H1 KIZZNA 紲きずな 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」2017 Autumn Vol.13 TAKE FREE!! ご自由にお持ち下さい ロングインタビュー 義肢装具士 切断者スポーツクラブ 「スタートラインTOKYO」代表 臼井 二美男 Create your future with your own will. 想いは、届く。 未来創人/岸田 徹 NPO法人がんノート 代表理事 ボランティア活動 TOPICS ? P.02-03 KIZZNA vol.13 Theme 創る 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」紲。 第13号のキーワードは「創る」です。 これまでなかったモノや価値観をゼロからつくりあげるには、大変なエネルギーを必要とします。 人と人とのつながりも、同じかもしれません。 理解し合い、受け入れ合うには、とても大きなエネルギーが必要です。 今回ご紹介するのは、「創る」人たち。 未来を“想像”しながら、“創造”し続ける彼らのエネルギーを借りて、 皆さんの心に、小さな火を灯すことができれば。そんな思いを込めてお届けします。 Kizzna  2017 Autumn vol.13 KIZZNA 紲きずな 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」2017 Autumn Vol.13 CONTENTS 04 ロングインタビュー スポーツの力で、 マイナスをプラスに。 義肢装具士 切断者スポーツクラブ「スタートラインTOKYO」代表 臼井 二美男さん 08 私が、走り続ける理由 大西 瞳さん 10 未来創人〜みらいつくりびと NPO法人がんノート 代表理事 岸田 徹さん 12 ケアフィット ファーム勝沼レポート じゃがいも収穫イベント開催! 13 おも活 西東京市立保谷中学校2年生の皆さんが おも活に参加してくれました! 14 ボランティア活動TOPICS 16 care-fit通信 20 ユニバーサル・コミュニケーション・カンファレンス 東京vol.8 22 つなキャン! 大学生の活動レポート 25 優しさの現場から いろいろな人が集い、輝ける街、渋谷へ。 渋谷区 福祉部 障害者福祉課 課長 原 信吉さん 29 Interview with leader 渋谷区長 長谷部 健さん 発行人 畑中 稔 発行所 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 〒101-0061 東京都千代田区三崎町2-2-6 TEL:03-6261-2333 FAX:03-6261-2334 URL: http://www.carefit.org E-mail: toiawase@carefit.org 製作 タクトシステム株式会社 制作 株式会社フリート 編集長 中川純一 編集 城田晃久 取材・文 城田晃久 撮影 西原樹里 平野慎一 和田咲子   アートディレクション&デザイン 笛木 暁 印刷 日経印刷株式会社 本誌の一部あるいは全部を無断で複写、複製、転載することは禁じます。 ?Kizzna 2017 Printed in Japan ? P.04-07 スポーツの力で、 マイナスをプラスに。 その類まれなる技術と仕事に臨む姿勢は、有名パラリンピアンからも絶大な信頼を寄せられ、 遠方から相談に訪れる人も少なくないという、義肢装具士の臼井二美男さん。 スポーツの力を借りて強く生きる気持ちを呼び戻し、 手足を失う以前よりも輝かしい人生を送ってほしい。 そんな思いを抱きながら、今日も義足をつくり、トラックを見つめます。 義肢装具士 切断者スポーツクラブ「スタートラインTOKYO」代表 臼井 二美男さん Profile うすい ふみお 1955年生まれ、群馬県出身。公益財団法人鉄道弘済会義肢装具サポートセンター義肢装具研究室長。 1983年に同センターに就職以来、義肢装具士として活躍。1989年、それまで国内ではほとんど見られなかったスポーツ専用義足の製作を開始し、1991年に切断者スポーツクラブ「ヘルスエンジェルス」(現「スタートラインTOKYO」)を結成。本業のかたわら、指導にあたる。クラブからはパラリンピアンも輩出しており、自身も2000年のシドニーからすべてのパラリンピックに帯同。義肢装具の製作に留まらず、障がい者スポーツの普及や切断者の社会復帰支援活動に取り組んでいる。 「未来」を語り、「可能性」を提案する。 ―― 義肢装具士とはどんなお仕事なのでしょう。  理学療法士、作業療法士、言語療法士などと並ぶ医療職です。ものづくりが主たる業務なので、仕事としては面白いと思っています。ただ、やることは多いですよ。提携先の病院の整形外科やリハビリテーション科を回る営業的な仕事や、見積りの作成、患者さんに法律や保険の説明をしたり、役所とやり取りしたり。当センターでは一人の義肢装具士が全体的な仕上げまで担当するので、患者さんとのやり取りも自然と多くなりますね。 ―― 職人さんのようなイメージだったので、外回りやお金のやり取りまでするとは意外です。どんなことに気をつけていますか?  切断の原因も、先天性、悪性腫瘍、糖尿病、労災など、その人の身体状況によって違いますから、患者さん一人ひとりを見る、ということは常に念頭に置いています。特に精神的な面ですよね。手足を無くすというのは、その現実に耐えられずに死を選ぶことを考える人もいるくらい、ショッキングなことなんです。命に直結する問題を抱える人も多いですしね。  それから、「未来」のことを語ります。小中学生だったら、義足で学校に行けるのか、自転車に乗れるのか、駅までどうやって行くのか、スポーツはどれくらいできるのか。親御さんとも相談をしながら、その子の「可能性」を提案していくことを心がけています。そしてなにより、提案したからには最後まで責任を持たなければいけないと思っています。 ―― どんなところにやりがいを感じ ていますか?  担当した患者さんが義足を履いたり義手をつけたりして、社会で活躍するのを見るのがやりがいですね。私がかかわった人たちのなかには、パラリンピアンになった人もいますし、ダンスの先生をしている人もいるし、タクシーの運転手や、看護師や理学療法士といった医療職に就いた人もいます。私の経験上、そうやって活躍している人たちは、切断以前よりも個性が輝いている人が多いんですよ。 ―― スポーツ専用義足のパイオニアだと伺っています。  30年近く前に、学会誌でパラリンピックの様子が紹介されていて、そこで欧米の選手たちがスポーツ専用義足を履いて走っている姿を見たのがきっかけです。会社にお願いして部品を研究費で購入してもらったりして、試行錯誤しながらつくりました。  それからずっとパラスポーツの現場にいて感じるのですが、実は障がいのある人にとって、スポーツから得られるものというのは、健常者よりずっと多いんです。切断者は、義足や装具を使って社会復帰しても、なかなか身体能力は戻りませんし、精神的にも落ち込んでしまっている場合がほとんどですから、仕事や恋愛に積極的に臨むことができなくなってしまいます。そこから「外に出たくない」「集団行動したくない」と、マイナスの思考におちいってしまう。ところがスポーツで身体を動かすと、よほどのスポーツマンだった人を除いて、健常だった頃より身体能力が向上することが多いんです。身体能力が向上すれば、普段の動作が楽に感じるようになる。例えば、義足で上手に走れる人は、歩き方もキレイになります。そうすれば、自信が持てて、精神面も向上していく。これまで私がかかわってきたなかでは、十中八九の人が、スポーツの力でプラスに転じていますね。 つきそいの親御さんも、 たくましく成長するんです。 ―― 切断者スポーツクラブ「スタートラインTOKYO」の代表も務められています。  スポーツ専用義足をつくり始めた頃に、順番に履かせて走らせてみたら、みんなどんどん走れるようになったんです。やればできるんですよね。それまで義足で走ることにチャレンジする機会がなかっただけで。それ以来、月に一度の練習会は欠かさず開催しています。最初は10名足らずで始めたのですが、いまはメーリングリストに載っているのが140名くらい。練習会に参加するのはそのうち半分くらいですが、北海道や佐賀からこのために上京してくる人もいます。パラリンピックのおかげか、最近また問い合わせや相談が増えてきていますね。実際にパラリンピアンも輩出していて、リオパラリンピックには7名が出場しました。東京パラリンピックに向けても有望な選手が大勢いますよ。 ―― 練習会の模様を拝見しましたが、和気あいあいとした雰囲気が印象的でした。  目的は競技力の強化ばかりではないですからね。メンバーのほとんどは健康増進のために参加しています。リハビリの一環として身体を動かす人や、免疫機能を高めてがんの進行を抑えるために参加するという人もいて、同じような境遇の人たちと親交を深めたり情報交換したりする場でもあります。一方で、仕事や治療の都合などで参加できない人もいます。そんな人にはなるべくマメに連絡して、あわてず急がず、スポーツできる環境が整ったら参加してくれればいいという姿勢で待っています。  ここには、下は小学生から上は70歳を超えた人まで、いろいろな人が集まります。高齢の人は若い人と一緒に動いて元気になるし、子どもは親以外の大人と触れ合う機会があることで社会性を育める。そんな場にもなっていると思います。なにより、つきそいの親御さんが変わるんですよ。悩みや心配ごとの多かった親御さんたちが、子どもが義足で走り回れるようになるのと一緒に、たくましくなっていく。そんな様子を見ていると、続けてきてよかったな、と感じますね。よく「足が悪いから勉強をがんばるしかない」と考える親御さんがいますが、私の経験上、動けるようになれば、勉強もがんばれます。ぜひお子さんには、スポーツに触れさせてあげてほしいと思います。 ―― 夢や目標はありますか? 障がい者スポーツにかかわる人が少しずつ増えてくれるのが、目標といえば目標でしょうか。現在、切断者は全国に7万人程度います。でも、そのうちスポーツにかかわっている人は100人程度。あとの人たちのなかには、一人悶々と日々を送っている人もいます。東京で活動していると、少しずつ改善していると錯覚してしまいがちなのですが、全国的にはまだまだ、障がい者がスポーツにかかわる環境は整っていません。各県の障がい者スポーツ施設の充実や一般施設の開放といった方面にも力を入れていかなければならないと感じています。  義肢装具士としては、若手の育成を進めたいですね。パラスポーツの競技性も上がっていますから、創意工夫したり海外の研究を取り入れたりしていかないと、世界では太刀打ちできません。これからのパラスポーツでは、コーチがいて義肢装具士がいて医療的なサポートもあって、という総合的な体制が必要になってきます。そのためにも、これまで私が学んだことを、後進に伝えていく必要があると思っています。 障がい者スポーツは、 思いやりの心を育む最良の素材。 ―― 共生社会の実現に向けてどのようなことが必要だと思われますか。  いまは核家族化が進んで、おじいちゃんやおばあちゃんとすら触れ合う機会が減っていますよね。個の時代というか。だから、自分以外の人に対する「思いやり」に現実味がなくなってしまっていると思うんです。その点、障がい者スポーツは、自分以外の人たちに対しての寛容や思いやりを学ぶ一番よい素材だと思っています。身近な家族もそうですし、身体的な能力が低下してしまった高齢の方や障がいのある方を理解しようとしたり認めようとしたり、そういった感性が磨ける場。特に子どもは一度の経験が一生に影響を与えますから、障がいのある人と接したり、車いすや義足を触ったりするだけで、自分の血肉にすることができます。ですから、障がい者スポーツや障がい当事者と実際に接する機会を増やすことが、共生社会の実現につながっていくのではないかと感じています。  いま、チームでファッションショーや義足体験会などの対外イベントを開催しています。障がいや義足への理解を広めたいという思いもありますが、実は障がいのある人にとっても、イベントへの参加が大きなプラスになるんです。誰かに教えたり一緒に活動したりすることで人生経験が蓄積されて、マイナスにとらえていた障がいが自信に変わるんです。  このイベントのように、体験する側も教える側も、健常者も障がい者も、お互いさま。そんな感覚を大切にしていきたいですね。 ほんの少しの調整で全く履き心地が変わるという。ネジのひとひねりにも細心の注意を払う。 3Dプリンター。最新の機器も取り入れ、試行錯誤しながらより精密な義足づくりを目指す。 リハビリルーム。スペシャリストがチームを組んで、社会復帰までのケアを受けることができる。 石膏の型や仮組みの義足がところ狭しと並ぶ。屈指の技術力を頼みに日本中から発注が届く。 公益財団法人 鉄道弘済会 義肢装具サポートセンター 公益財団法人鉄道弘済会の事業の一環で、鉄道事故で被災した職員たちの福祉施設としてつくられた。現在は一般の切断者を対象に、リハビリテーション医の指示のもと、義肢装具士、理学療法士、ソーシャルワーカーといったスペシャリストがチームを組んで、義足製作から歩行訓練、社会復帰まで総合的にケアしている。リハビリテーション施設と義肢製作所が併設された、世界でも珍しい施設であり、義肢装具に関する研究開発やパラアスリート支援にも積極的に取り組んでいる。 お問い合わせ 公益財団法人 鉄道弘済会 義肢装具サポートセンター 東京都荒川区南千住4-3-3 TEL:03-5615-3313 http://www.kousaikai.or.jp/support/index.html 次長の中野啓史さん ? P.08 私が、走り続ける理由 臼井さんが主宰する切断者スポーツクラブ「スタートラインTOKYO」の参加者は、 なにを目的に、どんなことを考えながらここに集まっているのでしょうか。 2001年からのメンバーで、パラリンピックにも出場された大西瞳さんにお話しを聞きました。 大西 瞳さん ここは、 自分の家みたいな場所  切断者って、普段はすごく孤独なんです。でも「スタートラインTOKYO」の練習に来ると、似た境遇の人たちと一緒に過ごせるので、自分が普通なんだって思える瞬間があるんです。そう思えることって、すごく大切だと思うんですよね。もちろん、タイムを伸ばすとか健康増進といった理由もありますけど、先輩に悩みを相談したり自分の世界を広げたりするための場でもある。だから私にとって、ここは家みたいなところ。落ち着く場所でもあり、自分を必要としてくれる、大切な場所ですね。  ここに来るまでは、義足も、義足を使っている自分も受け入れられませんでした。でも、ここに来て先輩たちが走っているのを見て、義足がかっこいいと思えるようになったんです。普段は義足にカバーをつけて見た目は足と変わらないようにしていますが、走るときにはカバーを外して義足を見せることになります。そういう姿でいることや人に見られることに慣れることで、メンタルも強くなるというか、むしろ義足を誇らしく感じるようになるんですよね。 不安に思っている人に安心してもらいたい  自分が切断した当時はネットも普及していなかったし、これから自分がどうなってしまうのか不安で仕方ありませんでした。だから、私がパラリンピックに出たりイベントに出たりして情報発信することで、不安に思っている人たちが少しでも安心してくれたらいいな、と思っています。同じ理由で、病院を訪問して、これから切断する人や切断したばかりの人にアドバイスや自分の経験をお話しする活動にも取り組んでいます。子どもの頃から義足に触れることも重要だと思うので、小学校を回って子どもたちと触れ合うような活動もしていきたいですね。  いま使っている義足は、大好きな海に似合う柄。自分で生地を選んで、臼井さんにつくってもらったものです。  私にとって義足は、“ちょっとかっこいい自分の足”。義足があれば普段の生活には支障がありません。ただ、いつでも上手に走れてなんの不自由もない、というわけでもないことも知っておいてほしいと思います。義足が合わなかったらすごく痛いし、義足を取ればけんけんしたり松葉杖をつかないといけない。そういったことも伝えていきたいですね。 臼井さんに誘われて「ヘルスエンジェルス」(現「スタートラインTOKYO」)に参加したことをきっかけにパラリンピックを目指し始め、リオパラリンピック女子走幅跳(T42)、女子100メートル走(T42)に出場。NHK・E テレ「バリバラ」の司会を務めるなど、障がい者スポーツの普及にも積極的に取り組んでいる。 次の目標は東京パラリンピックへの出場。「リオパラリンピックが、すごく楽しかったんです。トラックに出たらものすごい声援で。出場する難しさも知っているので簡単には言えないですけど、またあの舞台に立ちたいですね」。 ? P.09 「スタートラインTOKYO」練習会参加レポート 6/18(日)に「新豊洲Brillia ランニングスタジアム」で、 切断者スポーツクラブ「スタートラインTOKYO」の月例練習会が開催されました。 当日はあいにくの雨でしたが、参加メンバーは50名以上。 屋根のある練習場で3時間ほど汗を流しました。 老若男女が笑顔で集う  子どもから中高年世代、義足をつくって間もない人からパラリンピアンまで、老若男女が集い、切断部位や義足歴などを考慮したメニューで、それぞれに合わせたトレーニングを行います。入念なストレッチにはじまり、歩行、横歩き、後ろ歩き、大股歩きなどの基本メニューをこなす参加者たち。理学療法士や義肢装具士も参加して、身体の動かし方を教えたり、義足を調整したりと、チーム全体が有機的に動いているのがとても心地よく感じました。  後半はトラックを開放して思い思いにトレーニング。大会が近いこともあってか、真剣な表情の選手たちも。板バネをしならせて、迫力のあるダッシュを繰り返していました。  練習会を通して印象的だったのは、経験者が初心者にひんぱんに話しかけていたこと。同じ義足利用者同士で通じ合う話も多いのでしょう。笑い声も絶え間なく上がっていました。臼井さんも、初めてのメンバーや久しぶりの参加者に声をかけて一緒に走ったり、トラック脇に座って話し込んだり。最初は硬い表情だった参加者も、終盤にはみんな笑顔になっていました。 いきいきと走る参加者たち。子どもたちは義足に慣れるのも早いそう。 理学療法士のサポートを受けながらストレッチ。自然と身体能力が高まる。 川名 葉は月づき さん 今回、初めて参加しました。3月に大腿切断をして、いま義肢装具サポートセンターに入院しているのですが、以前から臼井さんのことも「スタートラインTOKYO」のことも知っていたので、ぜひこの機会に参加しようと思って。皆さん明るいし、すごく前向きで、想像以上に走るのが速かったです。すごく勇気が湧くし、私もできるのかな、と思えたので、来てみて本当によかったです。 中村 国くに一かずさん ここに来ると、周囲にすごく意識の高い人がいるので、刺激されますね。自分はまだまだ追い込みが足りないです(笑)。切断者のなかには自分で壁をつくってしまう人もいますが、このチームは走らなくてもいいですし、義足を楽しむことを目的に参加するだけでもいいと思います。義足を履いて走ると、風を切る感覚や、自分の呼吸を感じるのが楽しくて、すごく気持ちいいですよ。 ? P.10-11 未来創人 みらいつくりびと 未来を見据え、 どんな困難も 楽しみながら乗り越える。 そんな人生の達人を、 私たちは 『未来創人(みらいつくりびと)』 と名づけました。 NPO 法人 がんノート 代表理事 岸田 徹さん 着用しているTシャツは、『チャイルド・ケモ・ハウス』という小児がんをはじめとした医療的ケアが必要な子どもや若者、家族のための施設のもの。支援の思いを込めて、番組や講演会では必ず着用している。 平凡な1日って、実は奇跡の連続なんです。 がん患者が笑顔で前向きになれる ネット番組『がんノート』を配信。 インタビュー前に「僕、挙動不審なんで、写真がぶれちゃったらごめんなさい(笑)」と爽やかな笑顔で場をなごませてくれる、絵に描いたような好青年。血色もよく、ハキハキと淀みなく語る目の前のこの人が、ほんの数年前に全身がんを患い、ステージ3、生存確率5 割と告げられるなか、3度もの手術を経てきた“がんサバイバー”だとは。今回の未来創人は、『NPO 法人 がんノート』の代表理事、岸田徹さんだ。 同法人のホームページに掲載されているインタビュー動画。タイトルには病名が並ぶ。がんを患った経験を持つ人たちに、岸田さんがインタビュアーとなって話を聞く番組『がんノート』の配信は、2014年に開始、これまで65回以上、70名超のがん経験者が登場している。印象的なのは、出演者たちの笑顔だ。壮絶な体験を持ち、なかにはステージ4の人もいるにもかかわらず、インタビューは和やかに進み、ジョークも飛び交う。「僕たちが一番大切にしているのは“笑い”なんです。この番組の主旨は、がんを乗り越えて活躍している人たちを紹介することで、いま苦しんでいる人たちに前向きになってもらうこと。くすっと笑えたり、少しでも前向きになれたりするようなきっかけを提供したいと思っています」。番組では、お金や恋愛など、かなり踏み込んだ話題も飛び交う。「この番組を見ている人たちが知りたいのは、ネットや学術書では見つけられない情報なんです。聞いてみたいけれど、ちょっとはばかられるようなセンシティブな話題も、がん経験者同士だからこそ通じ合う部分があって、本音で語ってもらえる。これは僕だからこそできることだと思っています」。インタビューのコツは、キャラでなんとかする感じです、と笑う。このスタイルだからこそ、出演者たちも安心して心を開けるのだろう。 がんは、身近にあって治る病気。 治療後の患者に寄り添いたい。 「最初の手術をした日の夜、突然呼吸ができなくなってしまったんです。意識が遠のいて、ああ、これで人生終わりなのかなって。そのときに、もうちょっと生きていられたらやりたかったことが頭に浮かびました。ひとつは親孝行。ひとつはお世話になった人たちへの恩返し。そしてもうひとつは社会貢献でした」。一命をとりとめたあと、ブログで体験談の発信を始めた。さらに、2度目の手術で後遺症を患ったときに、ネット上で見つけた経験談にひとすじの光を感じた体験が、がんノートの活動につながったのだという。 「がんで亡くなる人は三人に一人、 がんにかかる人は二人に一人、そのなかの三人に一人が働いている世代だということをご存知でしょうか。そして、いまやがんは、6割近くの方が治るといわれている病気です。がんは身近なものであり、多くの元がん患者が社会で活躍している。そのことを知ってほしいですね。これまで日本のがん治療は、治療の技術向上に特化していました。次は、治った人たちが社会に出たあと、どうサポートしていくか。少しでもその力になれればと思っています」。情報が少なくて孤独を感じている患者に寄り添うことも重要。がんノートの配信はライブにこだわり、視聴者とインタラクティブにつながることを重視している。 岸田さんの座右の銘は、“今日も1日大切に”。「がんを経験するとよくわかるのですが、平凡な1日って、実は奇跡の連続なんです。僕の周りには、生きたいけれど生きられなかった仲間もいます。彼らのことを考えても、1日1日を大切に過ごさないといけないと感じています」。生死の境をただよったときに感じた3つの“やりたかったこと”は実現できていますか?という質問に、「がんノートの活動で社会貢献の足がかりができたし、恩返しは、何十年か先に、お世話になった人たちががんで悩むことがあったら、僕を頼ってもらえたらいいな、と思って、いま経験を積んでいるところです。親孝行は…まだまだですけど、昨年結婚もできたし、少しはできているのかな(笑)」。照れて笑う岸田さんの姿は、とても人間的で、魅力的だ。これからも、がん患者が笑えて輝ける社会をつくるために、岸田さん自身が誰よりも輝く笑顔で、道を開いてくれることだろう。 ひと番組1時間半ほど。発覚までの経緯から治療について、さらに家族や仕事、恋愛、お金や保険についてなど、話題は多岐にわたる。“キャンサーギフト”という言葉で、がんになって得たことについても語られる。 Profile NPO 法人 がんノート 代表理事 岸田 徹(きしだ とおる) 1987 年生まれ。大阪府出身。WEB 広告会社に勤めていた25 歳の頃、希少がんである胎児性がんの診断を受ける。抗がん剤治療、手術、再発、再手術を経て、現在は経過観察中。『NPO 法人 がんノート』代表理事、国立がん研究センター広報担当。 NPO 法人 がんノート 2014 年設立。「がん患者が笑って輝ける社会」というビジョンを掲げ、インタビュー配信番組『がんノート』を通して、がん経験者の生の声を届けている。現在、配信を行うイベント・放送事業、がんについての研究を行う研究事業、企業の研修や学校の授業を行う研修・教育事業の3 つの事業を展開。さまざまな視点から、がんという病気に対するアプローチを行っている。 HP: http://gannote.com/ Facebook: https://www.facebook.com/gannote.japan/ ? P.12 ケアフィットファーム勝沼レポート 障がい者就労支援事業所 就労移行支援 就労継続支援B型 ケアフィットファーム勝沼レポート ?障がいの有無にかかわらず、みんなが活躍できる場の実現を目指して? じゃがいも収穫イベント開催! ケアフィットファームでは、7月8日(土)にじゃがいも収穫イベントが行われました。参加者は総勢25名。収穫したのは「男爵」「メークイン」「キタアカリ」の3品種。例年より早い収穫となりましたが、約500キロも収穫することができました。今年は、急激に気温が上がって暑い日が続いたうえに雨が降らなかったため、水不足となっていて、あまり収穫が期待できなかったのですが、なんとか収穫することができました。当日は、30度を超える暑さのなか、子どもたちは畑を飛び回り、参加者の笑顔溢れる楽しいイベントとなりました。 ほかにも、いろいろな 野菜栽培に挑戦しています! とうもろこし、ミニトマト、オクラにかぼちゃ…手入れが大変ですが、成長する姿を見ると疲れも吹き飛びます。 ケアフィットファームからのお知らせ ケアフィットファームの ホームページはこちら! ぶどうづくり体験  参加者募集! 都会の喧騒から離れて、のどかな農園で、いつもとは違った休日を過ごしませんか? きっといろんな発見があるはず! 募集要項 ●日程: 5月〜9月の毎週土曜日(天候、その他の理由により中止する場合がございます。 また、定員になり次第、締め切ります。予めご了承ください) ●作業内容: ぶどうづくりの作業がメインになります。時期により作業内容が異なります。 ●参加費: 3,000円(当日の昼食代、おみやげ込。当日現金にてお支払いください) ●特典: 年間4回以上参加された方には、ケアフィットファーム赤白ワインセットをプレゼント! ●申し込み: ホームページからお申し込みください。 ケアフィットファーム  通販サイト ケアフィットファームのワインやドライフルーツなど販売していま す。ぜひお立ち寄りください! メンバーさんも 元気に過ごしています! 現在、ケアフィットファームには4名のメンバーさんが所属。ぶどう栽培・野菜栽培・出荷作業・加工品製造など、忙しい毎日を過ごしています。 ケアフィットファームは、あらゆる人たちが共に働き、共に学べる場を創造し、みんなが活躍できる場の実現を目指します! 向笠 高弘 小澤 尚美 一之瀬 新悟 一之瀬 昭子 竹川 華 お問い合わせ 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 甲州事業所 ケアフィットファーム 〒404-0033 山梨県甲州市塩山赤尾650 TEL:0553-39-8681 FAX:0553-39-8682 E-mail:koshu@carefit.org WEB http://www.carefit.org/farm/ ? P.13 おもてなしの心、 おもいやりの心を大切に。 おも活 「そっと、さっと、あんしんを。」プロジェクト おも活とは・・・ 日本ケアフィット共育機構のサービス介助士・講師が小学校を訪問し、子どもたちに障がいのある方への案内方法やレクリエーションを通して、相手の立場になって考えることの大切さを伝える活動。日本ブラインドサッカー協会が開催するダイバーシティ教育プログラム「スポ育」実施校に対しても活動を展開し、2020年に向けてボランティア文化を育てていきます。 西東京市立保谷中学校2年生の皆さんがおも活に参加してくれました! 中学生のみんなも、 いろんな学びが あったみたいだね! お助けノ介 勇気を持って話しかけることで、その人の生活が楽になると思って、積極的に声をかけて適切な対応をしていきたいと思いました。 階段では段数や幅などを具体的に伝える方がわかりやすいということを学べたのでよかったです。 相手を一番に考えて、どういう方法で相手に伝えるか、どうわかりやすく伝えればよいかなどがわかりました。 日常生活での行動につながる貴重な体験でした。 遠藤 弓子先生 「おも活」は、その体験を通して「コミュニケーションの重要性」「個性の尊重」「障がい者への理解促進」を学べる機会であると考えています。生徒たちは、手助けが必要な人がいたら、積極的に声をかけ、自分にできることはやろう、という気持ちは持っていたと思います。今回「おも活」を体験したことで、どんな言葉で声をかけ、安全にサポートするためにはどういう行動が大切なのか、ということを学ぶことができました。そしてその行動は、障がいのある方だけでなく、日常生活のなかで困っている人がいたら手助けを積極的にするという、「ボランティア精神の育成」「チームワークの大切さ」「チャレンジ精神の醸成」へとつながる貴重な体験だったと思います。 おも活講師より 生徒の皆さんは普段から挨拶もしっかりしていて、困ったときはお互いに支え合うという姿勢が身についていました。おも活を実施したことによって、より一層高齢な方や障がいのある方が困っていることに気づき、行動できるようになってほしいと感じました。 学校関係者、保護者の皆さまへ 日本ケアフィット共育機構では「おも活」に参加していただける学校、施設を募集しています。どうぞお気軽にお問い合わせください。 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 TEL:03-6261-2333 FAX:03-6261-2334 〒101-0061 東京都千代田区三崎町2-2-6 WEB http://www.carefit.org/ P.14 ボランティア活動 T O P I C S 日本ケアフィット共育機構では、サービス介助士やボランティアの皆さんとともに、誰もが同じように娯楽やスポーツ、日々の暮らしを楽しめるお手伝いをしています。 次はあなたも一緒に参加してみませんか? 視覚障がいイベントをお手伝い! 第26回視覚障害リハビリテーション研究発表大会 in 川崎&鶴見 6月9日(金)〜11日(日)に、日本点字図書館(9日)と鶴見大学(10、11日)を会場として、視覚障害リハビリテーション研究発表大会が開催されました。視覚障がいのリハビリテーションや、障がいのある方の移動支援などに関するさまざまな研究発表をはじめ、テキスト読み上げソフトや音声ガイドといった最新機器の紹介、盲導犬によるガイド体験も催されるなど、視覚障がいに関する取り組みが進んでいることを実感できた、有意義な大会でした。主会場である鶴見大学へは、2日間でのべ600名以上もの方が訪れ、なかには視覚に障がいのある方も大勢いらっしゃいました。サービス介助士ボランティアの皆さんは、障がいのある方の手引きやご案内を担当。研究発表中は会場も暗く、階段もあるため、安心して移動できるよう声のかけ方などに配慮しながらご案内する様子が印象的でした。 福島 真裕子さん 日本航空株式会社 空港オペレーション教育訓練部 正しい介助技術はもちろんのことですが、コミュニケーションを楽しむ大切さを何よりも感じました。今回経験した内容は、さっそく会社内で共有し、私たちがどんなことができるのかを考え、実行していきたいと思います。心で接することの大切さを改めて教えてくださった、大会参加者・関係者の皆さまに感謝いたします。 石田 由香里さん 日本航空株式会社 空港オペレーション教育訓練部 初めてボランティアに参加し、「心のバリア」が自身のなかにも多く存在したことを痛感。できることはしていただく、待つ・見守ることの大切さを改めて実感。「新緑がさわやかに色づいて、窓からキレイな景色が楽しめますよ」とお伝えしたとき、身体全体でそれを感じ、微笑んでくださった方の笑顔は忘れられません。この経験を今後に生かしていきたいと思います。 ? P.15 今年も盛況! みんなで応援しました! ジャパンウォーク in SENDAI 〜オリンピアン・パラリンピアンと歩こう2017春 6月17日(土)、弘進ゴムアスリートパーク仙台で、3回目となるジャパンウォークが開催され、サービス介助士メンバーで介助を担当しました。ジャパンウォークは2020年に東京で開かれるオリンピック・パラリンピックを盛り上げるための、障がいのある方もない方も、誰もが分け隔てなく参加できるようなウォーキングイベントです。ショートコースとロングコースに分かれ、会場ではブラインドサッカーをはじめとする障がい者スポーツ体験コーナーも併設されました。 当日は、サービス介助士資格を取得した国際マルチビジネス専門学校の皆さんと一緒に、会場内の介助応対やスタート・ゴール付近でのお見送り・おもてなしを担当しました。 一生に1回あるかないかの貴重な体験ができました。また、いろいろな方と接することができ、自分を成長させることができました。サービス介助士を生かすことができる、このような機会があればまた参加したいです!(国際マルチビジネス専門学校の皆さん) 白熱の試合を全力サポート! ブラインドサッカー日本選手権 7/1・2、7/23と熱戦が繰り広げられた「第16回 アクサ ブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権」。今年の日本選手権は、出場チームが増えたため、予選と決勝の日程が分けられました。この先もどんどん競技人口が増えるといいですね。 当日、サービス介助士の皆さんはリレーションセンターTASKAL にて介助応対や音声ガイドなどのサポートツールの貸し出しのほか、介助体験コーナーも担当しました。順天堂大学のスポーツマネジメント学科の皆さんや、JR 東日本ステーションリテイリング社員の皆さん、トヨタ東京カローラの社員の皆さんなど、たくさんの方にご参加いただきました。 ボランティアに興味のある方、サービス介助士講習に興味のある法人、個人の方 資料請求・問い合わせ 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 〒101-0061 東京都千代田区三崎町2-2-6 TEL:03-6261-2333 http://www.carefit.org/ ? P.17 care-fit 通信 サービス介助士トピックス サービス介助研修導入レポート「株式会社三菱東京UFJ 銀行」 実践型の研修を通して得られる気づき≠アそが大切。 山越 真希さん 株式会社三菱東京UFJ銀行 コーポレート・コミュニケーション部 CS推進グループ 調査役 冨とみ満みつ紀き三み子こさん 株式会社三菱東京UFJ銀行 コーポレート・コミュニケーション部 CS推進グループ  三菱東京UFJ銀行では、昨年から「高齢者・障がい者応対スキル向上研修」を開始。サービス介助の学びを現場に広めています。研修の導入を推進しているコーポレート・コミュニケーション部の山越さんと冨満さんは、拠点内の意識の変化に確かな手ごたえを感じられているようです。 お客さま本位の品質追求を目指し、サービス介助の学びを導入 山越 三菱UFJ フィナンシャル・グループ(MUFG)では、店舗のバリアフリー化、高齢者・障がい者に配慮した接客・応対、手続きの整備や簡素化、高齢者・障がい者ニーズに沿った商品・サービスのご提供に取り組んでおり、すべてのお客さまが安心・快適にご利用いただける金融機関を目指しています。 冨満 当行を利用されるお客さまの高齢化が予想されることや、昨年4月の障害者差別解消法の施行もあり、当行では、ご高齢の方や障がいのある方に配慮した、より実践的な接客・応対スキルの向上を主な目的として、サービス介助の学びを取り入れた高齢者・障がい者応対スキル向上研修を導入しました。このような実践型研修の導入は、拠点勤務の役職員からも高い評価を得ています。 店内勉強会を通じて拠点への 浸透と意識向上を目指す 山越 研修には、まずは各拠点のCS リーダーと呼ばれる方に参加してもらいました。今年は第2段階として、各拠点のマネジメント層である支店長や副支店長等を対象に実施しています。 冨満 CS リーダーの皆さんが研修で得たスキルを店内勉強会を通じて拠点内に展開し、かつ実際に応対してみせることで、拠点全体のスキル向上につながっていますし、マネジメント層に受講してもらうことで、拠点における浸透率がより高まることを期待しています。研修後のアンケートでは「わかっていたつもりだったことが間違っていたことに気づけた」と、ほとんどの人が研修に参加してよかったという感想を持っているようです。 山越 やはり実践型という点が大きいと思います。高齢者疑似体験や車いす体験などを通じて「車いすに乗るとこんなに目線が低いとは」「車いすを押してもらうことや目が見えないことがこんなに怖いとは思わなかった」といった声が多く聞かれましたね。 研修内容を常に見直し、 さらに広く展開していきたい 冨満 まずは拠点への浸透とスキル向上を目指していますが、CS リーダー、マネジメント層の次は、本部の商品担当者や研修担当者への受講を展開し、当行全体の意識向上を図りたいと思っています。 山越 研修の内容を常に更新することも大切だと感じています。拠点からのフィードバックを得ながら、当行独自の研修プログラムとしてカスタムしていきたいです。 推進チームと現場スタッフが協力してよりよい応対を目指す。 冨満さん(左)、秋山さん(中)、山越さん(右)。 ? P.16 現場からの声 「お客さまの気持ちに寄り添えるようになりました」 秋山 みのりさん 株式会社三菱東京UFJ銀行 秋葉原駅前支店 お客さまサービス課 CS リーダーとして、来店されたお客さまへの応対や、ATM を利用されるお客さまのご案内などを担当しています。研修受講前も、ご高齢の方や障がいのある方への応対については、ガイドブックやDVD の視聴を通して知識を備えていましたが、実際にご案内するときには、本当にこの方法で合っているのだろうか、こんな言い方をして気分を害されないだろうか、と不安になって、恐る恐る応対している部分もありました。 研修を受講して一番よかったのは、お客さまの気持ちに寄り添えるようになったところだと思っています。お客さまから寄せられる「帳票が見にくい」「車いすで通りにくい」といったお言葉に対しても、その理由が身をもって理解できるようになりましたし、以前であればひるんでしまっていたご案内も、研修で体験したことを実践することで、自信を持ってお客さまに接することができるようになりました。 また、店内勉強会を通じて、全体的に意識が高まっていることを感じています。筆談ボードや車いすをいつでも使えるように準備しておくようになりましたし、応対について日頃から話し合い、確認し合う習慣ができました。こうした取り組みを続けることで、ご高齢の方や障がいのある方に限らず、地域のすべての方々に、銀行をなじみやすい場所として利用していただけるようになったら嬉しいですね。 三菱UFJフィナンシャル・グループの社会貢献活動 ■「紀伊山地の霊場と参詣道(熊野古道)」の保全活動 三菱UFJフィナンシャル・グループでは、持続可能な社会の実現に向けて、国内外で「世界遺産シリーズ」と称した、世界遺産や周辺地域の自然環境の保全活動を実施しています。「紀伊山地の霊場と参詣道(熊野古道)」の保全活動は2011年度から毎年開催されており、今年は、グループ社員55名で傷んだ参詣道の整備を行いました。そのほかにも富士山周辺地域の環境保全活動や、白神山地周辺地域での育樹活動、海外の世界遺産でも活動しています。 ■ MUFG Gives Back 三菱UFJフィナンシャル・グループでは、2013年から11月を「グローバルボランティア強化月間」と定め、世界各地の従業員が一斉に地域貢献活動を行う取り組み「MUFG GivesBack」をグループ全体で実施しています。昨年は35以上の国と地域で、延べ6,500人以上の従業員が参加してさまざまな活動を行いました。今年は第5 回というひとつの節目を迎えます。さらなる成長を目指して、MUFGでOne Teamとなり、グループベースでのCSR活動を推進していきます。 ? P.18 care-fit 通信 シニアフードアドバイザートピックス 新たな学び、シニアフードアドバイザーとは シニアフードアドバイザーは、江上料理学院監修のもと、日本ケアフィット共育機構が認定する民間資格です。 公式教材を使って学び、検定試験に合格した方を、シニアフードアドバイザーとして認定します。 食べる喜び、何い歳つまでも。 安心で楽しい食事のために― この先、家族や大切な方が食事のサポートを必要とするようになったとしたら…。どんな食べ物をどのように調理してあげればよいのでしょうか。サポートする側、される側がともに楽しめて安心できる食事の知識を学びます。食事に適した姿勢や高齢者の身体の変化など、幅広い知識を得られる資格です。ご自宅で学べて試験も在宅のまま受けられるので、忙しい方も自分のペースで学ぶことができます。 こんな方にオススメ! ■ 家族など身近に高齢者がいる方 ■ 将来のシニアライフに備えたい方 ■ 食品の販売や開発に携わっている方 ■ 食の学びを通して、  日々の暮らしをより豊かにしたい方 シニアフードコラム 高齢者が脱水症状を起こしやすいのはなぜ? 高齢者が注意しなければならない症状のひとつに脱水があります。よく夏になると高齢者の熱中症や脱水を注意喚起する広告などを目にします。なぜでしょうか。それは高齢者の体内の水分量に関係しています。新生児の赤ちゃんはみずみずしい印象がありますが、身体の約80%が水分量です。高齢者になると約50〜55%程度と、体内に蓄えられる水分量は、加齢とともに減少します。また、人間の身体は水分が1日中出入りしています。1日で身体から出る水分量は約2・2 〜2・8?です。それだけの水分が出ていくなら、それを補わなければなりません。入る水分も同量に2・2 〜2・8?とすると、内訳は食事から1?、飲み物から1〜1・5?、体内の代謝でつくられる水から 200 〜 300m?です。しっかりと水分を補給しないと出る水のほうが多くなり、バランスが崩れて気づかないうちに脱水症状を起こしてしまいかねません。加齢によりのどの渇きを感じにくくもなります。1日約1?強は水分を補給するよう意識しましょう。 監修 江上料理学院 管理栄養士 吉野愛さん 高齢者の熱中症予防ポイント @水分はこまめに少しずつ補給する。 一度に大量の水分を摂取すると、心臓や腎臓に負担をかける可能性があるので、水分補給はこまめに少しずつ、食事のとき以外でも、起床後、入浴前、就寝前など、1 日のなかで習慣づけて摂りましょう。 A電解質が不足しないように注意する。 汗をかいた際はスポーツドリンクなど、電解質が入ったものを摂りましょう。 B食べ物からも水分補給をする。 ゼリーや果物など水分の多い食べ物も取り入れて水分補給をしましょう。 お問い合わせ 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 TEL:03-6261-2333 FAX:03-6261-2334 WEB:http://www.carefit.org/ ? P.19 認知症介助士トピックス 認知症Q&A 第四回 「大金を持参したお客さま」 認知症のこと、どれだけ知っていますか? 認知症介助士のインストラクターが、素朴な疑問にお答えします! Q 大量のお札の束が… 金融機関で働いています。ある日、少し険しい表情で高齢の男性がいらっしゃいました。ご用件を伺うと、深々と頭を下げて「大変申し訳ありませんでした。遅くなりましたが、やっとお返しできます」と、手元からお札の束を差し出したのです。慌ててしまい「何のことかわかりません」と拒絶しましたが、どのように応対すればよかったでしょう? A 記憶障がいが原因かもしれません。 認知症による「記憶障がい」が原因のひとつかも知れません。「個室でゆっくりお茶でも飲んでお話を聞きましょう」などと誘導し、世間話をすることで、支払いのことを忘れ、そのままお帰りになることもあるでしょうし、ご家族の話題から連絡先を聞いて迎えに来てもらうこともできるかもしれません。お金が関係することなので、ご家族と情報共有できるとなおよいですね。不安を感じているかどうか表情や仕草を観察する、個室に案内し場所を変える、温かいお茶などの飲み物を提供し落ち着いていただく、このようなことでリラックスしてお話しできる環境づくりをしましょう。 回答者 宮本若菜 専門学校の非常勤講師を経て、現在サービス介助士・認知症介助士インストラクター。確かな知識と終始笑顔で穏やかなインストラクションに定評がある。 防災介助士トピックス 「しんじゅく防災フェスタ2017」開催! 防災週間に開催される「しんじゅく防災フェスタ」は、子どもから大人、外国人までが楽しく防災・減災を学ぶことができるイベント。今年は「避難行動要支援者」というテーマにも取り組んでおり、視覚障がい者対象のセミナーや車いす体験コーナー、パネル展示もあります。障がいのある方も一緒になって準備を進めてきました。イベント当日、会場でお待ちしています! 「しんじゅく防災フェスタ2017」実行委員会 一般社団法人ピースボート 災害ボランティアセンター 職員 サービス介助基礎検定 井上綾乃さん しんじゅく防災フェスタ2017 日時: 2017年9月3日(日)11:00〜16:00 場所: 都立戸山公園、新宿スポーツセンター 住所: 東京都新宿区大久保3-5-1 参加: 入場無料 ※一部プログラムのみ、要事前予約 お問い合わせ 「しんじゅく防災フェスタ2017」実行委員会 (事務局: ピースボート災害ボランティアセンター) 〒169-0075 東京都新宿区高田馬場3-13-1-2F-A TEL:03-3363-7967(10:00〜18:30/土日祝定休) FAX:03-3362-6073 WEB:http://bosai-festa.com/ MAIL:shinjuku@bosai-festa.com 秋の防災介助士資格取得講座 実技教習 地方開催のお知らせ 2017年9月26日(火) 福岡 会場: アソウ・ヒューマニーセンター 2017年10月21日(土) 札幌 会場: NTT北海道セミナーセンタ 2017年11月18日(土) 仙台 会場: 仙台青葉カルチャーセンター 2017年12月2日(土) 名古屋 会場: 大原トラベル・ホテル・ブライダル専門学校 東京、大阪でも随時開催中! ●資格取得について 自宅学習・課題を提出後、実技教習・筆記試験を受講していただきます。また、防災介助士の登録には救急救命講習が必要です。 お問い合わせ お申し込みに関しては、日本ケアフィット共育機構のホームページまたはお電話にてお問い合わせください。 http://www.carefit.org/ ? P.20 ユニバーサル・コミュニケーション・カンファレンス 東京 vol.8 参加レポート 「いつでも、どこへでも、移動ができるユニバーサル社会とは? ?車いす利用者の生活から考える?」 集い、学ぶ異業種交流サロン「ユニコミ」 さまざまな業種の人たちが集まり、テーマに沿って意見を交換するユニバーサル・コミュニケーション・カンファレンス、略称「ユニコミ」。8 回目の東京開催となったこの日は、二人の車いすユーザーを招いて、なにができ、どう行動すべきなのかを考えました。 登壇者 第1部: 講演/株式会社ニコ・ドライブ 代表取締役社長 神じんむら村 浩平さん 第2部: 講演/アテネパラリンピック 円盤投げ銀メダリスト 佐藤 京子さん 誰もが移動を楽しめる 社会のために 神村さんが代表取締役社長を務める株式会社ニコ・ドライブは「移動格差の解消」を企業理念として日々活動しており、神村さんご自身も16歳のときに交通事故で脊髄を損傷したことで下肢に障がいがあります。「アメリカでは身体障がいのある人もレンタカーを借りられる法律があります。一方日本では、障害者差別解消法が施行されたとはいえ、まだまだ健常者と同様のサービスを受けることはできません。障がいのある方も当たり前のように車を運転できる社会にするために事業を展開していきたいです」と語ってくれました。 身体障がい者にとって車はとても大切なツールです。誰もが同じサービスを受けられて、同じように移動できる喜びを味わえる社会づくりをお手伝いしていきたいと思っています。 意識や環境が変わると、 世界が広がる 電動車いすユーザーであり、介助犬ユーザーでもある佐藤さん。ユニバーサルデザインのワークショップや講演などで、各地を飛び回られています。「障がいのある人には移動の自由がありません。かつては私も、会社と練習場以外はほとんど出歩きませんでした」。介助犬ニコルが来たことで世界が広がったのだそうです。さらに、車いすマークのついた駐車場や「だれでもトイレ」を ○○しか使ってはいけない?ではなくて○○も使える?という意識を持つことで、ユニバーサル社会が広がっていくという示唆に富んだお話しをしてくれました。 なにごとも、まず知ってもらうということが大切です。電動車いすやニコルと一緒に、動ける自分が積極的に街に出て、どんどんアピールすることでなにかが変わるのではないかと思っています。 参加者たちも熱く ディスカッション 講演のあと、出席者はグループに分かれて、車いす利用者の移動についての改善点を話し合いました。短い時間ではありましたが、情報の開示や共有の大切さ、家から駅まで、旅行先といったバリアフリーの連続性の課題、障がい者同士の理解の醸成など、ユニバーサル社会の実現に向けた活発な意見交換が行われました。 ユニコミ今後の予定はこちら 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 〒101-0061 東京都千代田区三崎町2-2-6 TEL: 03-6261-2333 http: //www.carefit.org ? P.21 CareFit Interview 誰もが安心して外出できる社会づくりのお手伝い 株式会社 オリエンタル・ガード・リサーチ 代表取締役会長 安藤 弘二さん 単に人を配置するだけでなく、ホスピタリティ精神に則った警備業務を行うことをモットーとしている「株式会社オリエンタル・ガード・リサーチ」。同社では、安全・安心なサービスを提供するために、各種資格の取得を推奨するなど、人材教育にも力を入れています。 一人ひとりに応対するための 「生きた学習」を継続 ご高齢の方や障がいのある方々とも接する機会の多い警備員は、そのお客さまにあった応対をしなければ、警備の本質である安全・安心を確保することはできないと考えています。そこで当社では、全社員が車いす利用の方や視覚に障がいのある方のご案内ができるようにと、10年ほど前から、障がいのある方・高齢者の方への接遇教育を開始しました。さらに、半年ごとに障がい当事者の方を講師役としてお招きし、生きた学習を行っています。現在、当社警備員の、車いす利用の方や視覚に障がいのある方のご案内は、年間で10万件を超えています。ご高齢の方や障がいのある方をお手伝いすることで、技術だけでなく「気づき」を得ることができ、接遇スキルも上がると信じて、教育を継続しています。 時代に対応し、お客さまの 安心・安全・満足を追求 超高齢社会といわれる時代、警備の現場で認知症の方を見受けることも多くなってきました。そこで当社では、認知症を理解することで、お客さまの自尊心を傷つけることなくお手伝いできるように、また周囲の方も不愉快な気持ちにならないように、東京事業部管内の615 名が認知症サポーター講習を修了(2017 年5月現在)し、各現場に配置されています。なによりも「ありがとう」と言われることが、お手伝いしている警備員の励みになります。お客さまがより安全に快適に、そして満足していただけるように、また、セキュリティのスペシャリストとして、さまざまな時代の変化に対応できるよう、各種資格の取得、そして「気づき」の教育を続けていきたいと思っています。 株式会社 オリエンタル・ガード・リサーチ (株)オリエンタル・ガード・リサーチは創業33周年を迎えたセキュリティのプロフェッショナル集団。ビルや駅構内・大学・ホテルなどの施設警備や内部保安、工事現場、道路での交通誘導やイベント警備、現金や貴重品などの輸送業務、人材派遣業務など幅広いサービスを展開。また、サービス介助士をはじめとする専門的な技術や知識とともに高いホスピタリティを身につけた警備員を育成し、鉄道会社をはじめ多数の顧客から高い評価を受けている。 ニーズに合わせて、より柔軟な応対を 〜女性も活躍する警備の現場〜 性別も年齢もさまざまな方が行き交う警備の現場では、女性隊員のニーズも高まっています。オリエンタル・ガード・リサーチでは、女性隊員の制服を一新し、現場に合わせた着用を進めています。今後も、より柔軟な応対が必要なお客さまにもご安心いただけるサービスの提供を実現していきます。 オリエンタル・ガード・リサーチの各種業務内容 施設警備・交通誘導警備・集金代行 イベント警備・業務請負・人材派遣業務 株式会社 オリエンタル・ガード・リサーチ http://www.ogr-jp.com 詳しくはホームページをご覧ください。右側のQR コードからご覧いただけます。 ? 03-3839-1877 お問い合わせはお気軽に! ? P.22-23 つなキャン! 大学生の活動レポート Campus Relationship キャンパス リレーションシップ つながるキャンパス略して「つなキャン!」では、誰もが暮らしやすい社会づくりのために活動する大学生たちが、さまざまな人たちと手を取り合い、つながっていく様子をレポートします! CASE.1 法政大学 地域サポート学生ボランティア JRや地下鉄各線が乗り入れる飯田橋駅で「東京メトロ学生ボランティア」と書かれたビブスを着て、東京メトロ構内の改札口やホームでご案内や声かけをしているのは、法政大学の学生たちです。駅の「見守る目」を増やしたい東京メトロと、最寄り駅である飯田橋駅で誘導ボランティア体験をしてみたいという学生たちの思いが一致した結果、この「地域サポート学生ボランティア」が実現しました。 TOPIC 第1回地域サポート学生ボランティア定例会 東京メトロ構内の一室に集まった学生たち。事前にサービス介助基礎検定を受けて準備は万端! 簡単なミーティングののちに、二人ひと組で駅構内へと散っていきます。券売機や乗換案内板の近くに立って待つ組、ひたすら歩き回ってご案内が必要そうな人を探す組など、やり方はさまざま。30分ほどの活動を終えたあとのディスカッションでは、声かけやご案内が実践できず残念、という声に「見守ることが大切」という東京メトロの担当者からアドバイスがありました。今後も、空いている時間に誘導ボランティアに参加することになるそう。駅で見かけたら、温かく見守ってくださいね! 峯村 広大さん 法政大学 経営学部3 年 ボランティア経験はなかったのですが、鉄道業界に興味があったのと、視覚障がいの方がホームから転落してしまった事故がショックで、この活動を通して発見があるのではないかと思い、参加しました。今日気づいたのですが、「お手伝いするので声をかけてください」という内容のアナウンスをしてるんですね。券売機の前にも駅員さんがいたりして。いままで気づかなかった配慮を知ることができてよかったです。 高畑 桃香さん 法政大学 経営学部3 年 今日はお声かけをしても断られることが多かったのですが、飯田橋駅は広いし出口も多いので、きっと私たちを必要としてくれる方はいると思います。見守る意識を大切にして、多様な方々のニーズに応えていけたらいいなと思いました。若いうちにこうした経験をすることは必ず将来に生かせると思うので、とても意義がある取り組みだと思っています。 CASE.2 東洋大学 福祉観光ゼミ こんにちは! 東洋大学の柴田菜摘と高野雪美です! 私たちの所属する島川崇教授のゼミはゼミ生全員がサービス介助士資格を取得し、福祉観光に力を入れているのですが、特に福祉観光に興味を持って活動しているのが私たち「福祉観光ゼミ」なんです。障がいのあるなしにかかわらず、お互いを理解し、同じ目線に立って一緒に楽しみたい! そんな思いから、ゼミの枠を超えて他学年や他学部の人とも交流しています! 学内ワークショップを開催しました! この日は、福祉観光ゼミが主体になって初めてのワークショップ。手話サークルなどさまざまな活動をされているSign Monstars 代表の森田貴あつみ水さんをゲストに迎え、手話講座や絵しりとりゲーム、座談会を行いました。集まった15人は学部も年齢もバラバラでしたが、あっという間に打ち解けて楽しい時間を過ごすことができました。手話講座では、「学ぶ! 知る! 接客業の手話」をテーマに、普段私たちがアルバイトをしているときにも活用できる手話を、森田さんに教えていただきました。その後の座談会では、真剣に質問したり、楽しそうに談笑したりする参加者の姿が印象的でした。 高野 雪美さん 東洋大学 国際地域学部 国際観光学科3 年 島川ゼミ9 期生 笑顔が素敵で面白い方々とたくさん出会い、コミュニケーションの輪が広がって行くことがとても嬉しく、自分の考え方も柔軟になるこの機会を大切に感じています。温かい方々に出会って、知ることで、福祉という少し難しいイメージがなくなりました! 毎回の出会いがとても楽しみです! 柴田 菜摘さん 東洋大学 国際地域学部 国際観光学科3 年 島川ゼミ9 期生 福祉と聞くと難しいイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、実はとても簡単なことなんです! 例えばコミュニケーションひとつとってみても、お互いがほんの少し工夫するだけで、壁だと思っていたものはなくなります。いまは、活動を通してたくさんの素敵な方々とお会いできることが楽しいです! ? P.24-25 ?From the scene of tenderness ? やさしさの現場から 優しさの現場から いろいろな人が集い、輝ける街、渋谷へ。 渋谷区 福祉部 障害者福祉課 課長 原 信吉さん 渋谷区では、基本構想をもとにすべての人たちが暮らしやすい街づくりを進めています。その姿勢を示すように、福祉部の各課は、仮庁舎(2017年7月現在、渋谷区庁舎は建て替え中)に入ってすぐのオープンな場所に設置されています。障害者福祉課課長の原さんに、行政、企業、住民が一体となって取り組む「ダイバーシティ&インクルージョンな街づくり」についてお話しを聞きました。 ―― 原さんはどのような業務に携わられているのでしょう。  特徴的なのは、「渋谷みやげ開発プロジェクト」を進めているところです。皆さん、渋谷のお土産と言われてなにか思い浮かびますか? 実は、これぞ渋谷、というものがないんです。そこで、障がいのある方々が就労する作業所とタイアップして、渋谷ならではのお土産をつくれないか、という発想から立ち上がったのがこのプロジェクトでして、そこから生まれたのが「シブヤフォント」です。 ―― シブヤフォントとはどういったものですか?  障がいのある方がつくったものを行政が補助して売り出す、というのはよくある話なのですが、それだと現場の自主性やクリエイティビティを生かすことが難しい。そこで、区内にあるデザイン学校の学生さんたちにアイディアを出してもらったところ、作業所のメンバーのなかに個性的な文字を書いたり、味のある絵を描く人がいることに気づいた学生さんがいました。そこで、個性的な文字や数字、模様を書いてもらって、それを学生さんがデザインに落とし込み、フォントにしてみよう、という企画が生まれたんです。 ―― それは面白い企画ですね。  まず3つのフォントのサンプルをつくって、ウェブサイトで公開しています。今後は、区内の企業やNPO の方々に働きかけて、このフォントを渋谷ならではのお土産づくりに生かしてもらうことを考えています。障がいのある人がつくったということを前面に出すのではなく、渋谷を歩いていたらなんだか面白い文字やデザインに出会って、調べてみたらその背景がわかる。そうやって自然に浸透していくのが理想ですね。 ―― 多様な人々が特性を生かす、まさにインクルージョンですね。  障がいのある人たち、彼らを支援する作業所の皆さん、デザインする学生さん、製品化に結びつけてくれる企業や団体、そして私たち行政が一緒に取り組めるソーシャルアクションにしていきたいと思っています。 ―― 渋谷区は「超福祉展」にもかかわっていらっしゃいます。  はい。今年は、シンポジウムでの発表や、渋谷みやげの候補の展示、シブヤフォントをつかったものづくり体験会などを企画しています。超福祉展は、これまでの福祉の概念を覆したい、という理念のもとで運営されています。関係者が口を揃えるのは「ヤバくてかっこいい福祉」。私たち行政の仕事とは相容れない概念ですよね(笑)。でも、そこに込められているのは、障がいのある人を助けてあげるのではなくて、みんなの特性を認め合い、混ざり合おうという思いなんです。 ―― ここ数年間の取り組みのなかで、意識の変化はありましたか?  選択肢や考え方の幅が広がりましたね。例えば、超福祉展では、最新のテクノロジーでつくられた、障がいのない人も乗りたいと思えるかっこいい電動車いすやクールなデザインの義手などが展示されています。でも、それを福祉サービスで利用するのは、法律や制度の枠組みのなかでは難しい。ですが、超福祉展や渋谷みやげのプロジェクトにかかわっているうちに、福祉サービスがすべてではなく、もっと別のPR 方法もあるのではないか、といった柔軟な発想を持つことができるようになりました。 ―― 原さんが理想とする未来とはどのようなものでしょう。  基本構想を実現するうえで、一番の課題は「理解不足」だと思うんです。皆さんに、障がいのある人のことをもっと理解していただく必要があると感じています。私も、障害者福祉課に来て当事者の皆さんと接したり行事に参加したりすることで、理解できることが増えてきました。同じような経験を皆さんが持つことができれば、街も変わっていくと思うんです。障がいのある人たちが、家から、施設から、病院から外に出て、普通に近所の人と談笑したり、例えばカフェや店舗で働いている。その人の使っている車いすがすごくかっこよくて、お客さんが、それどこで買えるの? なんてことを聞きに来る。そんな光景が当たり前になればいいですし、それを実現できるのは渋谷しかないと思っています。 「ヤバくてかっこいい福祉」に 行政が参加することの意義 仮庁舎入口の壁に描かれた青いハートマークの前で。このハートは、4 月の世界自閉症啓発デーに合わせて開催されたイベントの際に描かれたもの。 インクルージョン社会を体現する 「シブヤフォント」 シブヤフォント 渋谷区内の障がい者作業所の人たちが書く文字を、渋谷区に所在する桑沢デザイン研究所の学生たちがフォントとしてデザイン。「HEARTPIA TSUMUJI FONT 2017」といった具合に、元になる文字を書いた人が所属する作業所名とフォントの特徴を組み合わせてネーミングされている。ダウンロードして自由に楽しむことができる(商業利用は要相談)。 http://www.shibuyafont.jp/index.html HEARTPIA TSUMUJI FONT 2017 超福祉展 2014 年から、渋谷ヒカリエを主会場に開催されており、最新機器の展示や体験イベントなど、従来の福祉に対する「意識のバリアを超えていく」アイディアやデザイン、テクノロジーを紹介している。主催はNPO法人ピープルデザイン研究所で、渋谷区は共催の立場で積極的に関わる。4 年目を迎える今年は11 月7 日(火)?13 日(月)に開催される。 http://www.peopledesign.or.jp/fukushi/ ? P.26-29 Interview with leader 誰もが暮らしやすい街は、 すべての人と共有できる目標。 「パートナーシップ証明書」の発行や「超福祉展」の開催など、福祉事業に力を入れている渋谷区。民間企業勤務、NPO 法人での活動を経て渋谷区議会議員に転身、2015年に渋谷区長に就任した長谷部さんに、共生社会に向けた街づくりについてお話しを聞きました。 渋谷区長 長はせべ谷部 健けんさん 人に寄り添う気持ちを、 この街で根づかせていくこと。 ――2016 年に「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」が施行され、話題になりました。  同性カップルのパートナーシップを自治体が証明する「パートナーシップ証明書」の発行に注目が集まりがちですが、パートナーシップ証明書はパートナーがいる人だけが享受できる喜びです。大切なのは、成長過程で悩んだり、苦しんだりしている人たちにどう寄り添えるか。渋谷区では、職員たちの啓発も進めながら、カミングアウトしている当事者の方に窓口業務を担当してもらうなど、悩みを抱えている方が相談しやすい環境づくりに取り組んでいます。同様の条例を制定する動きがほかの自治体にも広がっていて、それが渋谷区から始まったことを大変うれしく感じています。渋谷区としては、さらにこの制度を充実させて、この街で根づかせていくことが大切だと考えています。 ―― 長谷部さんがLGBT の問題に目を向けるようになったきっかけを教えてください。  最初に意識したのは20代の頃です。初めてアメリカに行ったときに、LGBT の方たちがとてもオープンに暮らしていることに驚きました。そして、帰国してから渋谷や原宿を意識して見回してみたら、普通にLGBT の方と出会うんですね。それまで見ようとしていなかっただけで、確かに存在するんです。その後、LGBT の友人も増え、私が始めたNPO 法人に参加してくれていた性同一性障害のメンバーやその仲間たちと語り合い、悩みを聞くうちに、誰に迷惑をかけているわけでもない人たちが、誤解を受けたり生きづらさを感じたりしながら生活しなければいけない現状は、フェアではないと実感するようになりました。そこで地方政治に関わる人間としてできることはなにかを考えたときに、行政が認定したパートナーシップ証明書の発行という発想に行き着いたんです。 ―― 共生社会の実現について、どのようにお考えでしょうか。    渋谷区では20年ぶりに基本構想を改定しました。「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」を未来像とし、「ダイバーシティ& インクルージョン」という考え方を大切にする、成熟した国際都市に進化することを目指して活動しています。私は、誰もが暮らしやすい街というのは、世界平和と同様に、すべての人と共有できる究極の目標だと考えています。そして、その目標の達成は、マイノリティではなくマジョリティの課題なんです。LGBT や障がいのある人たちに問題があるのではなく、受け入れられない社会にこそ問題がある。その課題を解決するには、なにより実体験を通して理解していくことが必要です。そういった意味では、東京でのパラリンピックの開催は、実体験の場として最適な機会だと思っています。パラリンピックにどう取り組んで乗り越えていくかというのが近い将来の課題ですし、社会としてパラリンピックを成功させられれば、福祉に対するマジョリティの意識の変化が大きく進むのではないでしょうか。今はそのために畑を耕して種をまいているところ、と言えるかもしれませんね。 ―― パラリンピックに向けてはどのような取り組みを行っていますか?  渋谷区にはパラリンピックで使用される会場もあるので、そこで行われる種目を徹底的に応援しようと考えています。どの国の代表が試合をしていても会場を満員にできるようにしたいですね。そのためには区民の皆さんに関心を持ってもらわなくてはなりません。リオパラリンピックの前に、ウィルチェアーラグビーの日本代表に練習場として渋谷区内の体育館を使ってもらった事例があります。そのときには区民の皆さんを練習や試合に招待したり、子どもたちと選手が触れ合う機会をつくったりしました。だから、リオパラリンピックで熱を入れてウィルチェアーラグビーを応援していた渋谷区民は、私も含めて大勢いるんです。普段は地方で活動している選手が、地元より渋谷に来たときのほうが顔を知られているんですよ。それは素晴らしいことだと思いますし、こうした取り組みを積み重ねることで、意識の変化につなげていけたらいいですね。 ―― ほかに福祉サービスについて注目していることはありますか?  テクノロジーの進化ですね。これまでは補助器具だったものが、テクノロジーによって身体の機能拡張器具になりつつありますよね。身体の力が弱まっている人が使えるようにつくられたパワースーツを運送会社が活用したり、車いすのデザインも、進んで乗りたくなるようなかっこいいものが、どんどん生まれたりしている。パラリンピックの幅跳びでも、義足の選手が健常者に匹敵する記録を出していますよね。まさに機能拡張です。私は、これらのテクノロジーをみんながクールに感じる時代がもうすぐ来ると思っています。そして、渋谷区がその発信地になっていくことを期待しているんです。渋谷という街は、これまでも新しいファッションやムーブメントを生み出してきました。だからこそ、福祉から生まれた新しい価値を、ポジティブにプレゼンテーションできるはずです。   ―― 民間企業とも積極的にコラボレーションされています。  『シブヤ・ソーシャル・アクション・パートナー協定』を通して、民間企業のサービスを活用した子育て支援や防災訓練などを実施しています。企業のCSR 活動と渋谷区のリソースがうまくかけ合わさって、コストダウンしながら質の高い行政サービスが実現できるのであれば、どんどん連携していきたいですね。 ――9月から職員の皆さんがサービス介助基礎検定を受講されます。 学ばないとわからないことも多いですからね。介助の学びを義務教育に組み込んで、子どもたちが福祉の精神を学べるようになるとよいかもしれませんね。 ―― 理想の区長像について教えてください。  自分ではちょっとわからないですね(笑)。私が心がけているのは、よい区長と思っていただけるように、よい区長と自分で思えるように、日々がんばるということくらいです。私は、人の上に立つというよりは先頭に立つ人間でありたいと思っているんです。前に進むためにどう動けばよいかを常に考えて、先頭に立ち、ときには最後尾から援護して、少しずつでも社会を前に進めていきたいですね。 実体験を通して、 マジョリティの意識を変えていく。 渋谷だからこそできる、 新しい価値の発信。 ? P.30 CONTENTS 29 Interview with leader 誰もが暮らしやすい街は、 すべての人と共有できる目標。 渋谷区長  長谷部 健さん 25 優しさの現場から いろいろな人が集い、 輝ける街、渋谷へ。 渋谷区 福祉部 障害者福祉課 課長 原 信吉さん 22 つなキャン! 大学生の活動レポート 東洋大学 福祉観光ゼミ 法政大学 地域サポート学生ボランティア 20 ユニバーサル・コミュニケーション・ カンファレンス 東京vol.8 16 care-fit通信 14 ボランティア活動TOPICS 13 おも活 12 ケアフィットファーム勝沼レポート 10 未来創人〜みらいつくりびと 岸田 徹さん 08 インタビュー 私が、走り続ける理由 大西 瞳さん 04 ロングインタビュー 義肢装具士 切断者スポーツクラブ「スタートラインTOKYO」代表 臼井 二美男さん 次号予告 『紲 Kizzna』vol.14は 2017年11月25日(土)発行予定です。 読者プレゼント アンケートに答えて 山梨の美味をゲットしよう!! ケアフィットファームで採れたぶどうからつくった赤ワイン・白ワインセットまたは、山梨産のドライフルーツ詰め合わせセット(りんご・柿・キウイ)を抽選で各2名様にプレゼントいたします! 応募方法 QRコードからアンケートにお答えいただき、ワインセットまたはドライフルーツセットのどちらかご希望の品物とケアフィットファームへの応援メッセージをお書き添えのうえご応募ください。 ※応募締め切りは2017年10月31日(火)とさせていただきます。 ※当選者の発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます。 ※いただいた個人情報は、当機構プライバシーポリシー(https://www.carefit.org/privacy.php)に則り、適正に扱います。 ※ワインセットのご応募は20歳以上の方に限ります。未成年者の応募はできませんので、あらかじめご了承ください。 応募QRコード https://form.qooker.jp/Q/auto/ja/kizzna/13/ 応募締め切り 2017年10月31日(火) 日本ケアフィット共育機構のフェイスブックページのご案内 日本ケアフィット共育機構の活動報告やイベント告知をアップしています。現場からの生の声もたくさん。あなたの「いいね!」をお待ちしております! https://www.facebook.com/ncsa.carefit/?fref=ts ? P31 すべての人に やさしい社会をめざして 日本ケアフィット共育機構が ご提供する3つの学び 防災介助士 災害にどのように備えるか、 災害時にどのように 行動するかを 理解、実践する資格。 サービス介助士 高齢の人や障がいのある人を お手伝いするときの 「おもてなしの心」と 「介助技術」を学ぶ資格。 認知症介助士 誰もがなり得る 認知症について、 正しい知識と 応対方法を学ぶ資格。 わたしたちは、心豊かな共生社会の創造に向けて、共に育み、実践し、場をつくります。 ケアフィットファーム 耕作放棄地を再生、有効活用し、高齢な人や障がいのある人も共に働ける場をつくっています。 ボランティア活動 資格取得者を中心に広く呼びかけ、お手伝いする方、される方の境界線がない楽しいボランティアを目指しています。 各種コンサルティング 教材制作監修など、企業・自治体の共生サービスへ向けた取り組みをお手伝いします。 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 〒101-0061 東京都千代田区三崎町2-2-6 TEL:03-6261-2333 FAX:03-6261-2334 WEB:http://www.carefit.org/ ? H4 KIZZNA 紲きずな 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」2017 Autumn Vol.13 TAKE FREE!! ご自由にお持ち下さい Interview with leader 誰もが暮らしやすい街は、 全ての人と共有できる目標。 渋谷区長 長谷部 健 いろいろな人が集い、輝ける街、渋谷へ。 渋谷区 福祉部 障害者福祉課 課長 原 信吉