だったようで、笑顔と笑い声が飛び交っていました。メンバー一同も皆さんと一緒に楽しめた1日でした。 参加者の声 丸田 愛子さん (電動車いすユーザー) Facebookでこのツアーのことを知って参加しました。雷おこしづくりなど、普段できない体験ができてすごく楽しかったです。団体名のごとく、ふらっとに参加できる空気感もすごくよかったです ! 9月27日(火)@東洋大学 第2回学内ワークショップ 日記担当:まゆつん 第2回目となる学内ワークショップ。雷おこし体験ツアーにも参加してくれた電動車いすユーザーの丸田愛子さんをお招きして、メンバーのたいちゃんとはなを交えてスペシャルトークショーを行いました。どんなふうに声をかけてほしいとか、どんなサポートが嬉しいのか、といったことを聞く内容です。参加した方からは「普段はなかなか聞けないような素朴な疑問が解消できてよかった」という言葉をいただけました! flat?ふらっと?って? サービス介助士資格を持つ東洋大学の同級生、「まいきー」こと谷麻衣香と「まゆつん」こと高野真優が中心となって立ち上げたボランティアサークル。大野泰平(たいちゃん)と三浦華(はな)を加えた4人で、「ユニバーサル×ツーリズム」を掲げて、障がいのあるなしにかかわらず、誰もが楽しめるツアーを企画・運営しています。 メンバーからのメッセージ 私たち学生団体ふらっとが目指しているのは、障がいのある方と普段そういった場面にかかわらない学生との架け橋になることです。今回のワークショップのように、まずは近いところから少しずつ意識を変えていく、そんな想いのもと、これからも発信していきたいと考えています。少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ一度私たちのイベントに参加してみてください!  学生団体flat?ふらっと?メンバー一同 “ふらっと”いっしょに楽しみませんか? お問い合わせ otoiroka@gmail.com Web http://flat-barrierfree.sakura.ne.jp/ P17 care-fit通信 サービス介助士トピックス 2時間で介助の基礎を学べる サービス介助基礎検定が始まりました。 日本ケアフィット共育機構では、「サービス介助基礎検定」を開始しました。2時間完結の、体験をメインとした検定で、高齢な人や障がいのある人とのコミュニケーションのきっかけとなる、あらたな“気づき”を学べます。サービス介助士資格取得講座よりも短期間で基礎を学べるとあって、たくさんの法人、個人の皆さまからお問い合わせをいただいています。 サービス介助基礎検定とは Point1 基礎から学べる 誰とでも良好なコミュニケーションをとるための、サービス介助の知識と実技を体験できます。 Point2 短期間で学べる 2時間完結の検定、しかも事前の勉強は不要。誰でも手軽に受講することができます。 Point3 体験して学べる 体験・実技を組み合わせた研修で、座学で学ぶだけではわからない“気づき”を得ることができます。 受講者の声 株式会社ダイナムでは、店舗でのおもてなしのレベルを高めたいと、静岡、三重、宇都宮、仙台の4会場でサービス介助基礎検定を実施。検定を受講した方々が各店舗でほかのスタッフに展開し、知識を共有しています。 株式会社ダイナム 三重いなべ店 SM(ストアマネジャー) 澤内(さわうち) 勉(ひとし)さん 当店はご高齢のお客さまが多い店舗のため、杖や車いすを利用される方が多くいらっしゃいます。また、店舗で使用している椅子が回転式のため、座りづらく感じているお客さまもいるのでは、と感じていました。この検定を受講したことで、私たちが普段感じたことのないストレスと共存しているお客さまがいることに気づくことができました。特に白内障や視野狭窄の体験は、店舗の安全面や提供したい景品の表示方法について考えさせられるものでした。今後は、販促物の文字の大きさや色など、一歩踏み込んだ思考のうえで展開していきたいと思います。この研修で学んだことを、少しでも快適な遊技空間をお客さまに提供するために生かしていきたいです。 サービス介助基礎検定で学んだ手話の復習。 サービス介助基礎検定のお申し込み、お問い合わせ 日本ケアフィット共育機構 TEL:0120?0610?64 http://www.carefit.org/carefit/system/kisokentei.php P18 care-fit 通信 認知症介助士トピックス 認知症Q&A 第一回 「軽度な認知症の隣人との接し方」 認知症のこと、どれだけ知っていますか? 認知症介助士のインストラクターが、素朴な疑問にお答えします! Q 近所に住む高齢で一人暮らしのAさんは、軽度の認知症。回収日以外にゴミを出したり、燃えるゴミの日に燃えないゴミを出すということがたびたびです。回収の日を説明しても、何度も間違えます。どのように応対すればよいでしょうか? 「近隣の人の協力が安心できる環境づくりに繋がります。」 A 認知症の主な症状の一つに、時間や場所、人が分からなくなることがあります。Aさんは、曜日が分からなくなっていると考えられます。近所の人が、ゴミ回収日の朝、「きょうは燃えるゴミの日ですよ」と声をかけ、一緒にゴミ回収場所まで案内すれば、Aさんも安心して生活ができます。あるいは、ヘルパーさんの利用を考えるのも手です。「間違っています!」とゴミ袋を返されたりすると、なぜ間違っているのか、いつ出せばよいのかが理解できず、厳しく注意を受けたことで不安が大きくなるばかりです。怒ったり、批判したりせず、まずは受け入れる、そして寄り添うことが大切です。近隣の人の協力は、認知症になっても住み慣れた地域で安心してくらしてゆける環境づくりに繋がります。 回答者 宮本若菜 専門学校の非常勤講師を経て、現在サービス介助士・認知症介助士インストラクター。確かな知識と終始笑顔で穏やかなインストラクションに定評がある。 認知症介助公開セミナーに参加してみませんか? 認知症介助士とは? ◯おもてなしの心と、認知症に関する  正しい知識を持っている ◯認知症の人を受け入れ、  寄り添える存在である ◯地域のつなぎ役として、社会に貢献する  役割を持った人である 日本ケアフィット共育機構が公認する 検定試験に合格すると資格が与えられます。 認知症介助公開セミナーではどんなことを学べるの? インストラクターによる講義とディスカッションなどでお伝えするセミナーです。 「認知症の基礎知識」「グループワーク」「具体的な応対方法の検討」などを経て認知症に対する理解を深め、最後に認知症介助士の検定試験を行います。認知症に対する理解をより深めたい方、職場や地域で認知症の人への適切なケアを身につけたい人に最適です。 受講料 : テキスト付19,440円(税込) テキストをお持ちの方16,200円(税込) お問い合わせ 開催日程とお申込みに関しては、日本ケアフィット共育機構の ホームページまたはお電話にてお問い合わせください。 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 TEL:0120-0610-64 http://www.carefit.org/ P19 防災介助士トピックス 防災介助士導入事例レポート 「いざというときのために」 市民とともに備える防災意識 オリンパスホール八王子 オリンパスホール八王子は、八王子市における芸術文化事業の拠点として2011年4月にオープン。以来、年間30万人以上が利用する、市のシンボルともいえるホールです。運営は、オリンパスホール八王子の指定管理者として、共立・NTTファシリティーズ共同事業体が行っており、ホールスタッフの多くが防災介助士、サービス介助士の有資格者で、毎日多くの来場者の応対にあたっています。 本番さながらの 避難訓練コンサートを開催! オリンパスホール八王子では、年に一度、コンサート開演中の地震と、それに伴う火災の発生を想定した“避難訓練コンサート”を開催しています。日頃からホールを利用している八王子市民を中心に参加者を募り、実際の避難経路を使用した避難を体験。「今年で3年目ですが、年々参加される方も増えており、皆さまの防災意識が高くなっていることを感じます」と今井館長。毎年アンケートを元に改善を続けており、ホールスタッフも、この訓練を通してホールに潜む危険性を再確認し、防火・防災意識を高めています。 「より安全で安心してご利用いただけるホール運営を目指しています!」 今年は市内外から500名以上が参加。いざというときのシミュレーションを行った。 館長も有資格者! 防災介助士について聞いてみました。 Q 防災介助士資格を取得した理由を教えてください。 A 当ホールは八王子駅から直結しているアクセスのよさもあり、車いす利用のお客さまも多く来館されます。ですから、日常での使いやすさの追求はもちろんのこと、いざというときに備えるという意味で取得しました。この資格を、お客さまの安心・安全に繋げたいです。 館長 今井 敬二さん Q 防災介助士の学びはどのように 役立っていますか? A お客さまはもちろんのこと、街なかでもなにかお困りの様子の方がいらっしゃるか気づけるようになりました。災害時はもちろんのこと、日常においてもお手伝いが必要な方のお役に立ちたいと考えています。 賃館担当 澤木 理歩さん オリンパスホール八王子 最大収容人数2,021名のコンサートホール。地元の小・中学校の合唱祭から クラシックコンサートまで、地域住民の集い・娯楽の場となっている。 〒192-0904 東京都八王子市子安町4-7-1 サザンスカイタワー八王子4F TEL:042-655-0802 URL:http://www.olympus.hall-info.jp/ P24(誌面構成に対応し、逆順で抽出。P20まで) 特集 商業施設 ようこそ、バリアフリー最前線へ。 みんなが訪れる場所ならではの、 細やかな心配り ショッピングセンターもしくはショッピングモールと呼ばれる、複合型の商業施設。普段から利用している人も多いのではないでしょうか。老若男女さまざまな人が訪れるこれらの商業施設の多くが、“誰もが快適に過ごせること”を最大の目的としています。皆さんも、今度訪れたときにはちょっと注意してみてください。スロープやだれでもトイレ、広くてフラットな通路など、徹底的にバリアフリーを意識した館内設備や、とても細やかなスタッフの心配りに気づくことでしょう。 今回は“日本のバリアフリー最前線”と言っても過言ではない、『商業施設』を特集。勤務されているサービス介助士取得者の皆さんにお話しをお聞きします。 Interview イーアスつくば真野 嘉久さん サントリーパブリシティサービス リーダー 矢部 晃代さん アクロスモール新鎌ケ谷 大和情報サービス株式会社 佐々木 優実さん ABC?MART アクロスモール新鎌ケ谷店 店長 北島 精二さん P23-22(誌面構成に対応し、逆順で抽出。) すべての方に 快適な商業施設を 目指して。 イーアスつくば サントリーパブリシティサービス  リーダー 矢部(やべ) 晃代(あきよ)さん 茨城県つくば市にあるショッピングセンター「イーアスつくば」では、開業時から店内施設をユニバーサルデザイン化するとともに、“多様なお客さまにしなやかな応対ができる”人材育成の一貫としてサービス介助士を導入。現在まで累計171名のスタッフが資格を取得されています。今回は“店舗の顔”インフォメーションセンター勤務の矢部さんに、サービス介助士とお客様応対についてお話を聞きました。 サービス介助士を取得された 経緯を教えてください。 私はこの店舗で最初に取得したうちの一人なのですが、当時、障がいのあるお客さまとどのように接するべきか悩んでいたこともあり、よい機会だと感じて受講することにしました。現在は、インフォメーションセンターのスタッフは全員取得しており、テナントのスタッフさんも取得できるようになっています。共通認識が広がるので、スタッフ間の意思疎通も図りやすいですね。 サービス介助士を取得して どんなことが変わりましたか? 一番変わったのは、心構えの部分だと思います。それまでは、困っているお客さまにどうお声がけすればよいのか、正確にはわかっていなかったのですが、取得後は自信を持って声をかけられるようになりました。例えば、当店では車いすの貸し出しを行っていることもあり、車いすユーザーの方には常に声をかけながら、恐怖心を抱かないように配慮するといったことですね。 日々どんなことを意識して お客さまと接していますか? 一番大切なのは、やはり声かけです。こちらから積極的に声をおかけしてご案内することで、会話も弾むんです。そこでどのように応対すべきかを教えていただけたり、付き添いのご家族にもお話を聞けたり。自分たちがそれまで気づかなかったサービス改善の余地が見つかることも多いです。 私たちは、障がいのある方はもちろん、小さなお子さまや高齢の方、外国の方を含むすべての方に快適に使っていただける商業施設を目指しています。サービス介助士のような資格や、手話や語学といった技術・知識があるに越したことはないと思いますが、まずは応対しようとする意識を大切にしたいです。日々多様なお客さまと接する商業施設のスタッフとして、誰かが困っているときにはいつでも手助けができるように、常に準備しておきたいと思います。 「常にお客さまと目線を合わせてお話しすることを心がけています」。 イーアスつくばの福祉イベント この日、イーアスつくば1階のセンターコートでは、ブラインドサッカーと介助犬の体験イベントが開催されました。ブラインドサッカー体験会では、子どもたちが地元の強豪チーム「Avanzareつくば」の選手たちと一緒に、アイマスクをしてドリブルを体験。ボールが足につかない子が続出しましたが、体験後は「楽しかった」「もうちょっと練習したらうまくなれるかも」と目を輝かせて話していました。介助犬コーナーでは、介助犬トレーナーや介助犬をパートナーとしている車いすユーザーの方の生の声を聞くことができ、ショッピング中に足を止めた皆さんも興味を持って聞き入っている様子でした。 介助犬の存在を初めて知ったという人も多く、意義のあるイベントとなった。 ブラインドサッカー初体験の子どもたちに、選手やコーチは笑顔で手ほどき。 千葉介助犬協会の協力を得て開催。チャリティ募金にも多くの善意が集まった。 イーアスつくばのユニバーサルデザイン 介助インターホン 駐車場から段差なく移動できる店舗入り口の脇にあるインターホン。ここから車いすレンタルなどの申し込みができる。 筆談用タブレット 聴覚障がいのある方との筆談用タブレット。モバイル・タブレットも導入し、翻訳アプリを使ったご案内などにも対応し始めている。 開業当初から誰もが使いやすいユニバーサルデザインを導入している。 Information イーアスつくば “すべてのあなたに、良い明日を。”をコンセプトにした、北関東最大級のショッピングセンター。約200ものショップが軒を連ね、休日には約3,700台収容の駐車場が満車になるほどの人が訪れる。 〒305-0817 茨城県つくば市研究学園5丁目19番地 TEL: 029-828-8000(代表) URL: http://tsukuba.iias.jp/ P21-20(誌面構成に対応し、逆順で抽出。) 「接するのは、人と人」 その想いを大切に。 アクロスモール新鎌ケ谷 大和情報サービス株式会社 佐々木(ささき) 優実(ゆみ)さん アクロスモール新鎌ケ谷は、千葉県鎌ケ谷市のショッピングセンター。“笑顔が集うショッピングモール”として、地域に根ざした運営を行っています。同店では約30名のスタッフが今年9月にサービス介助基礎検定を受講。現場でのサービスに活用しています。今回は、サービス介助基礎検定の受講者のなかから、テナントの売上管理などの業務で店舗を裏から支える佐々木さんと、テナントスタッフの北島さんにお話を聞きました。 サービス介助基礎検定を導入された経緯を教えてください。 今年から、実践的な介助技術の習得とテナントさんのモチベーションアップを目的に、この検定を導入することになりました。主にテナントさんに募集をかけて、希望した方に受講していただくと同時に、導入の検討から関わっていたこともあり、私も受講しました。私自身は現場でお客さまと接する機会は限られているのですが、誰しも年齢は重ねるものですし、介助というものを身近な問題と捉えるべきだと思っています。おかげさまで、きちんとした技術と知識を身につけるよい機会になりました。 研修で印象に残っている ことはありますか? ゴーグルをかけて白内障体験をしたり、車いすに乗ったり押したりする体験をしたのですが、想像していた以上に大変で、怖さを覚えるほどでした。白内障の方や車いす利用の方は普段どんな環境で生活されているのか、それが垣間見られただけでも有意義だったと思います。今までは、道で高齢の方や障がいのある方が困っているのを見かけて、なにかしてあげなければと思っても、どうすればよいのかわからなくて声をかけられないことが多かったのですが、当事者の立場で考えられるようになったことで、声をかけるハードルが下がったような気がします。 テナントの方の感想は いかがでしょうか? 受講された方にアンケートをとったところ、「工夫すべき点が見つかった」「現場で生かせると思う」といったポジティブな回答ばかりでした。介助についてもっと深く知りたいという意見も多かったので、今後も規模を広げていきたいですね。基礎検定だけではなくて、サービス介助士資格の導入も検討しています。 今後に向けた意気込みを お聞かせください。 当店は地域に密着した施設でして、さまざまなお客さまに生活の一部としてご利用いただいています。そのような方々にいつも快適に楽しくお買い物をしていただくためには、お客さまの立場に立った振る舞いやサービスを提供していく必要があると思っています。いくら設備を整えても、実際に接するのは人と人ですからね。その気持ちを大切に、少しでも居心地のよい場所であるように努めたいと思っています。 現場の声 あらためて接客の喜びを思い出せました。 ABC-MART アクロスモール新鎌ケ谷店 店長 北島(きたじま) 精二(せいじ)さん 当店を訪れるお客さまのなかには、車いすで来店されたり杖を利用されている方もいらっしゃいます。これまでもきちんと応対しているつもりでしたが、この検定を受講したことで、よりお手伝いできることの幅が広がったと感じています。先日、車いす利用のお客さまが来店されたのですが、靴選びから丁寧にお手伝いさせていただくことができて、私自身、とても嬉しい気持ちになりました。この仕事に就いて10年目になるのですが、あらためて接客の喜びを思い出すことができたと感謝しています。お客さま一人ひとりにあった接客をするのが私たちの仕事ですので、これからも知識や技術を磨いて、できる限り最大限のサービスを提供したいと思っています。 アクロスモール新鎌ケ谷のユニバーサルデザイン スロープ 入り口前にはスロープが設置され、階段を使わなくても入店できるようになっている。 だれでもトイレ スペースを広く取ったトイレ。誰でも使えるよう、さまざまな配慮がなされている。 誰もが快適に過ごせる商業施設として、地域に愛されている。 Information アクロスモール新鎌ケ谷 人が行き交うショッピングセンターを目指すインモール型ショッピングセンター。地域密着をモットーとしており、地元の団体による紙芝居イベントやコーラス発表会なども頻繁に開催している。 〒273-0107 千葉県鎌ケ谷市新鎌ケ谷2?12?1 TEL: 047-446-7787(総合受付) URL: http://shinkama.acrossmall.jp/ P25 こんなところまでバリアフリー! 商業施設のユニバーサルデザイン 多くの商業施設では、私たちが見落としがちな場所にもユニバーサルデザインを採用し、 日々改善を行っています。ここでは、その一部をご紹介します。 入り口?フロア 入り口は車いすやベビーカーで通りやすいようにスロープが設置され、通路は広く設計されています。車で来館する人が多い施設では、駐車場から館内まで段差のない動線設計を行っています。また、入り口脇の呼び出しインターホンから呼び掛けると、レンタル車いすを持ってきてくれるなどのサービスを受けることができる施設もあります。 車いすレンタル インフォメーションセンターの脇には車いすやベビーカーが置かれており、希望される来館者にレンタルを行っています。広い館内を巡るのに、普段は車いすを使わない方でもレンタルされることがあるため、スタッフからご家族に操作方法を教えることも多いそうです。 筆談用道具 聴覚に障がいのある方や高齢の方、外国人の方向けに、筆談用の道具を揃えています。最近は、タブレット端末の翻訳アプリを使って外国人の方をご案内したり、館内のデジタル掲示板でインフォメーションを流したりと、新しいテクノロジーを導入している施設も増えています。 エレベーター 車いす利用の方でも使いやすいように、低い位置に昇降ボタンが設置されています。ちなみに、エレベーターの中になぜ鏡が設置されているかご存知ですか? 身だしなみを整えるため? 実は、車いす利用の方がエレベーターから降りるときに、振り向かなくても外の様子がわかるように、との配慮なのです。 トイレ 「だれでもトイレ」は引き戸になっています。開き戸だと、車いすに乗りながらではとても入りにくいからです。もちろん、洗浄装置には点字の案内がついており、トイレの中で不測の事態で倒れてしまった、といったときに備えて、緊急呼び出しボタンが床の近くに設置されています。 スタッフ 商業施設にお勤めの方や運営管理をされている方は、大切なのは館内のバリアフリーを推進すると同時に「心のバリアフリー」を進めること、と言葉を揃えます。いくら使いやすい設備を導入しても、気づかいや声かけ、日頃の準備こそが、誰もが快適で安心できる場所づくりに貢献しているのです。 P29(誌面構成に対応し、逆順で抽出。P26まで) Interview with leader 三井不動産商業マネジメント株式会社 代表取締役社長 青柳(あおやぎ) 雄久(たけひさ)さん 誰もが安全・安心・快適に、 楽しく過ごせる場所でありたい 商業施設の運営管理を行う三井不動産商業マネジメントでは、『経年優化』という理念のもと、 年月を経るごとに価値が向上する施設運営を追求しています。 運営する商業施設を「人々が集う『場』にしていきたい」と語る青柳社長に、 共生社会の実現に向けて、商業施設の目指すべき姿についてお聞きしました。 常に新たな価値を 創造・発信し続け、 『経年優化』を追求。 ――三井不動産商業マネジメントの業務内容についてお聞かせください。  主に三井不動産が開発した商業施設の運営管理が当社の専業になります。1981年のららぽーと船橋(現ららぽーとTOKYO?BAY)を皮切りとしまして、現在、全国で68の施設を運営管理しています。そのなかには、ららぽーとに代表される、アパレルや飲食、シネコンなどが複合した郊外型の商業施設、三井アウトレットパークのブランドで展開しているアウトレット施設、地域密着型の施設、都心型の商業施設などが含まれています。決まったスタイルを持つわけではなくて、その土地に根付き、その用地や建物の付加価値を最大限に引き出すことが、私たちの得意とする部分だと思っています。 ――お客さまサービスについてはどのようにお考えでしょうか。    当社では、『経年優化』という理念を掲げています。施設というものはできあがったときが一番価値があると思われがちですが、お客さまのニーズの半歩先を読んで、常に新たな価値を創造・発信していくことで、時を経るごとに施設の価値を上げていく。この理念には、そんな思いが込められています。  今は、e?コマースのようなネット上で完結する消費活動というものもありますが、私たちの役割は、飲食や接客といった、その場に行かなければ受けられないサービスに価値を見出していただき、経年優化を実現することだと考えています。  そのためには、魅力のあるご出店者さまに入居していただくのはもちろん、ご来館いただいたお客さまが楽しい時間を過ごせる、安全・安心・快適な空間を提供することを第一に考えなければいけません。昨今、『コト消費』といった言葉がよく聞かれますが、まずはご来館いただいたお客さまに楽しい時間を過ごしていただくこと。そのうえでご出店者さまとコミュニケーションを密に取って、お客さまにいつでも期待感を抱いていただけるような魅力を発信し続けることが大切だと思います。  当然、お客さまのなかにはご高齢の方も障がいのある方もいらっしゃいますから、誰でも利用しやすいように建物や設備のユニバーサルデザイン化を進めると同時に、ビルメンテナンスや警備、清掃といった、施設運営の基幹となる部分に力を入れて、ソフト面のバリアフリー化も推進しています。サービス介助士資格所有者の配置もその一環として捉えており、各施設に導入を進めているところです。 地域の皆さまと行政、 ご出店者さまをつなぐ『場づくり』。 ――社会貢献活動にも力を入れていると伺いました。  三井不動産グループでは、共生・共存、多様な価値観の連携を目指して、社会経済の発展と地球環境の保全に貢献する『&EARTH(アンドアース)』活動を推進しています。2008年から実施している『&EARTH 衣料支援プロジェクト』では、ご家庭で不用になった衣料品を当社が運営する商業施設にお持ちいただき、それをNPO法人を通じて世界中で必要とされている方にお渡しをする、という活動を行っています。環境への負荷を低減すると同時に、清潔な衣料品を“命を守るもの”として必要としている人々に届けるというのは、とても意味のあることだと思っています。  もうひとつの『&EARTH』の活動として、『災害に負けない知識を学ぼう』というスローガンを掲げて、防災キャンペーンを実施しています。例えば応急手当ワークショップやお子さまに向けた防災紙芝居といったイベントを企画してご来館いただいたお客さまに参加していただくといった内容ですね。  私は、商業施設という『場』をこうした活動に提供することで、お客さまにさまざまな“気づき”を得ていただける点に、大変な意義を感じています。お客さまがこれらのイベントに参加したことで、ご自宅で「もしものときにはどこに集合しよう」「防災グッズを購入しておこう」といった話し合いを持つきっかけとなれば、私たちの活動の意味が出てくるわけですからね。 ――商業施設が人々が集まる『場』になるというのは大切な視点だと思います。  この『場づくり』には地域の皆さまとの結びつきが深まるという側面もあります。地域の皆さまにご来館いただき、ご出店者さまの販売促進につながる。私たちの掲げるブランド・ステートメントとして『Growing Together』(=共に成長する)という言葉があるのですが、まさにその言葉のとおり、地域に根ざして成長を重ねることで、経年優化を進めていきたいですね。またこれからは、行政との結びつきを強めたいと思っています。私どもが運営管理する施設を、区や市の方が地域の方とつながる場所として使っていただく。そこでうまく意見交換をしながら、街全体をよくしていく。そんなサイクルができるといいですね。  私どもは商業施設ごとにSNSの運用も行っていて、そこからお客さまのご意見をお聞きすることもできるのですが、やはりリアルな『場』で、直接声を聞かせていただき、よい関係づくりをしていきたいと思っています。以前に私がららぽーとの所長を務めていた頃、一番嬉しかったのは、館内のベンチに腰掛けて行き交うお客さまの様子を見ているときに、買い物袋を抱えたり食事を終えたお客さまが、嬉しそうに「次はあそこに行ってみようよ」といった会話をされているのが聞こえてきたときなんです。これからも、そんな会話がそこかしこで交わされるような空間を提供し続けたいと思います。 10月にオープンした『ららぽーと湘南平塚』。自宅、職場に続く、第3の居心地のよい場所を目指す。 現場の声を大切に、施設の価値向上を目指す青柳社長。「広くご意見をいただきながら、地域と共に成長する商業施設をつくっていきたい」と語る。 三井不動産商業マネジメント サービス介助士導入レポート 三井不動産商業マネジメント株式会社 執行役員 運営第二本部長 犬走(いぬばしり) 泰信(やすのぶ)さん スタッフが自信を持って ご対応できるようになりました。 ――サービス介助士導入の経緯について教えてください。  あらゆる客層にきちんとご対応できる施設づくりを目指すなかで、ハード面だけではなくて運営面でもしっかりと応対していこうと、2012年から導入しています。  現在、お客さまのご案内業務を行うインフォメーションと、施設の運営管理を行うオペレーションセンターのスタッフを中心として約300名が取得しておりまして、現場の声を聞くと、自信を持って応対できるようになった、というスタッフが多いですね。いざお手伝いが必要なときに、迷いなくお声がけができる。そこはサービス介助士導入の前後で大きく変わった点だと思います。  遅ればせながら私もつい先日資格を取得しました。最初は業務の一環で、という意識だったのですが、取得してみて、日常生活レベルでも非常に役に立つことに気づきました。駅でお困りの方にも自然に声をかけられるようになりました。不思議なもので、街を歩いていてもそれまで目に入ってこなかった白杖利用の方や盲導犬を連れた方に目がいくようになりましたね。 ――商業施設にサービス介助士を展開す る意義についてどうお考えでしょうか。  まず、社会を構成する一員として、どんなお客さまにも応対するというのは当然やるべきことであるというのを前提にして、やはり資格を取得したり知識を持っていることで、スタッフの感度は高まりますから、自然と施設全体のサービスレベルやホスピタリティのボトムアップにつながっていくと思います。当社が運営管理している商業施設では、ハード面ではかなり充実していると自負しています。ただ、そこにどうやってソフトの部分を積み上げていくかという点は、正直まだ課題が残っていると思います。まだまだ我々が気づいていないところもたくさんあるはずですから、お客さまの声をしっかりキャッチアップして共有していきたいですね。 インフォメーションのスタッフ。施設によってはバイリンガルのスタッフの配置やタブレット端末によるご案内も行っている。 P30 KIZZNA 紲きずな 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」kizzna 2016 Winter Vol.10 CONTENTS 29 Interview with leader 誰もが安全・安心・快適に、 楽しく過ごせる場所でありたい 三井不動産商業マネジメント株式会社 代表取締役社長 青柳雄久さん 25 こんなところまでバリアフリー! 商業施設のユニバーサルデザイン 24 特集: 商業施設 ようこそ、バリアフリー最前線へ。 22 イーアスつくば 矢部晃代さん 20 アクロスモール新鎌ケ谷 佐々木優実さん/北島精二さん 17 care-fit通信 16 学生団体flat?ふらっと? ふらっと日記 14 ボランティア活動TOPICS 12 おも活掲示板/おも活 10 未来創人?みらいつくりびと 香川由美さん 09 ケアフィットファーム勝沼レポート 04 ロングインタビュー サッカーの力で、心の貧困がない社会を。 北澤豪さん 次号予告 『紲 Kizzna』vol.11は 2017年2月25日(土)発行予定です。 読者アンケート 今号の「紲」はいかがでしたか? 簡単なアンケートにお答えいただいた方の中から抽選で3名様に、書籍「サッカーなら、どんな障がいも超えられる」をプレゼントいたします。 https://qooker.jp/Q/auto/ja/kizzna10/10/ 応募締め切り 2016年12月31日(土) 日本ケアフィット共育機構の フェイスブックページのご案内 日本ケアフィット共育機構の活動報告やイベント告知をアップしています。現場からの生の声もたくさん。あなたの「いいね!」をお待ちしております! https://www.facebook.com/ncsa.carefit/?fref=ts P31 すべての人に やさしい社会をめざして 日本ケアフィット共育機構が ご提供する3つの学び 防災介助士 災害にどのように備えるか、 災害時にどのように 行動するかを 理解、実践する資格。 サービス介助士 高齢の人や障がいのある人を お手伝いするときの 「おもてなしの心」と 「介助技術」を学ぶ資格。 認知症介助士 誰もがなり得る 認知症について、 正しい知識と 応対方法を学ぶ資格。 わたしたちは、心豊かな共生社会の創造に向けて、 共に育み、実践し、場をつくります。 ケアフィットファーム 耕作放棄地を再生、有効活用し、高齢な人や障がいのある人も共に働ける場をつくっています。 ボランティア活動 資格取得者を中心に広く呼びかけ、お手伝いする方、される方の境界線がない楽しいボランティアを目指しています。 セミナー・シンポジウム 資格取得とは別に企業様向けの研修セミナーを展開。研究発表の場としてシンポジウムを開催しています。 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 〒101-0061 東京都千代田区三崎町 2-2-6 TEL:03-6261-2333 FAX:03-6261-2334 WEB:http://www.carefit.org/ H4 KIZZNA 紲きずな 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」2016 Winter Vol.10 TAKE FREE!! ご自由にお持ち下さい Interview with leader 誰もが楽しく 過ごせる場所でありたい 三井不動産商業マネジメント株式会社 代表取締役社長 青柳雄久 執行役員 運営第二本部長 犬走泰信 特集 : 商業施設 ようこそ、バリアフリー最前線へ。 イーアスつくば 矢部晃代 アクロスモール新鎌ケ谷 佐々木優実/北島精二