H1 019 2019 Spring Kizzna 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」“紲” 輝く瞳が、未来を照らす。 Interview パラバドミントンプレイヤー 福家 育美さん ? P02-03 誰もが誰かのために 共に生きる社会をめざして 私たち日本ケアフィット共育機構は、サービス介助士をはじめとする学びの提供、 障がい者就労支援などの誰もが暮らしやすい場所づくり、ボランティア活動による実践、そして気づきのマガジン『紲 Kizzna』などの媒体を活用した情報発信といった取り組みを通して、あらゆる“ちがい”を超えて誰もが誰かを支え、支えられた人がまた誰かを支える、そんな社会を目指しています。 日本ケアフィット共育機構がご提供する学び 認知症介助士 誰もがなり得る認知症について、 正しい知識と応対方法を学ぶ資格。 サービス介助士 高齢の人や障がいのある人を お手伝いするときの 「おもてなしの心」と「介助技術」を学ぶ資格。 サービス介助基礎研修 2時間で、サービス介助の基礎を 体験を通して学べるセミナー。 防災介助士 災害にどのように備えるか、 災害時にどのように行動するかを 理解、実践する資格。 日本ケアフィット共育機構の取り組み パラスポーツをはじめとする各種イベントへのボランティア参加、障がい者就労支援事業、 企業・自治体向けの各種コンサルティングなどを行っています。 問い合わせ・資料請求 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 〒101-0061 東京都千代田区神田三崎町2-2-6 TEL: 03-6261-2333 FAX: 03-6261-2334 WEB: https://www.carefit.org/ 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 そっと、さっと、あんしんを。 Kizzna 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」“紲” 019 2019 Spring CONTENTS 04 Interview 道は自分で切り拓く。 パラバドミントンプレイヤー  福家 育美さん 10 ミライツクリビト NPO法人コモンビート 理事長 安達 亮さん 12 Care-Fit Express 14 介助士トピックス 16 サービス介助士導入レポート 「ダイハツ工業株式会社」 22 Interview with top runners 当たり前のことを当たり前に。 すべての人におしゃれを楽しんでほしい 花菱縫製株式会社  野中 雅彦さん 緒方 輔雄さん 服部 晃二さん 発行人 畑中 稔 発行所 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 〒101-0061 東京都千代田区神田三崎町2-2-6 TEL:03-6261-2333 FAX:03-6261-2334 URL: https://www.carefit.org E-mail: toiawase@carefit.org 製作 タクトシステム株式会社 制作 株式会社フリート 編集長 中川純一 編集 城田晃久 取材・文 城田晃久 撮影 和田咲子 西原樹里 阿部栄一郎  アートディレクション&デザイン 笛木 暁 印刷 日経印刷株式会社 本誌の一部あるいは全部を無断で複写、複製、転載することは禁じます。 ?Kizzna 2019 Printed in Japan ? P04-09 道は自分で切り拓く。 パラバドミントンプレイヤー 福家 育美(ふけ いくみ)さん (ダイハツ工業株式会社所属) 福家さんは、パラバドミントンWH1クラスの選手として、 世界各地を転戦しながら2020年東京パラリンピックを目指しています。 自分にできること、やりたいことに前向きに取り組む福家さん。 そのパワーの源についてお聞きしました。 同じ条件で一緒に楽しめるのが パラバドミントンの魅力。 ??パラバドミントンを始めたきっかけを教えてください。  高校生の頃から陸上競技をやっていたのですが、その当時から誘われてはいたんです。バドミントンは友だちと一緒に遊んだこともあったし、楽しそうだな、という思いはあったのですが、ふたつの競技を掛け持ちできるほど器用じゃないので(笑)。陸上で結果を出してから考えようと思っていました。7年前に、それまで勝てなかった国体の800m走で優勝できたことでひと区切りついたかなと感じ、そこからパラバドミントンを始めました。 ??パラバドミントンの魅力はどんなところですか?  陸上は前に走るだけですが、バドミントンは前後に全力で動いて、さらにラケットも振らないといけません。始める前は、そんなことができるのかと思っていましたが、できるようになると、すごく面白いですよ。私は身体が小さいので、運動量だけは負けないように練習しています。あとは相手との駆け引きですね。強打と見せかけて前に落とす、みたいな作戦がハマると楽しいです。それから、健常の人も車いすに乗れば同じ条件でプレーできることも、大きな魅力だと思います。立ったままだと歯が立たないけれど、車いす同士だったら、ラケットワークが上手な人とも互角以上に戦えるんですよ。夫(福家茂さん。前コーチ)とも、この間久しぶりに車いすで試合したら勝てました。そういうことが起きるのは楽しいですね。 ??ダイハツに入社されたのは今年からですよね。今はどのような生活なのですか?  毎日練習ができる環境をつくってもらえているのはありがたいですね。今は月の半分くらいは海外遠征や合宿に出かけていて、日本で練習できる時間は限られるのですが、ダブルスで勝たないとパラリンピックの代表にはなれないので、パートナー(小倉理恵選手)となるべくたくさん練習できるように心がけています。パートナーもお子さんがいるので、お互い調整しながら、という感じですね。 ??2020年に向けて、パラスポーツへの注目度は高まっていると感じますか?  はい。パラスポーツと関わりのない人と話していても、パラスポーツやパラリンピックの話が出ることが増えましたね。とはいえ、パラ陸上や車いすラグビーなどと比べると、まだパラバドミントンはマイナーですから、私たちがよい成績を残して知名度を上げて、やってみたいと思ってくれる若い人や子どもを増やしたいです。いつか、車いすテニスの国枝選手みたいにみんなが知っている選手になりたいですね。 ??少しパーソナルなお話を聞かせてください。小さい頃はどんな子どもでしたか?  負けず嫌いでしたね。3歳から車いすを使っているのですが、友だちが鉄棒や登り棒で遊んでいるのを見て「自分もできる!」と、手だけで登ってしまうような子どもでした。というのも「車いすでできないことはない」というのが母の教えだったんです。母は、私が物心ついた頃から、健常者の姉とも分け隔てなく育ててくれました。学校にも介助でついてくるようなことはなかったですね。「あなたにはしゃべれる口があるのだから、困ったことがあればお友だちに言って手伝ってもらいなさい」って。「車いすだからできない」と言うと「いやいや、できるでしょう?」と厳しい言葉が返ってくるんです。でもおかげで、車いすをコンプレックスに感じることもなく、できないことがあれば「どうやったらできるようになるかな?」と自然と考えられるようになれました。女手ひとつで育ててくれた母には、心から感謝しています。 娘のために、パラリンピックで活躍したい。 ??福家さんにとって、人生の最大のターニングポイントはいつですか?  子どもが生まれたときですね。こんなに愛おしい存在ができるなんて、生まれるまで想像もできませんでした。家で夫と二人で留守番させてしまうことも多いので、申し訳ない気持ちはありますが、私は娘がいるからここまで頑張れるんです。寂しい思いをしながらも「ママがバドミントンやってるのを見るのが好き」と応援してくれている娘のために、絶対にメダルを獲って帰るんだ!って、これまで感じたことのないパワーが生まれるんですよ。2020年にパラリンピックで活躍する姿を見せるために、もっと頑張ろうと思います。 わかり合おうとする気持ちは、みんな一緒。 ??今、車いすユーザーとして困っていることはありますか?  駐車場ですね。車いす利用者用の駐車場がそれ以外の車でふさがっていると、がっかりしてしまいます。まだ世の中には、障がい者には必ず介助者がついていると思っている人も多いんですよね。私みたいに一人で車を運転して買い物や空港に行く車いすユーザーもたくさんいるということを、皆さんに知ってほしいです。  とはいえ、障がいのある側が「わかってくれない」と訴えるだけではいつまで経ってもなにも伝わらないですよね。障がいのある側も、もっと健常の人たちのことをわかろうとする努力が必要だと思います。お互いの気持ちをわかり合おうとする気持ちは、障がい者だろうと健常者だろうとみんな一緒だと、私は思います。 ??社会のなかで生きにくさを感じている人たちに、メッセージをお願いします。  私は20歳のときに母を亡くして、引きこもったことがありました。でも、自分で壁をつくってしまうと、周りの人はそこに入ってこられません。だから外とのつながりを持てることが大切だと思うんです。私もバドミントンのつながりに何度も助けられました。それに、車いすユーザーをはじめ、障がいのある人たちがもっと街に出ることで、周りの人たちの理解やバリアフリーも進むと思うんです。  そうは言っても、一歩を踏み出すには勇気が必要ですよね。私たちのようなパラアスリートが頑張る姿を見てもらうことで、誰かに勇気を与えられるような存在になれたら嬉しいです。 ??応援しています。頑張ってください! Profile ふけ いくみ/1985年生まれ。先天性二分脊椎のため3歳の頃に車いすユーザーとなる。高校2年生でパラ陸上競技を始め、100m走と800m走の選手として活躍。2014年からパラバドミントンプレイヤーに転向し、数々の大会で成績を残す。現在はダイハツ工業株式会社に所属し、2020年の東京パラリンピックを目指す。2016年に出産、2歳の女の子の母でもある。 福家さんのお話をもっと読みたい方は、 紲WEB版“リベル・ケアフィット” をご覧ください。 https://www.carefit.org/liber_carefit/ 福家さんの所属先であるダイハツ工業株式会社のサービス介助士導入レポート(本誌P16?17)も併せてお読みください! おしゃれも試合の原動力。 ネイルアートが趣味。 ネイルアートが趣味で、月に一度、友人に塗ってもらうそう。「ネイルをすると、すごくテンションが上がるんです。試合前も自分の爪を見て、“よし、頑張ろう”って」。アクセサリーにもこだわるんですか ? という質問には、「ピアスは…夫からの誕生日プレゼントです。試合のときにはつけるようにしています…」と照れながら話してくれました。 多様な人たちが競技できて、見るのも楽しいスポーツ パラバドミントンに注目! パラバドミントンの公式大会では、障害の種類によってクラスが分けられています。例えば福家さんは、下肢に障害があり車いすを使用するクラスのうち、腹筋が利かない「WH1」クラスに属しています。クラスによって全く違う競技のように動きが異なり、求められる戦術や能力も変わってきます。 パラバドミントンには、大きく分けて車いすと立位があり、 障害によりクラス分けされています。 WH1 車いす シングルスをコートの半面で戦う WH2 車いす シングルスをコートの半面で戦う SL3 立位 下肢 シングルスをコートの半面で戦う SL4 立位 下肢 シングルスをコートの全面で戦う SU5 立位 上肢 シングルスをコートの全面で戦う SS6 立位 低身長 シングルスをコートの全面で戦う パラバドミントンのここが見どころ! 多様な人たちが楽しめる 車いすのほかにも上肢障害、下肢障害、低身長のクラスがあり、ダブルスでは障害の重さが均等になるよう工夫されるなど、多様な人たちが楽しめるようにルールが整備されています。 戦術が多彩で観戦も楽しい ステップワークを駆使して激しく動く立位クラス、コースを狙ったショットの応酬が楽しい車いすクラスなど、クラスによって戦術も多彩。見るスポーツとしても楽しめます。 健常者もプレーできる コートや道具は普通のバドミントンと同じ。公式大会でなければ、車いすに乗ってプレーできます。障害の有無に関わらずみんなで楽しむことができます。 ? P10-11 ミライツクリビト 未来を見据え、どんな困難も楽しみながら乗り越える。 そんな人生の達人を、私たちは『ミライツクリビト』と名づけました。 NPO法人コモンビート  理事長 安達 亮さん 凸凹があるから面白い。互いが補い合える社会へ 就職活動への違和感から ピースボートに乗船  「アフリカの大地でキリンが群れをなして走るのを見ると、自分って小さいな、と痛感しましたね」。大学の卒業式の数日後。就職した同級生たちが会社で研修を受けている頃に、船で世界一周している自分。広大な海を眺めながら、ちょっとした優越感と、大きな不安を抱いていたこの若者は、今回のミライツクリビト、安達亮さんの15年前の姿だ。「当時の僕は、周りの友だちが何の疑いもなくスーツを着て就職活動を始めることに違和感があって。用意された道より、もっと多様な経験をして自分で道を切り拓きたかったんだと思います」。留学する選択肢もあったが、たくさんの国を経験できるお得感もあり、ピースボートに乗り込んだ。  そこで出会ったのが、その後の人生を決めた『A COMMON BEAT』。アメリカでつくられたミュージカル作品だ。「劇中の音楽もかっこよくて。日本でも上演できたら面白いね、と上演活動を始めました。最初は社会性について深く考えていたわけではなかったですね」。作品に込められた平和への思いや異文化理解の大切さを本当の意味で理解できたのは、上演後のアンケートに寄せられた「世界中の大統領に見てほしい」といった意見。「この作品を多くの人に届けることで社会の役に立つことができるんじゃないかという予感がありました。そこで100人の多様な人たちが100日かけてミュージカルをつくりあげるプログラムを始めたんです」。それから15年、『A COMMON BEAT』は日本各地で延べ20万人以上の動員を誇るロングランを続けている。 多様な個性との出会いが 自分を成長させてくれる  ここまで長く活動を続けられる原動力はどこにあるのだろうか。「コモンビートでは、全国各地でミュージカルプログラムを展開しています。さらに、海外の人たちや障がいのある人たち、LGBTの人たちとも一緒に活動し始めています。現場ごとに多様な人と出会えるし、多様な個性と向き合える。それが自分の成長につながる。だから続けられるんじゃないかと思います」。夢は、誰もが違う価値観や考え方を持つ人にも歩み寄れる社会をつくること。このミュージカルに参加することで、自然と多様性に対するセンスが磨かれ、100人の理解者が生まれることになる。  「ミュージカルプログラムはパズルに似ている」と語る安達さん。できないことがある人はできないことを周りに伝え、周りはどうすればよくなるかを考え、工夫する。互いが補い合い、支え合うことで、よりよい作品ができあがるのだ。理想とする社会をそこに見出し、情熱を注ぐ安達さんは、今日も各地の稽古場を飛び回る。 ミュージカルに参加する100人が99プラス1通りの出会いを得る。「1」はいつの間にか忘れていた本来の自分だ。 パーソナルミッションは“違いを楽しむ社会づくり”。「組織にとらわれず、いろいろな場所で追い求める社会の実現を目指したいですね」。 Profile NPO法人コモンビート 理事長 安達 亮(あだち りょう) 1981年東京都生まれ。大学卒業後、約3ヵ月で世界を一周するピースボートに乗船。船内でミュージカル『A COMMON BEAT』を上演するプログラムに参加し、作品のメッセージに感銘を受ける。帰国後日本国内での上演を目指す「コモンビート」の活動に参画。NPO法人化後は事務局長を務め、2014年から理事長に就任。 NPO法人コモンビート 2004年設立。一般参加者を募り100日間でミュージカル『A COMMON BEAT』をつくりあげるプロジェクトを中心に、表現活動によって自分らしさを発見し、多様な価値観を認め合える「個性が響きあう社会」の実現を目指す。 HP:https://commonbeat.org/ next 次のミライツクリビトは… NPO法人SET  理事長 三井 俊介さん ? P12-13 Care-Fit Express ケアフィットエクスプレス このページでは、日本ケアフィット共育機構の活動や、共生社会に向けた取り組みに関するトピックをお知らせします。 ボランティア インドの高齢者・子どもたちに支援物資が届きました! 日本ケアフィット共育機構では、毎年インドにある障がいのある子どもたちや高齢な方のための施設に、皆さんからご寄付いただいた文具や衣類を届けています。今年も現地の協力者により、たくさんの物資を届けることができました。また今年は、鉄道・運輸業界に多くの人材を輩出している岩倉高等学校の皆さんから文具をご寄付いただきました。現地の子どもたちはとても喜んでくれたようです。寄付をしてくださった皆さん、ありがとうございました! おも活 2018年おも活活動報告! おも活とは、小学生を対象とした、おもてなしの心とおもいやりの心を育む出張授業です。2018年度は88件2,167名の方々にご参加いただきました(2019年1月11日現在)。10月16、17日に参加してくれた町田市立南第四小学校の皆さんは、「視覚に障がいがある人には『あっち』『こっち』ではなく具体的に伝えることの大切さを知りました」、「街で障がいのある人に出会ったら、積極的に声をかけたいです」と感想を述べてくれました。そして授業のあとにはみんなで後片づけをお手伝い。早速おも活を実行してくれました。 お助けノ介 お問い合わせ 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 WEB: https://www.carefit.org/ ケアフィットファーム ケアフィットファームの企業研修事業が、 いよいよ本格スタート! 障がい者就労支援事業所「ケアフィットファーム」では、普段からそれぞれの障がいの特性に合わせて作業を組み立て、一人ひとりの得意なことを伸ばし、苦手なことを仲間で助け合いながら、メンバーと一緒に日々農作業を行っています。そんな私達の日常とそのノウハウを生かした企業研修事業「チームビルディング」を本格スタートさせました。興味のある方はお気軽にお問い合わせください?! 研修内容 チームビルディング研修は、自然のなかでの農業体験を通して「多様性」「協力」「挑戦」「一体感」を感じ、そのなかから気づきを得ることを目的としています。研修内容は、葡萄づくりや野菜づくり、ワインづくりなど、レクリエーション志向で楽しく参加できるものばかり。新入社員向け、組織改革、福利厚生など、目的とご要望に合わせたカリキュラムをご提案します。 研修スケジュール例 (商品開発プログラム) 10:00? 研修目的レクチャー 10:30? 農作業レクチャー 10:40? 商品開発プログラム開始 12:00? 昼食 13:00? 商品プレゼンテーション 13:30? 振り返り 14:00? 投票結果発表・表彰 14:10? まとめ 参加者の声 飯嶋 雄介(いいじま ゆうすけ)さん 私が今まで参加してきた研修会は座学やグループワークばかりで、ほかの参加者がどんな人かを知らずに1日の研修を終えることも多かったため、うまくコミュニケーションを取ることができませんでした。ケアフィットファームでの研修は、相手を知り、自分を知ってもらおうという気持ちを大切にしていて、とても楽しく参加することができました。今回学んだことを自分の職場環境、仕事内容に置き換え、よりよい職場環境、人間関係をつくっていきたいと思います。 お問い合わせ 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 甲州事業所 障がい者就労支援事務所 ケアフィットファーム 〒404-0033 山梨県甲州市塩山赤尾650   0120-102-339 FAX: 0553-39-8682 E-mail: koshu@carefit.org WEB: http://www.carefit.org/farm/ ? P14-15 日本ケアフィット共育機構の学び≠体感! 介助士トピックス 日本ケアフィット共育機構が学びを提供する、サービス介助士、認知症介助士、防災介助士に関する最新情報や、日常生活でも役に立つ知識をご紹介します。 サービス介助士 サービス介助士取得者が 16万人を突破しました! 2000年に誕生したサービス介助士が、2018年12月に16万人を超えました。これを記念して、サービス介助士取得者16万人目の方の表彰式が行われました。記念すべきサービス介助士取得者16万人目となったのは、小田急電鉄株式会社に所属する寺澤章貴さん。日本ケアフィット共育機構 代表理事より、サービス介助士取得者16万人目認定状と、ケアフィットファームで製造されたドライフルーツ詰め合わせを贈呈しました。 サービス介助士取得者 16万人目認定者インタビュー 小田急電鉄株式会社 新宿管区 新宿駅勤務 サービス係 寺澤章貴(てらさわ のりたか)さん ―普段はどのようなお仕事をされていますか? 主にロマンスカー発売窓口や改札の業務をしています。障がいのあるお客さまと接する機会も多く、積極的にお声かけをして、列車の乗降や駅構内のご移動など、安心してご利用いただけるようお手伝いをしています。 ―サービス介助士実技教習を受けてみて、どのように感じましたか? 特に高齢者疑似体験が印象に残っています。相手の立場に立った介助やコミュニケーションの取り方といった新しい気づきを得ることができましたし、自信を持ってお客さまの応対ができるようになったと思います。 ―今後、サービス介助の学びをどのように生かしていきたいですか? 小田急電鉄は、レジャー・通勤・通学など、さまざまな目的で利用されるお客さまがいらっしゃいますので、それぞれのお客さまに寄り添った柔軟なサービスを提供していきたいと思います。 認知症介助士 認知症と口腔ケア 第二回「口腔ケアが認知症予防に効果的なワケ」 2018年9月の「認知症介助士特別講演」の内容をもとに、認知症と口腔ケアの関係性について、3回にわたってご紹介します。 口腔ケアが認知症予防につながることをご存知ですか? 例えば、虫歯菌や歯周病菌が、傷んだ歯肉を通じて血管に入ってしまうことで、脳卒中や心筋梗塞といった病気のリスクが増すことが知られています。また、悪化した歯周病を放置することで糖尿病のコントロール不良につながることも知られています。これらは全身の血管へ悪影響を及ぼし「血管性認知症」や「アルツハイマー型認知症」のリスクになります。 よく噛むことや「噛める口腔」を維持することも大切です。噛むことで口腔・顔・首の筋肉が使われるため、血行が良くなり、脳血流の維持、脳の活性化につながると言われています。そして健康な口腔で多様な食べ物をしっかり噛む生活は、栄養の偏りをなくし、全身の健康の維持、社会生活の維持、認知症リスクの低減につながります。もし自分の歯がなくなってしまっても、義歯などの人工の歯を補えば、同様の効果が得られます。 このように、日頃からの口腔ケアと、適切な歯科受診による「噛める口腔」の維持が、全身の健康と認知症の予防につながるのです。 講師 東京都健康長寿医療センター研究所 枝広(えだひろ) あや子さん 歯科医師、歯学博士。地域の高齢者や認知症の方への歯科的対応を行いながら、口腔機能、摂食嚥下障害、食事支援の研究に携わっている。 防災介助士 平成の災害をふり返り、 備えを改めましょう。 まもなく平成が終わろうとしています。この30年間、人的被害を伴う災害が毎年のように発生しました。東日本大震災や熊本地震、西日本豪雨などの被災地では、いまだに多くの人が辛い生活を送っています。新しい時代を迎えるにあたって、平成の災害をふり返り、身の周りの備えを確認してみてはいかがでしょうか。 避難所支援をする防災介助士 ■平成の主な災害年表 平成3年(1991年) 雲仙普賢岳火砕流 平成7年(1995年) 兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災) 平成16年(2004年) 新潟県中越地震 平成17?18年(2005?2006年) 平成18年豪雪  平成20年(2008年) 岩手・宮城内陸地震 平成23年(2011年) 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災) 平成26年(2014年) 広島市土砂災害・2014年御嶽山噴火 平成28年(2016年) 平成28年熊本地震 平成30年(2018年) 大阪府北部地震・西日本豪雨・平成30年北海道胆振東部地震 ? P16-17 日本ケアフィット共育機構 そっと、さっと、あんしんを。 サービス介助士導入レポート 「ダイハツ工業株式会社」 ダイハツ工業株式会社では、社員として所属しているパラバドミントンプレイヤーの福家育美(ふけ いくみ)さん(※)と同じ部署の皆さんが、サービス介助士の資格を取得しています。サービス介助の学びの導入の経緯や、導入に伴ってどんな変化があったのかをお聞きしました。 (※)本誌P04?08に福家さんのインタビュー記事が掲載されています。 「一人ひとりが輝ける世界を目指して」 ??サービス介助の学びを導入されたのは、福家選手が配属されたことがきっかけだったのでしょうか? 大滝 実はそれ以前に、最初のきっかけとして、2017年12月に行われた第3回のダイハツ日本障がい者バドミントン選手権大会に協賛社として関わったときの経験があります。私たちの部署も当日運営を担当したのですが、そのときに、どうお手伝いすればよいかわからず、障がいのある人たちのことが理解できていないことを痛感しました。 正木 2018年4月から福家さんが配属になったのですが、一緒に働くのに、車いすのことや接し方を知らないのは、私たちはもちろん、福家さんが大きな不安を感じてしまうのではないかと考えました。そこで、この機会に障害や障がいのある方についての知識を深め、介助技術を身につけようと、サービス介助士資格を導入することになったんです。 ??第4回ダイハツ日本障がい者バドミントン選手権大会では、皆さん笑顔でお手伝いされていましたね。 正木 はい。資格を取得したことで、障がいのある方を身近に感じられるようになったと思います。今日も「なにかお手伝いすることはありますか?」と自然に声かけができましたし、学ぶことができて、よかったです。以前だったら、車いすに乗りながら大きな荷物を運ぶ選手を見ても、下手に手を出さないほうがいいかもしれない、と躊躇してしまっていたと思うんです。 ??サービス介助の学びを生かしていただけているようですね。 大滝 そうですね。講座では、普段忙しく生活していると忘れがちな、人としてあるべき姿を思い出させてくれた気がします。「相手の身になって考えよう」と口ではよく言いますし、相手が困っているのであればお手伝いするのは当たり前のことなんですが、つい忘れてしまう話だなあ、と。サービス介助士の講座を受けて、その気持ちを持ちつつ、さらに介助の技術が伴うことで、より近くに寄り添えるのだろうな、と感じましたね。 ??今後、どのように取り組んでいきたいとお考えでしょうか? 正木 サービス介助の学びを得ることで、今足りていないものが見えてきたと思っています。小さな例ですが、車いすでも移動しやすいように、私たちの部署の入り口を自動扉に交換しました。これをきっかけに、社内に障害への理解やバリアフリーの意識が高まるといいと思います。 大滝 当社では「Light you up」というスローガンを掲げています。一人ひとりに光を当てて、すべての人が自分の輝きを見つけ出せる世界を目指そう、という思いが込められているのですが、その世界は、まさにサービス介助の学びが目指す世界と同じ線の上にあるのではないかと感じています。サービス介助の学びを生かして、これからもより多くのお客さまに輝きを提供していきたいと思います。 海外事業部 営業室 室長 大滝 一郎(おおたき いちろう)さん 海外事業部 営業室 企画グループ 正木 俊行(まさき としゆき)さん 第4回ダイハツ日本障がい者バドミントン選手権大会には、たくさんのダイハツグループ社員が運営に参加。選手や観客の方に笑顔で応対し、試合では大きな声援を送る姿が印象的でした。 (上)大会で使われたメダルも、グループ会社の技術と地元の伝統工芸品を融合させた素材でつくられています。(下)ダイハツグループの持つノウハウや技術を生かして、競技用車いすの保護カバーを開発。 ? P18-22 Interview with top runners 当たり前のことを当たり前に。 すべての人に おしゃれを楽しんでほしい 花菱縫製株式会社では、“「幸服」づくり”を掲げて、1935年の創業以来、着る人一人ひとりが幸せになれる洋服づくりに取り組んでいます。同社が2017年から展開している車いす利用者向けのオーダースーツは、同社のノウハウと技術力、そして「その人に合うスーツを提供する」という理念が結晶した素敵な製品です。車いすユーザーだけでなく、誰もがおしゃれを楽しめるスーツづくりを続ける皆さんに話を聞きました。 花菱縫製株式会社 代表取締役社長 野中 雅彦(のなか まさひこ)さん 生産本部 技術長 緒方 輔雄(おがた すけお)さん 経営企画本部 経営企画部 次長 服部 晃二(はっとり こうじ)さん 裏地やボタンにこだわった自社製スーツを着こなす姿は、男性から見てもカッコいい。「もっと肩の力を抜いて、普段着としてもスーツを楽しんでほしいですね」(野中さん) 野中さん 緒方さん(技術担当) 服部さん(プロジェクトリーダー) どんな方でも、身体に合うスーツを 提供するのが自分たちの仕事。 ――車いす利用者向けオーダースーツは、どのような経緯で開発されたのでしょうか。 野中 この業界では、気温の高い8?9月は閑散期で、スーツをつくりたいというお客さまが減ってしまうんです。この時期の売り上げの落ち込みをなんとかしなければいけないという経営的な課題に対して、さまざまな対策が挙がるなかで出てきたアイディアのひとつが、この車いす利用者向けオーダースーツ開発でした。 ――これまでも車いすユーザーの方からスーツのオーダーはあったのでしょうか? 緒方 はい。その場合は通常のスーツを補正する形でご対応していたのですが、型紙をつくるところから始める必要があるため、値段が高くなってしまうし、作業現場にも負荷がかかってしまいます。今回のプロジェクトで、生産工程をシステム化することで、車いすユーザーの方にもお手軽にオーダースーツを発注いただけるようになりました。 ――開発はどのように進められたのですか? 緒方 最初は全くの手探り状態でした。まず、車いすユーザーの方がどんなことで困っているのかがわかりませんでした。開発が軌道に乗ったのは、車いすユーザーの上原大祐さんに出会ってからです。例えば、車いすユーザーは、立位が基本の人に比べて1日の生活におけるウエストのサイズ変化が激しいということを、上原さんとお話しするなかで初めて知りました。そのおかげで、脇ゴムを入れるなどして、楽に着用できる工夫を考えることができたんです。ほかにもたくさんの課題を指摘していただくことで、より完成度の高い製品をつくることができましたし、車いすユーザーに対する理解を深めることもできました。(※) ※P18で、スーツの工夫と上原さんのコメントをご紹介しています。 特別な意識ではなく、 違いを当たり前として捉える。 ――車いす利用者向けオーダースーツを手がけることで、社内の意識に変化はありましたか? 野中 変化は特になかったですね。というのも、当社は創業以来、ずっとオーダースーツを手がけてきました。男性も女性も、胸囲が150pある力士も、もちろん車いすユーザーに対しても、「その方に合うものをご提供する」という同じ気持ちでスーツをつくってきたわけです。ですから従業員たちも、障がいのある方向けの事業だから、と特別な使命感を持つというより、当たり前のことと捉えて業務に当たってくれています。 ――その「当たり前」が大切だと思います。オーダースーツづくりを通して、誰もが違って当たり前ということを、自然に受け入れる考え方が根付いているんですね。 野中 そうですね。当社の店舗に来ていただく車いすユーザーの方は、ほかの方となんら変わらない感覚で、生地選びやボタン選び、裏地選びをしていただけます。ただその型が車いすユーザー向け、ということだけ。ただ、やはりこういった製品を扱うお店は少ないので、喜んでいただいているという話は聞いています。 服部 まず、こういう型があるんですよ、と見本をお見せすると、とても喜ばれます。そして、できあがってきたスーツの着やすさに、さらに喜んでいただける。それから、店舗での応対ですね。事前にお知らせいただければスロープを用意しますし、採寸時には身体を支えるために複数の販売員が応対します。当たり前の配慮なのですが、感謝されることも多く、こちらが恐縮してしまうほどです。 「長く続けてほしい」 という声を大切にしたい。 ――車いす利用者向けオーダースーツを取り扱う店舗に勤務されている方を中心に、サービス介助士資格を取得されています。 服部 はい。まだ店舗によってはバリアフリー対応していないところもありますので、ソフト面を強化しようということで、取得を進めています。 ――サービス介助の学びは役立っているでしょうか? 服部 より自信を持って応対できるようになった、という声が多く上がっています。接客業で一番やってはいけないことは、知識がないばかりに萎縮して、お客さまを不安にさせてしまうことだと思うんです。サービス介助の学びを通して基本的な知識を身につけておけば、本人も安心だし、お客さまにもご安心いただけますからね。 ――今後の目標をお聞かせください。 野中 なにより、長く続けることが大切だと思っています。ある方の「よくこんな商品をつくってくれました。ぜひ長く続けてください」という言葉が耳に残っています。さまざまな会社や団体が障がい者向けのプロジェクトに取り組んでいますが、いつのまにか無くなってしまうことが多いですよね。そんななかで私たちは、ひとつの商品として、この車いす利用者向けオーダースーツを息長く育てていきたいと思っています。そしてこれからも地道に、誰もがかっこいいスーツを身につけて気軽に外出できるよう、よりよい商品開発を続けていきたいですね。 ――これからも素敵なスーツづくりを続けてください。ありがとうございました! 花菱縫製のスーツは、技術の粋を集めた機器による効率化と、細かい調整に対応する職人の技術の結晶。手頃で高品質なスーツが生み出されている。 かっこいいスーツを地道につくり続けたいですね INFORMATION 花菱縫製のスーツ開発に込められた思いを もっと深く知りたい方は、 紲WEB版 “リベル・ケアフィット” をご覧ください。 https://www.carefit.org/liber_carefit/ 技術担当の緒方さんに聞きました。 ユーザーに優しい、こんな工夫 車いすユーザーにも一人ひとり異なるニーズがあります。花菱縫製のオーダースーツは、そんなに細かいところまで?と思うような工夫が凝らされ、自分の体型、生活スタイルに合わせたスーツをつくることができます。その中から、ほんの一例をご紹介! パターンを工夫して襟の浮きを抑制 ラペル(下襟)の裏側に特殊な縫込みを施してパターンを補正し、座った状態でも襟元が浮かないように工夫されています。 すり減りやすい部分を人工皮革に 車いすを自分の手で漕ぐ人の場合は、袖先や脇の下の部分がすり減りやすいため、人工皮革を用いて耐久性を上げる工夫が施されています。(※無料オプション) ひざ裏にタックを入れて違和感を軽減 ズボンのひざ裏には3本のタックが入っていて、160度ほどの角度がついています。ひざ裏のダブつきを抑え、着用時の負担が軽減されます。 ズボンのポケットはダミー ズボンの後ろポケットは床ずれの原因ともなるため「飾りポケット」に。収納機能はありませんが、おしゃれを気にした工夫です。(※ポケットなし仕様も選択可) 自分に合ったスーツを見つければ、 おしゃれがもっと楽しくなる! 車いす利用者向けオーダースーツ 開発アドバイザー 上原大祐(うえはら だいすけ)さん  社会人ならかっこよくスーツを着たい! パーティーなどでおしゃれをしたい! そんなことをずっと思っていましたが、なかなか自分に合ったスーツを見つけられないのが現状でした。そんな中、できあがってきたスーツを着て、 しっくりきたときはとても嬉しかったです。車いすユーザーの皆さん、ぜひ花菱縫製でスーツをつくってみてください。自分に合ったスーツに出会えると、普段の服装でももっとおしゃれをしてみたいと思えますよ。 Profile アイススレッジホッケーの選手として3度のパラリンピックに出場。現在はNPO法人「D-SHiPS32(ディーシップスミニ)」の理事長として障がいのある子どもたちのサポートを行うほか、さまざまな分野で活躍している。 ? P23 Kizzna 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」“紲” 019 2019 Spring 『紲 Kizzna』編集部がお勧めするプロダクト “ちがう視界から、ちがう世界を”。 ?知的障がいのあるデザイナーによるブランド“MUKU”? “ちがう視界から、ちがう世界を描き出す”をテーマに、知的障がいのあるアーティストが描く作品をプロダクトに落とし込み、社会に提案するブランド“MUKU”。プロダクトの提案を通じて、従来は福祉に接点がなかった方々と福祉がつながるきっかけをつくり、知的障がいのある方の特性が「障害」ではなく「異彩」として、新しい価値を持ったものとして社会の中で受け入れられるようになることを目指しています。 障がいのある方のつくった作品は、たとえ優れていても低価格で取引をされることが多く、社会貢献という観点だけで購入され、使われないままになることも少なくありません。障がいのある方のアートが質の高い商品にされ、私たちの日常に根ざしていく、そのような、障害を意識せずに普段使いできる工夫、それがこれから向かうべき共生社会のあり方にもつながるのかもしれません。 MUKU 公式ページ http://muku-official.com/ 『紲 Kizzna』について 気づきのマガジン『紲 Kizzna』は、公益財団法人日本ケアフィット共育機構が発行するフリーペーパーです。さまざまなコミュニティで輝く人々をご紹介することで、人と人とがつながり、共に生きる社会をつくり上げていくための情報を発信していきます。どうぞ手にとってご一読ください。 次号予告 『紲 Kizzna』vol.20は2019年5月25日(土)発行予定です。 表記マナーについて 近年、全国の自治体や企業において「障害者」の「害」という表記がマイナスのイメージを連想させるため、表記を「障がい者」とする動きが広まっています。『紲 Kizzna』でも、人を表す言葉を使用する際にはひらがな表記を基本としています。 ? H4 019 2019 Spring Kizzna 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」“紲” オーダーメイドの幸服づくり。 Interview 花菱縫製株式会社