H1 020 2019 Summer Kizzna 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」“紲” 植松ジャパン、世界へ Interview デフサッカー 男子日本代表監督 植松 隼人さん? P02-03 誰もが誰かのために 共に生きる社会をめざして 私たち日本ケアフィット共育機構は、サービス介助士をはじめとする学びの提供、障がい者就労支援などの誰もが暮らしやすい場所づくり、ボランティア活動による実践、そして気づきのマガジン『紲 Kizzna』などの媒体を活用した情報発信といった取り組みを通して、あらゆる“ちがい”を超えて誰もが誰かを支え、支えられた人がまた誰かを支える、そんな社会を目指しています。 日本ケアフィット共育機構がご提供する学び 認知症介助士 誰もがなり得る認知症について、 正しい知識と応対方法を学ぶ資格。 サービス介助士 高齢の人や障がいのある人を お手伝いするときの 「おもてなしの心」と「介助技術」を学ぶ資格。 サービス介助基礎研修 2時間で、サービス介助の基礎を 体験を通して学べるセミナー。 防災介助士 災害にどのように備えるか、 災害時にどのように行動するかを 理解、実践する資格。 日本ケアフィット共育機構の取り組み パラスポーツをはじめとする各種イベントへのボランティア参加、障がい者就労支援事業、 企業・自治体向けの各種コンサルティングなどを行っています。 問い合わせ・資料請求 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 〒101-0061 東京都千代田区神田三崎町2-2-6 TEL: 03-6261-2333 FAX: 03-6261-2334 WEB: https://www.carefit.org/ 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 そっと、さっと、あんしんを。 Kizzna 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」“紲” 020 2019 Summer CONTENTS 04 Interview コミュニケーションは、想像力から始まる。 デフサッカー 男子日本代表監督  植松 隼人さん 10 ミライツクリビト NPO法人SET 代表理事 三井 俊介さん 12 Care-Fit Express 14 介助士トピックス 16 サービス介助セミナー導入レポート 「株式会社タウ」「一般社団法人 願いのくるま」 22 Interview with top runners ここは誰もが魔法にかかる場所。 東京ディズニーリゾートが目指す 究極のホスピタリティ 株式会社 オリエンタルランド  野口 浩一さん 長嶋 香奈さん 発行人 畑中 稔 発行所 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 〒101-0061 東京都千代田区神田三崎町2-2-6 TEL:03-6261-2333 FAX:03-6261-2334 URL: https://www.carefit.org E-mail: toiawase@carefit.org 製作 タクトシステム株式会社 制作 株式会社フリート 編集長 中川純一 編集 城田晃久 取材・文 城田晃久 撮影 和田咲子 西原樹里  アートディレクション&デザイン 笛木 暁 印刷 日経印刷株式会社 本誌の一部あるいは全部を無断で複写、複製、転載することは禁じます。 ?Kizzna 2019 Printed in Japan ? P04-09 コミュニケーションは、 想像力から始まる。 デフサッカー 男子日本代表監督 植松 隼人さん デフリンピックを目指す日本代表を率いながら、 普段は少年サッカーのコーチや聴覚障がい者への理解促進のための講演活動など、 多忙な日々を過ごす植松隼人さん。 植松さんにとっての家族とは、サッカーとは、 コミュニケーションとはなにか、お聞きしました。 デフサッカーについて Deaf(デフ)とは英語で「聞こえない」または「聞こえにくい」という意味。ルールは基本的に一般的なサッカーと同じ。審判はホイッスル以外にフラッグを持ち、視覚的な情報を補っています。試合中はすべての選手が補聴器を外す義務があります。(P9で植松さんにデフサッカーの魅力をお聞きしています) デフリンピックとは? 4年に一度、ろう者のオリンピックとして開催される世界大会。夏季は1924年に、冬季は1949年に初めて開催されました。現在の加盟国は104カ国。参加資格は、補聴器や人工内耳の体外パーツ等を外した状態で聴力の損失が55デシベルを超えている聴覚障がい者で、各国のろう者スポーツ協会に登録している人。運営もろう者によって行われる、ろう者による、ろう者のための大会です。(参照:一般財団法人 全日本ろうあ連盟ホームページ) 家族と過ごす時間は、 疲れをリセットできる大切なひととき。 ?? 耳の聞こえ方はどの程度なのですか?  生まれつき、飛行機が目の前を飛んでいてもうるさいと感じないレベルの難聴です。普段のコミュニケーション手段は、手話か、相手の口の形を見ながらの会話です。聞き取りに関しては、補聴器をしていて室内の会話ならあまり問題はないのですが、雨が降っていたり雑踏の中だったりすると、人の声はほぼ聞き分けられません。ただ、それが不便かと言われると、ずっとこうなので、不便かどうかもわからない。自分にとっては当たり前の状態ですね。 ?? 奥さまも聴覚障害があると伺いました。ご家族ではどのようなコミュニケーションの取り方をされているのですか?  妻とは手話ですね。双子の息子たちとは、手話を交えながらゆっくりした発話で話しています。家族で過ごす時間は、私にとってはかけがえのない時間。1日働いた疲れをリセットできる大切なひとときでもあります。夕食は必ず毎日一緒に食べて、空いた時間や休みの日には子どもたちと鬼ごっこやボール投げをして遊びますが、サッカーはあんまり(笑)。 小・中学生に多様性を学ぶ機会を提供したい。 ?? 子育てではどんなことを心がけていますか?  子育てに関しては、聴覚障害があるからといって、特に困難は感じていないのですが、妻が専業主婦で大変な思いをしているので、なるべく力になれるようにしています。方針としては、ティーチングではなくてコーチング。子どもたちにサッカーを教えるときの用語です。答えを示すのがティーチング。一方コーチングは、子どもたちがなにをやりたいのか汲み取った上で、選択肢を示し、自分で考えさせる教え方のことです。これから先、課題にぶつかったときに、親に頼れない局面も出てくると思うんです。そんなときにも自分で考えて正しい判断をできるような人間になってほしいですね。私も両親からそのように育てられましたから。 ?? 植松さんご自身は、どんな子ども時代を過ごされたのですか?  小さい頃にはよく公園でみんなと一緒にボールを蹴っていましたよ。母の話だと、よく喋るし、人を笑わせるのが好きだったらしいです。今と変わりませんね(笑)。難聴であることは、中学校まではそれほど気になりませんでした。地元の子どもたちが集まる学校だったので、みんなも私のことを理解してくれていたんですね。ところが、高校に入ると、バックグラウンドを知らない者同士が集まるじゃないですか。なかなか友だちもできないし、先生も今ほど障害に理解のある人たちばかりじゃない。それに、おそらく私自身も自分の身体のことをどう説明すればいいのかわかっていなかったんですね。コミュニケーションがうまく取れなくて、ずっとストレスを抱えていました。それで喧嘩になることもありましたし、好きで続けていたサッカー部も退部してしまったんです。 サッカーと手話が人生を好転させてくれた。 ?? ろう学校や難聴クラスに通うという選択肢はなかったのでしょうか?  そういう選択肢はあったのかもしれませんが、障害があってもなくても一般の学校に通うのが当たり前だと思っていました。当時は辛かったですが、今となってはそれでよかったのではないかとも思います。多感な時期に多様性を学ぶことができたわけですから。いま私は小・中学校で講演する機会も多いのですが、こういう人もいるんだよ、ということを、頭が柔軟な小・中学生の印象に残せるような工夫を心がけています。身の回りに障がいのある人がいない環境で過ごしてしまうと、いざ社会に出てさまざまな人たちと一緒に働くことになったときに、どう接していいかわからなくなってしまいますからね。 ?? デフサッカーに出会ったのはいつですか?  デフサッカー、そして手話を深く知るようになったのは大学3年生の頃です。「こんなに楽しい世界があるのか」と衝撃を受けました。サッカーはお互いにコミュニケーションを取りながらつくり上げていくスポーツです。でも、それまでの私は、耳が聞こえにくいことを理由にしてコミュニケーションを放棄してしまっていた。それが、手話とデフサッカー、そして仲間たちと出会ったことで、本来のサッカー、本来のコミュニケーションの楽しさに気づくことができたんです。それから私の人生は大きく好転していきましたね。 ?? その後選手として活躍されて、今は日本代表の監督として2021年に開催されるデフリンピックを目指されています。  はい。一度は一般企業に就職したのですが、デフサッカーへの情熱を捨てきれずに退職して、コーチングを学びながら30歳まで代表選手を続けました。今は、代表監督として、デフリンピックで優勝することを目指してコーチングスキルを磨いているところです。ただ、デフサッカーもデフリンピックもまだまだ知名度が低いので、もっとアピールしていきたいですね。 ?? 共生社会に向けて、私たちにはどんなことができると思われますか?  もっと一人ひとりが相手を慮(おもんぱか)る余裕や想像力を持てるといいですね。先日、電車に乗っていた聴覚障がいのある女性が、補聴器を音楽用のイヤホンと勘違いされて、トラブルになったというニュースを見ました。真相はわかりませんが、声をかけられたのに無視する形になってしまい、それが原因で怒らせてしまったのかもしれない。でも、「もしかしたらこの人は耳が聞こえていないのではないか」と想像する余裕があれば、補聴器をイヤホンと勘違いした人も、違う対応ができたのではないかと思うんです。これから高齢者も増えてきますし、社会の多様性は増していきます。世の中にはさまざまな人がいることを知って、お互いに顔を見あってコミュニケーションできる社会にしていきたいですよね。 Profile うえまつ はやと/1982年生まれ。小学校5年生からサッカーを始め、大学3年生から30歳までデフ(ろう者)サッカー、デフフットサル(5人制サッカー)の選手として活躍。2017年デフサッカー 男子日本代表監督に就任。妻は元デフフットサル日本代表の博美さん。今年5歳になる双子の男子の父親でもある。 植松さんのお話をもっと読みたい方は、 紲WEB 版“リベル・ケアフィット” をご覧ください。 https://www.carefit.org/liber_carefit/ 「デフリンピック」は手話でどう表現するの? 「デフリンピック」を表す手話は、「OK」「GOOD」「GREAT」を意味するサインが重なって形づくられています。中央は聴覚障がいのある人たちにとって重要な「目」を表現しています。 植松さんに聞く、デフサッカーの魅力! Q デフサッカーの魅力を教えてください。 一般のサッカーよりも手話、ボディランゲージ、アイコンタクトが大切になるので、うまくコミュニケーションが取れていいプレーができると楽しいですね。観察力と想像力、そして経験を働かせながら予測してプレーするのが、難しいところであり面白いところです。 Q 応援は伝わりますか? 確かに声は聞こえないのですが、応援してくれている様子は伝わります。できれば大きなジェスチャーを交えてもらえると嬉しいですね。「ニッポン!チャチャチャ!」で拍手してくれるだけでもいいですし、「攻めろ!」「守れ!」みたいな簡単な手話を交えてもらうと、より伝わりやすいかもしれません。 Q 大会はいつ開催されているのですか? 国際大会はワールドカップとデフリンピックが大きな大会です。2021年のデフリンピック予選が今年の11月に香港で開催されます。現地に応援に来ていただくのが一番嬉しいですが、「日本ろう者サッカー協会」のホームページやSNS で情報発信、動画配信なども行う予定ですので、そちらで応援していただければと思います。 一般社団法人 日本ろう者サッカー協会 HP: http://jdfa.jp/ 覚えると応援がもっと楽しくなる! デフサッカー観戦で使える手話 攻めろ! いけ! 守れ! がんばれ! P10-11 ミライツクリビト 未来を見据え、どんな困難も楽しみながら乗り越える。 そんな人生の達人を、私たちは『ミライツクリビト』と名づけました。 NPO 法人SET  代表理事 三井 俊介さん 今を全力で生きるその先に、必ず目指す未来がある 被災地で「まちづくり」と 「ひとづくり」に取り組む  「誰かが笑顔になってくれることを全力でやると、幸福度がこんなに高くなるなんて。この道しかないな、と思いました」。学生時代に初めてチャリティフットサル大会を開催したときに抱いた気持ちを語ってくれたのは、NPO 法人SET 代表理事の三井俊介さん。人懐っこい笑顔が印象的な、今回のミライツクリビトだ。SET は、東日本大震災の復興支援ボランティアでメンバーが訪れたのをきっかけに、陸前高田市広田町を拠点に活動。現在は三井さんはじめ12 名のメンバーが広田町に移住し、町の人たちと共同で「まちづくり」と「ひとづくり」に取り組んでいる。  大学では国際政治学を専攻。元サッカー日本代表の中田英寿氏の活動を参考に学生団体を立ち上げ、チャリティフットサル大会を通して、日本の人たちがサッカーを楽しみ、そこで集まった支援をカンボジアのサッカー好きな子どもたちのために使う、という仕組みをつくった経験を持つ。「いくら人のために頑張って活動しても、暗い雰囲気だと次から参加したくなくなってしまいますよね。みんなで楽しくやったほうが長続きするんです」。楽しみながら社会貢献。これが原点であり、目標でもある。 周りを気にせず 今を楽しく豊かに暮らす  「震災の翌月、最初に現地入りしたときには、広田町で2週間ボランティア活動を行ったのですが、町はまだまだ瓦礫の山。自分たちの力のなさを痛感しました。それでも東京に帰る日に『地元の人間だけだと愚痴しか出ないけど、君たちがいたから笑って過ごせたよ』と言ってもらえたんです。自分たちは非力だけれど、目の前のこの人たちの役には立てたんだな、と強く感じました」。その後、毎月のように広田町へ。次第に町の魅力に惹かれ、翌年には移住を決意した。今やNPO の活動に加え、陸前高田市の市議会議員として奔走する日々だ。  三井さんが大切にしているのは『今を楽しく豊かに暮らすこと』。そう考えるようになったのは、広田町で出会った人たちの「残された私たちが、今を楽しんで生きないとね」という言葉を聞いてから。ある日突然、大切な人、大切な町を失った人がいる。来るはずの“明日”が来なかった人がいる。でも人は過去も未来も生きられないのだから、笑って前を向き、今を全力で生きるしかない。そう感じたのだという。  豊かな海の幸があり、気さくで温かい人たちが暮らすこの半島の町が、50年先も魅力的な町であり続けるために。その想いを抱いて走り続ける三井さん。「周りに遠慮していたら、人生なんてすぐ終わっちゃいますからね」。そう語る眼差しは、確かな未来を見据えていた。 中高生の修学旅行誘致や大学生向け滞在プログラムの実施、移住者の受け皿づくりなどを土台に、毎年30名の移住者確保を目指す。 冬はサウナ、夏は海水浴と、広田町での生活を満喫。船を操って漁にも出る。「自分で獲った魚介を肴に宴会するのが最高です」。 Profile NPO 法人SET 代表理事 三井 俊介(みつい しゅんすけ) 1988年茨城県生まれ。法政大学在学中から社会課題の解決に興味を持ち、東日本大震災の復興支援ボランティアを契機にNPO 法人SET を設立。現陸前高田市議会議員、NPO 法人高田暮舎フェロー、オピニオンサイト「ViewPoint」のライターでもある。 NPO 法人SET 東日本大震災復興支援活動のために立ち上げた学生団体が母体となり、2013 年に設立。岩手県陸前高田市広田町を拠点とし、「人口が減るからこそ豊かになるまちづくり・ひとづくり」を掲げ、広田町を「『やりたい』が『できた』に変わる町」にするための活動を続ける。 HP:https://set-hirota.com/ next 次のミライツクリビトは… 認定NPO 法人 底上げ 副理事 斉藤 祐輔さん 次回お話を伺うのは、宮城県気仙沼市で、地域活性化のために若者の人材育成を行う、認定NPO 法人 底上げの斉藤さんです。お楽しみに! HP:http://sokoage.org/? P12-13 Care-Fit Express ケアフィットエクスプレス このページでは、日本ケアフィット共育機構の活動や、共生社会に向けた取り組みに関するトピックをお知らせします。 ボランティア ブラインドサッカー試合会場でボランティア 3/19(火)?24(日)に品川区立天王洲公園にて開催された「IBSA ブラインドサッカーワールドグランプリ2019」にて「リレーションセンターTASKAL」を設置。サービス介助士の皆さんにボランティアスタッフとしてご参加いただきました。 大会最終日には、LINE アプリを活用して配慮が必要な人とサービス介助士ボランティアを繋ぐマッチングサービス「ボランティア用& HAND」の実証実験を実施。このサービスを利用した、今までブラインドサッカーを観戦したことがなかったという視覚障がいのある方から「次は視覚障がいのある友人と一緒に観戦したい!」という嬉しい反応をいただけました。ブラインドサッカーの醍醐味とサービス介助士のおもてなしを、さらに多くの人にお届けできる可能性が広がった、有意義な機会となりました。  (実証実験共同実施:一般社団法人PLAYERS) 学生 サービス介助士の学生たちがバリアフリー旅行を企画! 九州国際大学現代ビジネス学部地域経済学科福島ゼミは、観光と障害の研究を行っており、全員がサービス介助士資格を取得しています。ゼミ生たちは独自開発した昇降式電動車いすを活用することで、障がいのある人がバリアを感じることなく旅行を楽しめる「ペガサス・ボヤージュ」という旅行を立案。車いすユーザーの矢や野の剛まさ教たかさんと一緒にオーストラリアに向かいました。 旅行中は、学生たちが車いすの乗降を介助し、矢野さんが通訳を担当するなど、お互いが助け合うことの大切さを学び、バリアフリー先進国オーストラリアの施策や文化に触れることで、多くの気づきを得られたようです。これからの彼らの活動に期待しましょう! ケアフィットファーム ケアフィットファームのワインづくり 障がい者就労支援事業所「ケアフィットファーム」では、多様なメンバーが力を合わせ、それぞケアフィットエクスプレス れの特性を生かしながら、日々農作業を行っています。 葡萄づくりに最適なケアフィットファーム ケアフィットファームは、日本のワイン醸造の発祥の地と言われる山梨県甲州市勝沼で、マスカットベーリーA 種と甲州種を中心に、ワイン用の葡萄を栽培しています。ケアフィットファームのある鳥居平は、葡萄づくりには最適の場所。山の地形が扇型(扇状地)になっているので太陽の光がまんべんなく当たり、富士山から吹き下ろす風が昼夜の寒暖差を広げるため、最高の葡萄が育つ条件が整っているのです。 写真で見る、おいしいワインができるまで 秋に収穫された葡萄は、たくさんの工程を経てワインに姿を変えます。 ここでは、マスカットベーリーA による赤ワインづくりの工程をご紹介! 除梗(じょこう)・破砕(はさい) 葡萄の房から梗を取り除き、葡萄を潰してタンクに入れます。 醗酵(はっこう)・かいつき 果皮ごと醗酵。酵母菌を入れ、カイで何度もかき混ぜて醗酵を促します。 搾汁(さくじゅう) 搾汁機で絞り、種と皮を取り除きます。搾りかすの一部は、家畜のエサになります。 オリビキ タンクで静かに寝かせ、底にオリを沈殿させます。オリを残して別のタンクに移す作業を繰り返します。 貯蔵熟成 樽仕込み、寒仕込みなど、熟成方法により、ワインの味も変わります。 瓶詰 最後に味の調整と、ろ過をして瓶詰。おいしいワインのできあがり。 NEWS ケアフィットファームワイナリー、 まもなくオープン! 勝沼ワイン村に、まもなく「ケアフィットファームワイナリー」がオープン予定。これまで、ケアフィットファームで栽培されたワイン用葡萄は外部のワイナリーに委託して醸造していましたが、これからは、ケアフィットファームのオリジナルワインを醸造できることになります。多種多様なおいしいワインをつくる予定ですので、楽しみにお待ちください! 詳細はお問い合わせください! ケアフィットファームワイナリー 所在地: 〒409-1316 山梨県甲州市勝沼町勝沼2561-6 TEL/FAX:0553-34-8144 E-mail:winery@carefit.org 醸造責任者: 鈴木勝也 お問い合わせ 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 甲州事業所 障がい者就労支援事務所 ケアフィットファーム 〒404-0033 山梨県甲州市塩山赤尾650   0120-102-339 FAX: 0553-39-8682 E-mail: koshu@carefit.org W E B : https://www.carefit.org/farm/? P14-15 日本ケアフィット共育機構の学び≠体感! 介助士トピックス 日本ケアフィット共育機構が学びを提供する、サービス介助士、認知症介助士、防災介助士に関する最新情報や、日常生活でも役に立つ知識をご紹介します。 サービス介助士 JR 西日本駅係員と視覚障がい者が 合同勉強会を開催! JR 西日本では、視覚に障がいのあるお客さまに安心して鉄道をご利用いただくためにサービス介助士を導入し、2017 年から視覚に障がいのある方々との合同勉強会を実施しています。今年の勉強会は4/ 6(土)に滋賀県の草津駅で行われ約80名が参加しました。 駅係員向け事前研修では、盲導犬・白杖ユーザーが駅構内を歩行する際の注意点と応対の方法を確認。ホーム上での転落防止・緊急時対応練習では、障がいのある方々から「本当に危険なときは、遠慮なんかいらない!」「今みたいに身を呈ていして止めてもらえるとありがたいし、嬉しい」といった生の声を聞けたことで自分たちの応対方法を見直すことができた、という声が聞かれました。線路上体験では、敷石やレールの歩きづらさを体験し、最後は一時間にも及ぶディスカッション。 双方の疑問点や困りごとに耳を傾け、学びを深められた、実りの多い時間となりました。 線路の上の歩きづらさや、ホームの高さを確認 盲導犬ユーザーとの転落防止・緊急時対応練習 参加者による白熱したディスカッション 認知症介助士 認知症と口腔ケア 第三回「いつまでも人生の喜びを感じるために」 2018年9月の「認知症介助士特別講演」の内容をもとに、 認知症と口腔ケアの関係性について、3回にわたってご紹介します。 口はとても敏感な組織で、その機能は多岐にわたります。食事を食べる“摂食”機能、噛んで食べやすくする“咀嚼”機能、口に入ったものが熱い、柔らかいといったことを感じる“感覚”機能、おしゃべりをする“発話”機能など。感情を示したり表情をつくったりするときも、口は大きな役割を果たします。これらの 機能を保つことは、健康はもちろん、人間としての生きがいや人生の満足感に繋がります。認知症であってもなくても、人間にとって最後の楽しみは食事です。口腔ケアを怠らずに、認知症やその他の病気を予防することと、たとえ認知症になったとしても、いつまでもおいしく食事を食べられて、楽しく過ごせるように、今から準備していただければと思います。 講師 東京都健康長寿医療センター研究所 枝広(えだひろ) あや子さん 歯科医師、歯学博士。地域の高齢者や認知症の方への歯科的対応を行いながら、口腔機能、摂食嚥下障害、食事支援の研究に携わっている。 防災介助士 深刻な災害時のトイレ事情 いざというときのために、さまざまな防災グッズを用意している方も多いと思いますが、「災害時のトイレ」について考えたことがありますか?発災後約7割の人が6時間以内にトイレに行くといわれています。しかしながら、東日本大震災において3日以内に仮設トイレが避難所に行き渡っていたのは3割程度でした。また、水洗トイレは停電・断水などの理由で使用できなくなり、復旧までには長期間かかる場合があります。 トイレに行きたくないという理由で水分摂取を控えてしまうと健康状態に影響が出てしまうため、災害時におけるトイレの重要性は非常に高いのです。そのため、携帯トイレは水や食料と一緒に備えておくべき必需品といえます。1人あたり1日5回×7日間、計35回分の携帯トイレは必ず備えておくようにしましょう。 加藤さん著書「うんちはすごい」 (イースト・プレス)販売中! 災害時のトイレの知恵(家庭編)を収録 講師 NPO法人 日本トイレ研究所 代表理事 加藤 篤(かとう あつし)氏 講演活動や著作、実践活動を通して、子どもたちのトイレ環境や公共トイレ環境の改善、災害時のトイレ対策などを中心とした活動を行う。 ? P16-17 日本ケアフィット共育機構 そっと、さっと、あんしんを。 サービス介助士導入レポート 「株式会社タウ」 「一般社団法人 願いのくるま」 株式会社タウでは、昨年から展開する「一般社団法人 願いのくるま」の活動に生かすために、サービス介助セミナーを実施。 一般の従業員からも参加を募り、多くの学びを得られたそうです。 導入の経緯や学びの意義について、願いのくるまで活動されるお二人にお話を聞きました。 より思い出に残る旅を提供するために。 ?? 願いのくるまの活動についてお聞かせください。 熊野 願いのくるまは、ターミナルケア(終末期医療)を受けられている方を対象に、医療用車両を使ってその方が望む場所へ無料でお連れする支援ボランティアです。株式会社タウの社会貢献事業の一環として、昨年活動を開始したばかりで、これまで10件ほどの活動を行っています。 佐藤 年齢を重ねたり、病気や障害があったりすることが原因で諦めていた体験を、私たちが少しお手伝いすることで実現できる点に、大きなやりがいを感じています。ご本人はもちろん、ご家族や医療・介護従事者の皆さんにも喜んでいただけるのが、なにより嬉しいですね。 熊野 思い出の場所に行けるということだけでなく、その日を目標にして食事やリハビリをいつも以上に頑張ったり、当日はお化粧をしたり新しい服を着たりと、その方の生活の質が上がる部分にも意義があると考えています。 ?? サービス介助の学びを導入された経緯をお聞かせください。 熊野 願いのくるまの活動では、提携企業の医療スタッフと、タウの従業員のなかから公募、選抜されたメンバーが中心となって当日のお手伝いをします。お手伝いする私たちが介助の基本を理解しておかなければ、よい旅をご提供できないのではないか、と考えたのがきっかけです。もともと佐藤がサービス介助基礎研修を取得しており、学びの内容もわかっていたので、社内セミナーの開催を依頼しました。 佐藤 願いのくるまを利用される方は、車いすで移動される方がほとんどですから、セミナーでは車いすの操作方法や声かけのやり方を重点的に学べるようアレンジしていただきました。実際に車いすに乗って介助される立場を体験できたことは、とても有意義でしたね。つい先日実施した願いのくるまに参加した従業員も「セミナーで習ったことが早速実践できる」と、張り切ってお手伝いしていました。 ?? サービス介助の学びには、どんな意義があると思われますか? 熊野 この学びは、家族や身の回りの人を介助するときにも応用できますから、従業員への福利厚生という点でも意義があると考えています。また、障がいのある従業員と同じ部署に所属していれば自然と理解を深めることができますが、サービス介助の学びに触れることで、すべての従業員が障害や障がいのある人への理解を得られることに、大きな意義があると思います。 佐藤 超高齢社会という時代背景を考えても、自分自身も常に病気や怪我で介助を受ける側になり得るわけですから、持っておくべき技術や知識なのではないでしょうか。 熊野 今後、願いのくるまは、関東から全国へ対象地域を広げていく予定です。それと連動して、社内でもサービス介助の学びをさらに深めていきたいですね。 株式会社タウ 総務部 総務課 課長 一般社団法人 願いのくるま 佐藤 由季(さとう ゆき)さん 株式会社タウ 常務取締役 管理本部長 一般社団法人 願いのくるま 理事 熊野 真吾(くまの しんご)さん 好きなアーティストのコンサートや思い出の場所など、その場を訪れ、実際に体験することが、利用者の思い出となり、活力となる。 ? P18-22 Interview with top runners ここは誰もが魔法にかかる場所。 東京ディズニーリゾートが目指す 究極のホスピタリティ 日本有数のテーマパーク、「東京ディズニーリゾート」を運営するオリエンタルランド。東京ディスニーランドの開園から35年間、常にクオリティの高い世界観とホスピタリティを提供し、国内外から訪れる多くのゲストを魅了し続けています。その源泉となる思いについて、バリアフリープロデューサーである野口さんと、野口さんと共にバリアフリー施策に取り組む長嶋さんにお話を伺いました。 株式会社 オリエンタルランド CS 推進部 CS コミュニケーショングループ バリアフリープロデューサー 野口 浩一(のぐち こういち)さん CS 推進部 CS コミュニケーショングループ シニアリーディングスタッフ 長嶋 香奈(ながしま かな)さん 「メインストリート・ハウス」前にて。ここに来れば障がいのある方も触地図やスケールモデルを通じてパークの情報を知ることができる。 障害の有無に関わらず、 すべてのゲストにハピネスを。 ―― パークの運営において、大切にされていることを教えてください。 野口 ディズニーテーマパークには、優先順位の高い順に「Safety(安全)」「Courtesy(礼儀正しさ)」「Show(ショー)」「Efficiency(効率)」という4つの行動基準があり、頭文字をとって「SCSE」と呼ばれています。まずは安全第一。そのうえで、相手の立場に立ったおもてなしをする。さらにパーク内ではあらゆるものがショーの一部であるという気持ちを忘れずに、サービスの効率を高めていく。この「SCSE」に基づいて行動し、ゲストにハピネス(幸福感)を提供することが、私たちの役割です。 ―― 野口さんの業務について教えてください。 野口 バリアフリープロデューサーとして、パーク内のバリアフリー調査、立案、実行を主な業務としています。例えばハードにおいては、車いすから降りることなく乗れる客車のつくり込みや、立位の方も座位の方も使える高さのカウンターの設置など。ソフト面では、特に若いキャスト(パークのスタッフ)に対して、障害への理解や障がいのある方々への接し方といった根底部分の教育と、啓発ツールの制作。さらに、ゲストに向けた、ご案内パンフレットやホームページにおけるバリアフリーコンテンツの更新情報の提供も行っています。 ―― 野口さんが普段から心がけていることを教えてください。 野口 根底にあるのは “すべてのゲストがVIP”というウォルト・ディズニーの言葉です。バリアフリー施策を通じて、障害のあるなしに関わらず、ゲストに価値ある体験をしていただくこと。すなわち“ハピネス”の創造ですね。パークで過ごす時間のなかで、どれだけゲストの楽しい思い出をつくるお手伝いができるか。そのために、常に情報を更新し、迅速かつ的確に行動することを心がけています。 ―― バリアフリープロデューサーという立場から見て、開園時からの変化はどのように感じていますか? 野口 35年前の開園当初と比べると、社会のバリアフリー化が進み、障がいのある方々が積極的に外出することが当たり前になりましたよね。パークにおいても、開園当初には、ここまで多くの障がいのある方に利用していただくことは想定していなかったと思います。私自身も当時はアトラクションの担当をしていたのですが、経験や知識の不足から、障がいのある方に対して、ひるんでしまっていた記憶があります。その後、社会の変化やゲストのニーズに合わせて、少しずつ多様な方を受け入れられるように環境を整備してきました。現在は、ハード・ソフト両面で、さまざまな方に利用していただきやすいパークに近づいていると思いますし、これからもそのための作業は続けていきます。 ―― テーマパークならではの、バリアフリーの工夫についてお聞かせください。 野口 特別に障がいのある方のため、というよりは、すべての方を対象とした安全対策が結果としてバリアフリーに繋がっているというのがひとつの特徴かもしれません。例えば、怪我をしないように尖った柵の先端を柔らかい素材に変えたり、景観を楽しみながら歩くゲストがつまずかないように段差をなくしたりといったことですね。また、当事者の声を受け入れて、触地図やスケールモデルなど、テーマパークならではのサービス改善も進めています。 ―― 野口さんが目指すテーマパークとはどのようなものですか? 野口 「障害があるから楽しめない」ということのない状態ですね。障害は、その人の特徴であって、それが理由で楽しめないのであれば、それはサービスを提供するこちら側に問題があるんです。車いす利用の方も自由に移動できて、視覚障がいのある方もキャラクターの姿を想像できる。私たちは、それを大前提と捉えて、すべてのゲストが安全に楽しんでいただけるテーマパークでありたいと思っています。そのためには、ひとつの視点に偏るのではなく、さまざまな個性や特徴を想定した改善を続けていくことが大切です。 ―― キャストの皆さんにはどのような行動を期待されていますか? 野口 キャスト全員が、「ウォルト・ディズニーの分身」という自覚を持って、目の前のゲストを楽しませることを常に考えるようになってほしいですね。私たちは、キャストに向けて1から10まで指導するようなマニュアルは用意していません。アトラクションによっても応対の方法は変わりますし、なにより実際にゲストと触れ合い、ゲストに笑顔になってもらうためにはどうすればよいか考えることが大切なんです。そうすれば、やがて、ゲスト一人ひとりの状況に合わせてどのような配慮をすべきかを判断できるようになる。それこそがキャストとして必要な能力なんです。東京ディズニーリゾートは、多様な方々が集まる場所だと思っています。ここで得られる日々の経験こそが、ディズニーのホスピタリティの源泉なのだと思います。 継承される思い ?すべての人が権利と尊厳を持つ社会へ? これまでパークのバリアフリーを一手に担ってきた 野口さんの思いを受け継ぐのは、配属1 年目の長嶋さん。 きっとこの先、たくさんのハピネスを生み出してくれるに違いありません。 ――長嶋さんは、野口さんと一緒にバリアフリーを担当されているのですね。 長嶋 はい。まだ1年足らずではありますが、知識や経験が少ないからこそ気づくこともあると思っていますので、疑問に思ったことはすぐ野口に聞くようにしています。ひとつの施策や成果物が、なぜそのようになったのかを理解しておかないと、的確な改善提案もできないですから。 野口 長嶋が理解できないことはゲストにも伝わりませんから、聞かれたことにはきちんと答えるようにしています。異なる視点から意見を言ってもらえて助かっています。多様なニーズに応えるには、多様な意見の集積が大切ですからね。 ――野口さんから長嶋さんへ、さらにその先へと繋いでいきたい思いについてお聞かせください。長嶋 この4月から、「タートル・トーク」というアトラクションへの手話通訳の導入が開始されました。この手話通訳は、野口が10年近く構想・計画してきたものなのですが、告知の段階から反響がとても大きく、多くの方に歓迎されていることを肌で感じました。同時に、ゲストが楽しめるために何をすべきかを考えて仕事をすることの大切さを改めて実感できました。野口がバリアフリープロデューサーとして10年以上を費やして築いてきた思いを受け継ぎ、よりたくさんのハピネスを届けていきたいと思っています。 野口 近年、「ユニバーサルデザイン」や「バリアフリー」といった言葉が注目されることが多いですが、私は、取り立ててそのような言葉を使うことなく、すべての方々が平等に権利・尊厳を持って生きられる社会であるべきだと思っています。そういう意味では私たちはまだ成長途中なのでしょうね。私は東京ディズニーリゾートで35年間ホスピタリティの現場に関わってきましたが、パークの中も外も、環境は着実に整備されていることを実感しています。きっとこの先、誰もが自然と配慮し合える世の中になることを確信しています。 メインストリート・ハウス入り口にある、野口さんこだわりの触地図。触覚 と聴覚で施設の位置や情報を得られる。 さまざまな言語で書かれた案内パンフレット。ワールドバザール入り口に設置されており、目につきやすい。 車いすや電動カートのレンタルも受けられる。障がいのある方だけでなくお子さま連れの方にも人気。 視覚障がいのある方向けのスケールモデル。 INFORMATION オリエンタルランドのお客さまへのサービスにつ いてもっと知りたい方は、 紲WEB 版 “リベル・ケアフィット” をご覧ください。 https://www.carefit.org/liber_carefit/ ? P23 Kizzna 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」“紲” 020 2019 Summer おかげさまで創刊20 号。これまでも、これからも。 フリーペーパー『紲』は、今号の発行をもって創刊20号を迎えることができました。これもひとえに、読者の皆さまと、誌面作成にご協力いただいた皆さまのおかげです。編集部一同心より感謝しております。 私たちは、誰もが共に手を取り合って前に進める社会を目指し、この先も気づきのコンテンツをお届けしてまいります。引き続きご愛読のほど、よろしくお願いいたします。 なお、フリーペーパー『紲』のバックナンバーは日本ケアフィット共育機構のホームページで公開しておりますので、この機会にご一読いただけると幸いです。 この『紲』が、いつまでも皆さまの笑顔を支える存在となれますように。 フリーペーパー『紲』編集部 『紲』バックナンバーはこちら https://www.carefit.org/kizzna/ 次号予告 『紲 Kizzna』vol.21は2019年8月25日(日)発行予定です。 表記マナーについて 近年、全国の自治体や企業において「障害者」の「害」という表記がマイナスのイメージを連想させるため、表記を「障がい者」とする動きが広まっています。『紲 Kizzna』でも、人を表す言葉を使用する際にはひらがな表記を基本としています。? H4 020 2019 Summer Kizzna 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」“紲” 最高のハピネスを見つけよう。 Interview 株式会社 オリエンタルランド