H1 KIZZNA 紲 きずな 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」2015 Winter Vol.6 TAKE FREE!!  ご自由にお持ち下さい ENJOY THE WORLD 世界を、楽しめ ロングインタビュー バンクーバーパラリンピック銀メダリスト 上原大祐 生きがいインタビュー/舞踊家 大海日出子 ボランティア活動TOPICS ? P2 KIZZNA Vol.6 Theme 愉しむ あなたは、日々の生活を楽しんでいますか? 仕事や育児にせわしない生活のなかで「楽しみなんて…」 でも、ちょっと立ち止まって思い浮かべてみてください。 仕事を成し遂げたときの達成感、お客さまからの「ありがとう」の言葉、ふとしたときの家族の笑顔… 「楽しい瞬間」は、何気ない普段の生活のなかに潜んでいるのかもしれません。 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」紲第6号のキーワードは「愉しむ」。 人生を楽しみ、人を楽しませる人たちからたくさんの魔法の言葉をいただきました。 読み終えたとき、あなたの顔に自然と笑みが浮かんでいたら。そんな気持ちを込めてお届けします。 ? P3 KIZZNA 紲 きずな 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」2015 Winter Vol.6 CONTENTS 04 ロングインタビュー 世界を、楽しめ バンクーバーパラリンピック銀メダリスト 上原大祐さん 09 ボランティア活動TOPICS 12 ケアフィットファーム勝沼レポート 巨峰狩り&収穫祭 13 おも活 新宿区立愛日小学校 14 バリアフリー・ファッションショー 「バリコレ」レポート 15 教えて先生! 〜後見制度は、お願い上手の道具のひとつ〜 16 care-fit通信 19特別インタビュー NPO法人ココロとカラダを育てるハッピープロジェクト 代表理事 ましこりかさん 21生きがいインタビュー 舞踊家 大海日出子さん 25 担当者インタビュー「やさしさの現場から」 31 Interview with leader 「一人ひとりを尊重する駅街エキマチ」を目指して 東日本旅客鉄道株式会社 取締役 東京駅長 江藤?志さん 東京ステーションシティ運営協議会 事務局長 東日本旅客鉄道株式会社 東京支社 総務部 岩見成晃さん 発行人 畑中稔 発行所 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 〒101-0061 東京都千代田区三崎町2-2-6 TEL:03-6261-2333 FAX:03-6261-2334 URL: http://www.carefit.org E-mail:toiawase@carefit.org 製作 タクトシステム株式会社 制作 株式会社フリート 編集長 中川純一 編集 城田晃久 安藤康之 取材・文 城田晃久 竹馬絵子 川口有紀 撮影 大木大輔 大森裕之 三輪友紀 松村秀雄 アートディレクション 笛木 暁 デザイン 田辺淳志 風間 真 印刷 日経印刷株式会社 本誌の一部あるいは全部を無断で複写、複製、転載することは禁じます。 ?Kizzna 2015 Printed in Japan ? P4-7 ENJOY The WORLD 世界を、楽しめ 夢が、いちばんのエネルギー 元アイススレッジホッケー日本代表 上原 大祐 アイススレッジホッケーの日本代表選手として活躍された上原大祐さん。引退後は、子どもたちに向けたパラスポーツの普及活動や、障がいのあるなしに関わらず理解を深め合える環境づくりのための支援活動を行っています。そんな上原さんに、現在の取り組みについてと、人生の楽しみ方についてお聞きしました。 Profile うえはら だいすけ 1981年生まれ。長野県出身。二分脊椎症という障がいがありながらも小学校から高校まで普通学級で過ごす。信州大学在学時からアイススレッジホッケーを始め、日本代表としてトリノ、バンクーバーパラリンピックに参加。バンクーバーでは準決勝に決勝ゴールを決め銀メダル獲得に貢献した。現在はグラミソ・スミスクライン株式会社のコミュニケーション部門に勤務する傍ら、NPO法人を通じた社会貢献活動や自らの体験を基にした講演活動を精力的に行っている。 ――アイススレッジホッケーの日本代表選手として活躍され、バンクーバーパラリンピックでは銀メダルを獲得されました。 アイススレッジホッケーとの出会いは大学生のときでした。誘われて見に行った日本代表の合宿で体験させてもらって、すぐ虜になりました。現役生活は12年間。それまで本格的な運動をしたことはなかったのですが、パラリンピックにも2度出場できましたし、アメリカに留学することもできました。アイススレッジホッケーの魅力は、身体と身体がぶつかり合う迫力、両手に持ったスティックや壁を使ったテクニック、次の展開を読む頭脳プレー。そして何より私にとっては、障がいの軽重によるクラス分けや点数分けがないことが魅力的でした。現役時代は自分より障がいの軽いプレイヤーに打ち勝つのが最高のモチベーションでしたね。アイススレッジホッケーはやるのも楽しいですが、見る側もぶつかり合いの迫力とスピード感を堪能できる楽しいスポーツだと思います。 ――引退されてからは普及活動にも力を入れていると伺いました。 まだまだこれから、といったところです。まず場所の問題があります。ホッケーができるようなリンクは公営の場所が多く、子どもたちが使いたい時間帯は一般に開放されていて借りられなかったりするんです。そこを自治体や関連組織と協力して調整する必要があります。それから、日本ならではのパラスポーツの認知の問題ですね。海外ではパラリンピアンをスポーツマンとして見る文化がありますが、日本ではまだ福祉として見られてしまいがち。リハビリの延長のように思われている方が多いのが現状です。 そこで私は、「障がい者スポーツ」ではなくて「オフスポーツ」という言葉を使っています。これは私の親友が考案した言葉なのですが、パラスポーツを“身体の一部分をオフにするスポーツ”として見ていただきたいんです。アイススレッジホッケーも、足をオフにすれば誰でも体験することができる。ぜひそういった視点を皆さんに持ってもらいたいと思います。 ――「オフスポーツ」とは、素晴らしい言葉ですね。他にもさまざまなプロジェクトに参画されていると聞きました。 今はふたつの活動が軸になっています。ひとつはNPO 法人の「D-SHiPS32(ディーシップスミニ)」。アイススレッジホッケーの現役選手だった頃に訪れたカナダやアメリカで子どもたちが伸び伸びとスポーツを楽しんでいるのを見て、日本でも同じ環境をつくりたい、という思いから立ち上げた団体です。この「D-SHiPS32」では、子どもたちに向けたさまざまなスポーツのプログラムを組んで、体験会を開くといった活動を行っていく予定です。 色々な方とお話しをしていてよく聞くのが「障がいのある人との接し方がわからない」という言葉です。これは私が子どもの頃から変わっていない問題なのですが、障がいのある子どもが小中学校への入学を断られたりする。義務教育であるにも関わらず、です。なぜかというと、先生方が障がいのある子どもとの関わり方を知らないからなんですね。だから関わるのを怖がる。でも、そうやって障がいのある子を遠ざけることによって、子どもたちが接し方を学べないまま大人になり、教師や親になる。悪循環なんです。ですから私は、子どもたちが自然に交われる場所づくりを、スポーツの力を借りて実現したいんです。そしてこの「D-SHiPS32」の活動を通して、障がいのある子どもたちが小さい頃からスポーツに触れられて、夢を抱くことができる世の中を目指していきたいと思っています。 乗り越えようと思えば 乗り越えられる ――もうひとつの活動ではどんなことを目指されているのでしょう? 「ユニバーサルビレッジきっかける103(とうみ)」という名称で、障がいのあるなしに関わらず誰もが楽しめる村をつくろう、というコンセプトのもと、長野県の東御市で始めたプロジェクトです。 この「ユニバーサルビレッジきっかける103」では、車いすでも入っていける畑と古民家を準備して、障がいのあるなしに関わらず子どもたちが一緒に作業を行う農業体験会を開催していきます。障がいのある子には自分でも農作業ができるんだ、という経験をしてほしいし、そうでない子には車いすの介助の仕方や声かけの仕方、障がいのある人たちとの共同作業を学んでほしいと思っています。 ――上原さんにとっての人生の楽しみ方を教えてください。また、障がいのある人にとって人生を楽しむコツはどんなことだと思われますか? 私が今楽しいと感じるのは、人と会うことですね。現役を引退した頃に「Happy day project」というイベントに参加したのですが、そこでできた人の輪が広がって、10個以上のプロジェクトにつながったんです。先に挙げたNPOの活動やビレッジもそうですし、人と会ってヒントやアイディアをもらうことで自分のやりたいことを実現できるのは、とても楽しいですね。 障がいのある人に伝えたいのは、何かを諦めるのに「障がいがあるから」というのは理由にならないということです。障がい者でない人たちが全員悩みがないかというとそんなことはないでしょう? 私たちは障がいがあるから大変なんだ、ではなくて、みんなさまざまな理由で大変なんだ、だから乗り越えようと思えば乗り越えられるはず、という意識を持つことが大切だと思います。 その象徴的なエピソードとして、私はダブルダッチ(2本の縄を使う縄跳び)のチームに所属しているのですが、以前、知的障がいのある子どもたちに体験会を開いたときには、みんなが無理だと思っていました。でも、跳ばせてみたら全員跳ぶことができたんです。親御さんはとても驚かれていましたね。知らず知らずのうちに障がい者やその周りの人たちが自ら可能性を狭めていることがあるんですよ。 私たちのNPO法人「D-SHiPS32」のキャッチコピーは「夢が、いちばんのエネルギー」。夢を実現するために、自分の可能性を信じて挑戦してもらいたいですね。 ――力強い言葉、ありがとうございます。今後の益々のご活躍を期待しています!! 撮影:竹見修吾 ? P8 上原さんに聞く! おススメパラスポーツはこれだ! Check! トリノ・バンクーバーパラリンピック出場経験を持つ上原さんに、 おススメのパラスポーツをお聞きしました。 競技者ならではの視点あり、ツウな観戦ポイントあり。 さまざまな視点で楽しめるパラスポーツの魅力をご紹介します!! 車いすテニス ツーバウンドでの返球が認められている以外は用具もコートも通常のテニスと同じで、ルールも同様で行われる。男子、女子、クァード(四肢麻痺)、ジュニアの4つのクラスがあり、それぞれシングルスとダブルスがある。 上原さん おススメポイント! 何より日本人が強い! 男子の国枝慎吾選手は海外でも抜群の知名度ですし、女子の上地結衣選手も金メダルを狙える実力者です。それから、車いすワークを最も使うスポーツだと思います。鋭いターンを繰り返しながらボールの来るコースを予想してプレーしなければいけない。私はあんなに走れと言われても走れません(笑)。 ウィルチェアーラグビー バレーボールの試合球サイズのボールを2本のゴールポストで区切られた敵陣まで、パスやドリブル、膝の上に乗せるなどして運ぶ車いすラグビー。ボディコンタクトの激しさからマーダーボール(殺人ボール)などとも呼ばれる。 上原さん おススメポイント! 激しい肉弾戦が迫力満点です。そして実は、とても戦術的なスポーツなんですよ。隠れた見どころは、車いすのタイヤ交換。激しいボディコンタクトがあるのでよくパンクするのですが、そのパンクを直している間に休憩したり戦術の指示を受けたりする。アクシデントを逆手に取って、その後の試合を有利に運ぶために使うんです。 アルペンスキー 滑降や大回転、スノーボードなど、さまざまな種目が揃う。パラリンピックでは立位、座位、視覚障がいのクラスが採用されており、さらに障がいの程度に対応するため細かいクラス分けが行われている。 上原さん おススメポイント! あのスピード感がたまりません。ギリギリのところを狙う攻めの姿勢がないと勝てない、勇気のスポーツです。私も遊びで滑るのですが、とても選手たちのような勇気はありません(笑)。私ですら時速100キロ以上は出ますからね。それから、器具が重いので一度コースを外れると自分の力ではリカバリーが難しい。いかにうまく器具を使いこなすかもポイントになります。 ? P9 ボランティア活動TOPICS リレーションセンターTASKAL with ブラインドサッカー 誰もが観戦を楽しむために 日本ケアフィット共育機構では、9月2日(水)〜7日(月)に行われた「IBSA ブラインドサッカーアジア選手権 2015」で「リレーションセンターTASKAL」を設置。車いす利用の方の誘導・案内や視覚障がいのある方や初観戦の方向けに音声ガイドの貸し出しを行いました。 国立代々木競技場フットサルコートで開催された「IBSA ブラインドサッカーアジア選手権 2015」では、ボランティアスタッフによる車いす利用の方の誘導・案内や「TASKAL」ブースでの音声ガイド貸し出し、問い合わせ対応などを行いました。ボランティアリーダーの吉田茉莉さんは、「障がいのある方にも観戦を楽しんでもらえるようしっかりお手伝いしたいです。こういったスポーツイベントでは、ボランティアも一緒に盛り上がれるので楽しいですね」と語ります。 残念ながら日本代表はリオパラリンピックの出場権を得ることはできませんでしたが、連日熱戦が繰り広げられ大勢の方が観戦に訪れました。日本ブラインドサッカー協会と日本ケアフィット共育機構が目指すのは、「障がいのあるなしに関わらず試合を楽しめる」環境。視覚障がいのある女性が音声ガイドのイヤホンを耳にはめながら仰っていた、「これで試合を“見られる”わね」という言葉が印象的でした。 リレーションセンターTASKALの原点 イベントに訪れる方たちのさまざまな「困った」に対応する「TASKAL」の原点は、実はブラインドサッカー。「障がいのある人もない人も混ざり合う社会の実現」というビジョンを掲げる日本ブラインドサッカー協会から日本ケアフィット共育機構に働きかけがあり、昨年の世界選手権で初めてリレーションセンターが設置されたのです。 会場では車いす利用の方が観戦しやすいように、十分なスペースを確保していました。 観客全員が手を繋いでニッポンコール。障がいのあるなしに関わらず会場が一体になれた瞬間です。 ボランティアリーダー 吉田よしだ茉莉まりさん(20歳学生) 大学ではスポーツ系の学部で学ぶ吉田さん。小学校からサッカーをしてきたこともあってブラインドサッカーに興味を持ったそう。ボランティアの魅力は「普段は接点のない年齢の離れた方とお話しできたり、いろいろな背景を持つ人たちとの繋がりができること」。 ? p10 ボランティア活動TOPICS 日本ケアフィット共育機構では、障がいのあるなしに関わらず、スポーツや娯楽を楽しめる社会を目指し、さまざまな活動のお手伝いをさせていただいています。 ここでは最近お手伝いしたイベントをご紹介。どのイベントも大盛り上がりで、ボランティアの皆さんも「楽しい」「充実した時間を過ごせる」と、いきいきとした表情で語ってくれます。次はぜひ、あなたも一緒に参加してみませんか? 10月10日(土)〜17日(土) 車いすバスケットボール 三菱電機2015 IWBFアジアオセアニア チャンピオンシップ千葉 2年に一度開催される「IWBF アジアオセアニアチャンピオンシップ」。今回はリオパラリンピック予選を兼ねての開催とあって、会場となった千葉ポートアリーナは熱気が充満していました。あまりの動きの激しさにタイヤの焦げる匂いが立ち込めるなか、身体を張ってボールを奪い合う選手たち。女子は残念ながら敗退となってしまいましたが、男子は3位決定戦で宿敵韓国に快勝し、見事11大会連続となるパラリンピック出場権を手にしました。ロンドンでは9位だった日本代表。リオでの更なる活躍が期待されます。日本ケアフィット共育機構では、大会期間中はボランティアスタッフとして物販や応援グッズの配布をお手伝い。応援にも声を嗄らしました。 10月29日(木)〜11月1日(日) ウィルチェアーラグビー 三菱商事 2015 IWRF アジア・ オセアニア チャンピオンシップ 千葉ポートアリーナでは、車いすバスケットボールに続いてウィルチェアーラグビー(車いすラグビー)のアジア・オセアニアチャンピオンシップが開催されました。大会期間中は、「リレーションセンターTASKAL」を設置。サービス介助士が車いすご利用の方をコートサイドへご案内したり、観客席入口でベビーカーをお預かりするなどのお手伝いを行いました。大会は見事日本代表が優勝。表彰式では、サービス介助士で大学生の有賀桃子さんがメダル授与のアシスタントとして振り袖姿で登場し、会場は華やかさに包まれました。有賀さんは資格取得後、学業やアルバイトの合間をぬってボランティア活動に積極的に参加しています。 ? p11 10月9日(金) 車いす利用 高齢者の江の島見学会 車いす利用の高齢者に、普段車いすで訪れることができない江の島頂上部まで巡っていただく、藤沢湘南ライオンズクラブ主催の見学会に、サービス介助士資格を持つ東洋大学の学生さんもボランティアメンバーとして参加してくれました。初参加の三浦華さんは、「はじめはドキドキだったのですが、すぐに慣れて参加者の方とたくさんお話しすることができました。うまく介助しようと思うのではなく、一緒の時間を楽しむ意識が大切だと感じました」と語ってくれました。 10月12日(月祝) ゴールドコンサート 今年で12 回目を迎えた障がい者の音楽コンテスト「ゴールドコンサート」(NPO法人日本バリアフリー協会主催)。毎年多くの障がいのあるミュージシャンが東京国際フォーラムを目指して参加します。このコンサートでは、車いす席の設置、手話通訳など障がいのある方でも楽しめるようさまざまな配慮がされており、日本ケアフィット共育機構も「リレーションセンターTASKAL」を設置して、車いす利用の方のお手伝いやベビーカーの一時預かりなどを行いました。 リレーションセンターTASKAL 活動記録 6月〜11月 Jリーグ東京ヴェルディ ホームゲーム 味の素スタジアム(調布市)他 2015明治安田生命J2リーグ 7月11日 COOL JAPAN DANCE SHOWCASE in YOKOHAMA Bay Side Yokohama(横浜市) 誰でも参加できる ダンスコンテスト 7月11・12日 第14回アクサ ブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権 アミノバイタルフィールド(調布市) B1クラス日本一決定戦 9月〜10月 なでしこリーグ日テレ・ ベレーザホームゲーム 味の素フィールド西が丘(北区) 他 2015プレナスなでしこリーグ 9月2〜7日 IBSAブラインドサッカー アジア選手権 国立代々木競技場フットサルコート(渋谷区) リオパラ予選 10月9日 車いす利用高齢者の江の島見学会 江の島内(藤沢市) 高齢者 江の島観光 ボランティア 10月12日 第12回ゴールドコンサート 東京国際フォーラム(千代田区) 障がいのあるミュージシャンの音楽コンテスト 10月10〜17日 三菱電機 2015IWBFアジアオセアニア チャンピオンシップ千葉 千葉ポートアリーナ(千葉市) 車いすバスケットボール、リオパラ予選 10月29日〜11月1日 三菱商事 2015 IWRF アジア・オセアニア チャンピオンシップ 千葉ポートアリーナ(千葉市) ウィルチェアーラグビー、 リオパラ予選 11月7・8日 チャレンジドフェスティバル 日比谷公園噴水広場(千代田区) 障がいがある人とない人と共に創る文化祭 ? p12 ケアフィット ファーム勝沼 レポート 「ケアフィットファーム勝沼」で、 今年も巨峰狩り&収穫祭が催されました。 8月23日に「ケアフィットファーム勝沼」で、サービス介助士やボランティアの皆さん、茨城県から来た障がいのある子どもたち、山梨県内の特別支援学校や高齢者施設の皆さんが参加して、「巨峰狩り&収穫祭」が催されました。さわやかな青空のもと、参加者たちはたわわに実った甘い巨峰をほおばり、ホクホクのじゃがいもやケアフィットファーム産のワインに舌鼓を打ちました。愛情を込めてつくった作物の味を獲ったその場で味わう贅沢。子どもたちにとっても貴重な体験だったのではないでしょうか。 バイオトイレも登場!! 駐車場には、車いす利用の方でも使用できるようにリフトが設置された「バイオトイレ車両」が。し尿を畑に戻してリユース可能な機能を持つだけでなく、室内には授乳や休憩に使う台やエアコン、救急箱、AED(自動体外式除細動器)まで設置されている、誰もが快適に使える移動型トイレです。 参加者の声 神奈川からお越しの 菊地さん(左) 南元みなもとさん(中) 莇あざみさん(右) 「私たち3人はボランティア仲間です。今回初めて参加しました。巨峰はとっても甘くておいしいですね。特別支援学校の皆さんも一緒に楽しんでくれるようにお手伝いしたいと思います」 ケアフィットファームのこれから 日本ケアフィット共育機構では、農業生産法人合同会社ケアフィットファームを設立しました。 1.あらゆる人たちが共に働き、共に学べる場を創造する。 2.介助士等の活動の支援と活躍の場の提供を実践する。 3.日本の農業の再生と食の安全の確保。 障がい福祉サービス提供事業者として、障がい者遠隔地雇用という新たなビジネスモデルを展開していく予定です。 お問い合わせ/お申し込み 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 東京都千代田区三崎町2-2-6 TEL:03-6261-2333 FAX:03-6261-2334 E-mail:farm@carefit.org WEB http://www.carefit.org/farm/ ? p13 おもてなしの心、 おもいやりの心を大切に。 おも活 「そっと、さっと、あんしんを。」プロジェクト 子どもたちに、介助の体験からおもいやりの心を学んでもらう活動「おも活」。今回は新宿区立愛日小学校に伺ってきました。 おも活とは・・・ 日本ケアフィット共育機構のサービス介助士・講師が小学校を訪問し、子どもたちに障がいのある方への案内方法やレクリエーションを通して、相手の立場になって考えることの大切さを伝える活動。日本ブラインドサッカー協会が開催するダイバーシティ教育プログラム「スポ育」実施校に対しても活動を展開し、2020年に向けてボランティア文化を育てていきます。 「おも活」五箇条 ?社会にはいろいろな人が暮らしていることを知ろう ?相手の身になって、ものを考えよう ?相手を思いやる気持ちを持とう ?しっかりとあいさつしよう ?家族やお友達に対して、「おも活」を始めてみよう 今回参加してくれたのは、4年生の2組計43名。親御さんも参観するなか、最初は緊張気味ながらも元気いっぱいに挨拶してくれました。講師を担当したのは日本ケアフィット共育機構のサービス介助士インストラクターである東谷。おも活の大切さを、みんなで楽しみながら学んでいきます。 真剣に講師の言葉を聞く子どもたち。大切なことは「伝える」ではなくて「伝わる」こと。一方的に案内・説明をしても、相手に理解してもらわなければ伝わったことにはなりません。そのために大切なのは相手の立場に立って考えること。それがやがて「思いやり」につながります。 ふたりひと組になって視覚に障がいのある方への案内方法を学びました。アイマスクをしたお友達を、マットを乗り越えていすに座るまで案内していきます。最初は苦戦しながらも、「止まります」「曲がります」「段差があります」など、お友達の様子を見ながらしっかり声かけをすることができました。 まとめ 最後に講師から「困っているのはどんな人だと思う?」「困っている人にはどんなお手伝いができると思う?」などの問いを投げかけられた子どもたち。みんなで考えて、たくさんのアイディアが生まれました。今回の「おも活」を通して、自分たちのすぐ近くに困っている人や助けが必要な人がいるという気づきや、相手の身になって考えることの大切さを学ぶきっかけになったのではないでしょうか。 学校関係者、保護者の皆さまへ 日本ケアフィット共育機構では「おも活」に参加していただける学校、施設を募集しています。どうぞお気軽にお問い合わせください。 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 〒101-0061 東京都千代田区三崎町2-2-6 TEL:03-6261-2333 FAX:03-6261-2334 WEB http://www.carefit.org/ ? p14 毎週日曜日 夜7:00~ 再放送 毎週金曜日0:00〜(木曜深夜) 3000人の観客! アイディア満載のバリアフリー・ ファッションショー「バリコレ」! バリアがなくなると、生きることが楽しくなる! みんなのためのバリアフリー・バラエティ「バリバラ」は、恋愛、仕事から、スポーツ、アートにいたるまで、日常生活のあらゆるジャンルについて、障がい者が「本当に必要な情報」を楽しくお届けする番組。この番組内で、はるな愛さんがプロデュースしたバリアフリー・ファッションショー「バリコレ」に、サービス介助士資格を持つ九州国際大学の学生が「チーム・タキシーマ」として参加しました。 九州国際大学国際関係学部の福島ゼミ生5名と香蘭ファッションデザイン専門学校生2名が共同開発した車いす利用の新郎のための婚礼衣装「タキシーマ」は、タキシードの上着と和服の袴を融合させた斬新なデザイン。車いすに座ったままでも型崩れしない上着や着脱がし易い袴など、数々の工夫が施されています。 ショーのモデルは義足のアスリート藤嶋大輔さん。藤嶋さんは昇降式電動車いすに乗り、新婦役のはるな愛さんと目線の高さを揃えてバージンロードを歩きました。学生たちの「男であれば、花嫁と目線を合わせて歩きたいはず」という思いが形になった瞬間でした。 また、チーム・タキシーマのメンバーはサポート役として他チームのステージにも出演したほか、サービス介助士の資格を持つ九国大生は車いすの介助も行うなど八面六臂の活躍を見せていました。 タキシーマを着用し、昇降式電動車いすに乗るモデルの藤嶋さん。目線は170p近くまで上がった。 タキシーマプロジェクトの一員として参加できたことを誇りに思います! 渡辺さん タキシーマで障がい者の婚礼市場にイノベーションを起こします! 松本さん 目的が同じであれば、ハンディキャップって感じないものなんですね! 穴井さん 障がいはハンディではなく個性なんだと思えるようになりました。 石本さん 車いす利用の方には目線の高さや歩くスピードを合わせて、孤独感を感じさせないよう気遣いました。 三戸さん チーム・タキシーマのメンバーは、他のチームにもモデルとして参加。 「タキシーマ」出演直前の舞台裏。 左から 井手涼太(香蘭)、渡辺龍汰郎、穴井祐汰、松本貴大(香蘭)、モデル藤嶋大輔、石本雅大、三戸亘介、松本健一郎 車いすの新郎向け婚礼衣装「タキシーマ」 ? p15 教えて先生! 人に頼るのはイヤなんだけど… 〜後見制度は、お願い上手の道具のひとつ〜 CASE 2 軽度の認知症でも後見制度を利用すべき? Q 軽度の認知症の場合も成年後見人を頼んだほうがよいのでしょうか?できればあまり他人に迷惑をかけたくないのですが… A 「保佐」「補助」という代理を一部だけ依頼する後見の種類があります。迷惑などと思わず、「お願い上手」になるのが、これからの上手な生き方ではないでしょうか。 先生より 日本人の平均寿命は男性80歳、女性86歳。それに対する健康寿命が男性70歳、女性72歳。つまり、誰かの支援や医療的な処置を受けて生きていかなければならない期間は、男女ともに10年を越えます。この「簡単に死ねないリスク」期間が、主に後見制度の出番となるわけです。アルツハイマーなど進行性の脳の病気でなく、高齢に伴う症状の軽い認知症であれば、後見の類型でいうと「保佐」や「補助」という、代理を一部だけ他人に依頼する後見の一種に該当することになります。代理を依頼される側を「保佐人」「補助人」と言います。 この保佐人の仕事はなかなか大変です。なぜなら、これまで自分でなにもかもやってきた人生の達人である高齢者が、突然他人の手を借りないと生きていけなくなるのです。その落胆ぶりは想像に難くありません。後見人のような全面的な代理権を持たない保佐人は、ご本人に代理の内容を確認する機会が多いのですが、その度ごとにご本人が「こんなことになって情けない!」と嘆くばかりで肝心の代理の内容の話がいっこうに進まないこともあるのです。 これからは、最後まで誰の手も借りずに死を迎えることはほぼ不可能であるという事実を受け入れて、どのように他人の力を借りて生きていくかという考え方が重要になってくると思います。簡単に死ねないリスクと向き合い、お願い上手になること。それを早いうちから準備しておくことが、高齢社会での上手な生き方ではないでしょうか。 今回の先生 Consulting Office 桑瀬 司法書士 桑瀬 登起子さん 司法書士としての実務経験をもとに、「桃太郎一家」を登場させた相続セミナー(相続、遺言、後見など)をはじめて4年目です。相続の話なのに笑いあり。難しいことを楽しく聞いていただくセミナーの講師もつとめております。登記業務にとどまらない相続、遺言、後見の全体を俯瞰した三位一体の相続コンサルティング等を実践中です。 Consulting Office 桑瀬 TEL:03?3354?0445 ? p16 care-fit通信 認知症介助士トピックス 認知症は、こわくない。第ニ回 まだまだある! 認知症を防ぐライフハック 第一回では、将来の認知症予防に役立つ生活習慣についてご紹介しました。いまや誰もがいずれなる可能性のあるといわれる認知症。このごくありふれた病気に、家族や自分がもしかかってしまったとしても、すぐに途方にくれることはないのです。それでは、どんな対抗策があるのでしょうか。引き続き、認知症を心理学の方面から研究する宇良千秋先生のアドバイスをもとに考えてみましょう。 もしあなたが、突然認知症となったら――。そんな想像は難しいかもしれません。しかし、東京都の65歳以上の13. 7% が認知症患者という現実があります。誰にも起こりうる自分の問題として考えてみることが、認知症に対抗する第一歩なのです。 認知症が始まると、物忘れや失敗が続くことで、人によっては大きな不安を抱くようになります。気分が沈んだり、周囲から物忘れや失敗を指摘されていらいらしたりしてしまう人もいるでしょう。しかし、そこで人生が終わるわけではありません。そんなとき、あなたは周囲にどう支えてもらえたら安心できるでしょうか。 不安な気持ちの中、できることはまだたくさんあるのに、もし失敗を厳しく責めたてられたりしたら、どう思うでしょうか。「一人の人間として認め、気持ちを理解しようとしてもらえなければ、誰だって悲しくなりますね。難しいようで、実は普通の人間関係と同じだと考えてください」とは宇良先生の言葉。認知症の人と接するときは、特別な知識よりまず「自分自身がその立場ならどう感じるか」というほんの少しの想像力と、優しい気持ちが大切なのです。 最近の研究で、運動や趣味、知的活動、人づきあいなどの生活習慣が認知症の発症を遅らせる可能性があることがわかってきました。これらの生活習慣が認知症になったあとの認知機能の低下抑制、つまり認知症の進行予防にも効果的かどうかというエビデンスはまだ十分に得られていませんが、たとえ認知症になっても運動や趣味を続けて人との交流を維持することができれば、毎日の生活に張り合いが持ててQOL を高めることができます。 認知症の治療は、まだまだ難しいのが現状です。しかし私たちが病気を正しく理解することで、この病気を必要以上に恐れる必要はないということが、次第に分かってくるのです。 *次回は、「認知症と寄り添える? お互いさまの社会へ」をご紹介します。 Profile 宇良 千秋先生 東京都健康長寿医療センター研究所「自立促進と介護予防研究チーム」研究員(心理学博士) 取材・文: 竹馬絵子 撮影: 三輪友紀 認知症介助士 資格のご案内 超高齢化社会を迎えた日本。認知症はすべての人にとって他人ごとではありません。ご家族、ご自身、お客さま、誰しもが認知症と診断される可能性はあるのです。認知症介助士は、認知症についての正しい知識と適切なケアを身につけたい方に最適の資格です。認知症のご家族をお持ちの方、認知症のお客さまと接する可能性のあるサービス業に従事されている方は、取得を目指されてはいかがでしょう。 認知症介助士 正しい知識 おもてなしの心 寄り添う 詳細・お問い合わせはこちら! ? http://www.carefit.org/ ? p17 サービス介助士トピックス 手話deフットサル交流会開催! 去る9/5(土)、ケアフィット共育機構主催の「手話deフットサル交流会」が、上野の岩倉高等学校で開催されました。「手話deフットサル交流会」は「デフサッカー」と呼ばれる聴覚障がい者によるサッカーの体験会。楽しく身体を動かしながらも、実り多い3時間となりました。 今回の交流会では、岩倉高等学校サッカー部のメンバーをはじめ、サービス介助士の有資格者など合計40名ほどが参加、フットサル形式での体験を行いました。 デフサッカーの世界を知るため、参加者は全員耳栓を付け、言葉を出すことを禁止されます。音?を遮断された状態でのプレーに、つい全員がボールの方に集まったり、動きも恐る恐るになりがち。しかし「視野を広く、相手をよく見て」という植松隼人コーチのアドバイスにより、徐々に通常のフットサルと変わらない激しさに。ゴール後のハイタッチにたくさんの笑顔がこぼれていました。 参加者の声 最初は相手がどこにいるかわからず、圧迫感があって少し怖かったです。将来はサッカーに関わる仕事に就きたいと思っているので、デフサッカーをプレーできたのは貴重な体験になりました。 米田 明星さん 岩倉高等学校 普通科1年生 警備業界にも広がる、サービス介助士 警備担当者は、施設や企業を訪れるお客さまに最初に対応することが多いという理由から、警備業界においてサービススキル向上に対する意識が高まっています。日本ケアフィット共育機構では、各地の警備業協会と協力して、研修会での講演やサービス介助士体験会を通して介助に関する知識や技術を身に付けていただくお手伝いを行っています。 東京都警備業協会 9/16(水)「施設警備業務経営者研修会」にて、日本ケアフィット共育機構講師による講演。皆さん熱心に耳を傾けていました。 埼玉県警備業協会 8/28(金)「警備現場にて必要とされる、おもてなし接遇体験会」を開催。おもてなしの大切さを強く感じていただけたようです。 サービス介助士 資格のご案内 サービス介助士とは、高齢の人や障がいがある人を手伝うときの「おもてなしの心」と「介助技術」を学び、相手に安心していただきながら手伝いができる人のことで、駅や空港、銀行、ホテルなどで活躍しています。お仕事をお持ちの方でも平均2ヶ月で取得できるサービス介助士資格。個人、法人問わず参加できる無料の講座説明会も行っていますので、ぜひ一度お問い合わせください。 おもてなしの心 正しい介助技術 サービス介助士 詳細・お問い合わせはこちら! ? http://www.carefit.org/ ? p18 care-fit 通信 防災介助士トピックス 導入事例&講習会レポート 「お客さまに安心いただける対応を」 ネクスコ東日本グループ 高速道路の維持管理業務やサービスエリア事業を展開されているネクスコ東日本グループ。2015年にリニューアルオープンした茨城県のサービスエリア「pasar守谷」では、サービス介助士、防災介助士資格を持ったスタッフが利用されるお客さまの対応にあたっています。 「pasar守谷」では、地域の防災拠点としての役割も想定した運営がなされており、万が一災害が発生した場合には自衛隊、消防、医療機関が集う支援拠点として活用されます。そのために、ヘリポート、自家発電設備、太陽光パネル、井戸、エアテントなどが準備されており、いざというときにはフレキシブルな空間利用ができるよう、キッズスペースや大型テーブルは可動式になっています。 また、急病人や災害発生時にスムースに対応できるよう、防災訓練やAED講習の実施とともに、防災介助士資格の取得も進められています。サービスエリアは災害時には孤立しやすい場所であり、これまでも、大雪による通行止めや台風による浸水などがあった際には、積極的なお声掛けや状況説明を行うなど、お客さまに安心いただける対応を行っているそうです。 pasar守谷のインフォメーションにはサービス介助士の資格を持ったエリアコンシェルジェが常駐し、車いす利用の方や障がいのある方への対応にあたっています。また、杖をご利用の方やご高齢の方に車いすレンタルを行っているそうです。 防災介助士講習会 参加者の声 サービスエリアで災害や急病人が発生した際には、インフォメーションの担当者が対応しなければいけません。今回の講習会は、そのために必要な知識を学ぶよい機会になったと思います。 久保博康さん 株式会社ネクスコ東日本 エリアサポート フロントサービス部 フロントサービス課 課長 今までは地震が起きても、小さい揺れの時は仕事を続けたり、ご飯を食べ続けたりしていましたが、小さい揺れの後に大きな揺れが来ることもあることを学べたので今後は早めに対応したいと思います。 石平美希さん 株式会社ネクスコ東日本 エリアサポート フロントサービス部 フロントサービス課 とても貴重な時間を過ごせました。災害が起きてしまったときの応対方法に活かしていきたいと思います。 渡邊美智子さん 株式会社ネクスコ東日本 エリアサポート 蓮田SA インフォメーション チーフコンシェルジェ 応急手当の方法や、人を搬送する方法などの体験が特に勉強になりました。お客様対応だけでなく、自分自身・家族のためにもなる学びでした。 関温子さん 株式会社ネクスコ東日本 エリアサポート フロントサービス部 フロントサービス課 防災介助士 資格のご案内 いつでも起こりうる災害について普段からどのように備えるか、災害時にどのように行動するかを理解し、実践できるのが防災介助士です。もしものときに役立つ知識や技術を身に付けることはもちろん、日常から防災を意識することで、被害を最小限に抑え、自分や大切な人を守ることができるのです。個人に限らず企業や学校関係の方も、講習へのご参加をお待ちしています。 知る 守る 助ける 詳細・お問い合わせはこちら! ?http://www.carefit.org/ ? p19 特別インタビュー NPO法人ココロとカラダを育てるハッピープロジェクト 代表理事 ましこりかさん 「子どもたちの笑顔のために いま、私たちができること」 昨年、東日本大震災に由来する自主避難先での暮らしや子育てに悩むママたちへの情報の共有や悩みごとの解決をサポートする「NPO法人ココロとカラダを育てるハッピープロジェクト」を立ち上げたましこりかさん。被災の当事者であり支援ネットワークの中心でもあるましこさんに、避難ママたちの現状やNPO法人の活動についてお聞きしました。 ──東日本大震災直後から避難ママの支援活動をされています。 はい。子どもたちを中心とした茶話会や公園での集まりなどを重ね、昨年NPO法人を設立しました。現在は、子どもたちの健康についてドクターに相談する「ふくしまココロとカラダの健康相談会」、子どもを自然の中で育てよう、という趣旨で始めた「ココカラ子ども大学」、そして子育てに関する情報交換を行う「ままずてーぶる」の3本柱が主な活動内容です。心細い思いをしている避難ママたちにとって、心の休まる大切なコミュニティになっています。 ──支援活動において、どんな課題をお持ちでしょうか。 いま、避難ママたちの悩みは、避難者として解決しなければいけない問題と子育てに関する問題の2つに分けられます。前者に関しては支援者の方にさまざまなご協力をいただけているのですが、後者に関しては、地域とのつながりがなければ解決できません。ですからこれからは、地域の「ママ友」たちにもこのネットワークに参加してもらえる仕組みづくりを行っていきたいと思っています。 ──これからの活動予定について教えてください。 震災から4年が過ぎましたが、まだまだ避難生活を続けなければならないママもいます。福島に帰れたママでも、このコミュニティをまだ必要とされている方も多い。そんなママたちの拠りどころとしてこのコミュニティを堅持していかなければならないと思いますし、子どもたちのためにも避難生活の安定を模索していかなければならないと思っています。ママにとっては子どもの笑顔がなによりの活力源。その笑顔を守るために、周囲のママや支援者の皆さんと協力して、よりよい環境をつくっていきたいと思います。 プロフィール ましこりかさん 2011年5月に福島県から長女とふたりで西東京市に自主避難。その後避難ママのコミュニティを立ち上げ、情報共有活動や支援活動を継続的に行っている。講演多数。 NPO法人ココロとカラダを育てるハッピープロジェクト代表理事 つながろう! 放射能から避難したママネット代表 ご支援をお願いします ◯賛助会員で支える 個人賛助会員 入会金1000円/年会費1口3000円 団体賛助会員 入会金5000円/年会費1口5000円 ◯寄付で支える 継続して活動ができるよう、ご支援をお願いいたします。 ゆうちょ銀行 振替口座 00110-4-602009 特定非営利活動法人 ココロとカラダを育てるハッピープロジェクト ?銀行などの金融機関からのお振込みの場合は ゆうちょ銀行  当座 店番 019 口座 0602009 特定非営利活動法人 ココロとカラダを育てるハッピープロジェクト ◯ボランティアとしてご協力いただける方を募集します。 当日の保育や会場運営などのお手伝いをしていただけるボランティアを大募集しています。 お問い合わせ NPO法人ココロとカラダを育てる ハッピープロジェクト 〒169-0051 東京都新宿区西早稲田2-3-1 早稲田奉仕園内 HP:http://kokokara-hp.org/ E-mail:info@kokokara-hp.org ? p20-21(誌面構成に対応し、逆順で抽出) Worth living interview 生きがいインタビュー No.02 舞踊家 大海日出子さん 大好きな舞台を、大好きな子どもたちと 泣いたり喚いたりしながら共につくり上げる幸せ。 一人ひとりの個性が、すくすくと育っていく様子を いつまでも見つめ続けていきたい。 障がい者の舞踊劇団を主宰。 一人ひとりの個性を大切に、 舞台をつくり上げる。 自ら染めたというレインボーの髪型に、個性的なサングラス。寒い日でもお構いなしの雪駄履き。個性的ないでたちでインタビュールームに現れた大海日出子さんは、中学生の頃から演劇活動に携わり、日本代表としてギムナストラーダ(世界体操祭)に2大会連続出場するなど華々しい実績を残された後、ダンススクールを営む傍らで障がいのある人たちによる舞踊劇団「創」(生まれる)を立ち上げ、毎年水戸芸術館で行われる「水戸市芸術祭」に参加している。 劇団を立ち上げたきっかけは、ひとりの障がいのある少年がダンススクールに入ってきたことがきっかけだったそう。「明るくて周りからとても愛される子でした。なにより、パフォーマンスが天才的。マイケル・ジャクソンを踊らせたら右に出るものはいなかったわね」。当初は大海さんとその少年のふたりでパフォーマンスを始めたのだという。その少年が誘ってきた学校の友だちも含めて10名で野外パフォーマンスを行うように。その後さらに増え続けて今では30名ほどが所属し、下は5歳から上は50歳まで、年に1度の発表のために日々レッスンに明け暮れている。 「障がいとひと口に言っても人それぞれですから。一人ひとりに合わせて対応を変えないといけません。発話は苦手でも運動能力のすごい子もいる。リズム感に優れた子も、動作を覚えるのが得意な子もいる。その子なりのやり方で教えてあげることが大切なんです」と大海さん。彼らにとっての舞台は、日常の生活から離れて感性や個性を伸ばせる場所だと考えている。「泣いたり喚いたりしながら一緒にものをつくっていく。ダンスの振りを覚えたり、衣装や舞台装置をつくったり。自分たちにもできることがたくさんあるって気づかせてあげられるでしょう?」と目を細める。 ダンスを通して 子どもたちが変わっていく 姿を見るのが生きがい?。 ダンスを教えるだけでなく、障がいのある子どもたちを集めて学童保育を行っている大海さん。音楽、英語、脳トレ、料理教室など、日替わりで4?5時間のカリキュラムを実施する。さらに年に一度の舞踊公演と、旅行、クリスマスパーティ。アシスタントのスタッフはいるものの、極力人の手は借りない。「私の性分なんでしょうね。公演の衣装も全部自分でつくらないと気がすまないの(笑)」。舞台の演出もスタッフの手配も自分で仕切る。スクールに通う子どものなかには家に帰れず宿泊する子もいて、その世話もほとんどひとりでこなす。「それは大変ですよ。それでも続けるのは、子どもたちの変わっていく姿が見られるから。面白いもので、屈折していた子や暴力的だった子が、ダンスを始めると明るくなったり穏やかになったりするんです。それから障がいのある子って競争心をあまり持たない場合が多いんだけど、ダンスを続けるうちに、他の子に負けたくない、一番前で踊りたいって気持ちが芽生えてくる。そうすると、鏡の前で一生懸命手を伸ばしたり、アピールしたりするようになるの。そんな様子を見るのが私の生きがいなんです」。学校や家庭とは全く違う我が子の姿に驚く親御さんも多いという。 現在はNPO法人を立ち上げて障がいのある子どもたちの支援を行っている。将来的には障がい者の生活介護や就労支援まで活動を広げる予定だ。「今の夢はふたつ。ひとつは障がい者のための総合センターをつくること。今運営している水戸市内4ヵ所の支援施設を1ヵ所に集めて、生活しながらアート活動を行える場にしたいと思っています。それからもうひとつは、東京オリンピック。障がい者の描いた巨大アートとダンスをミックスしたパフォーマンスを開会式で披露したいんです。それにうちの子たちを参加させたいの。プロの一糸乱れぬダンスもいいけれど、みんな揃わない自由な踊りもいいと思わない?」と目を輝かせて語る大海さん。御年67歳。このパワフルな情熱をもってすれば、どちらの夢もきっと実現するに違いない。 Profile 舞踊家 大海日出子(おおみひでこ) 1948年茨城県生まれ。障がい者と健常者が一緒に舞台をつくる、舞踊劇団「創」(生まれる)主宰。特定非営利活動法人「創」、特定非営利活動法人「宙(そら)」代表。日本ジャズ体操指導者連盟正会員(JJGTO)、日本ダンスセラピー協会会員。1992年、水戸市社会福祉事業団より表彰、1994年茨城県功績賞を受賞。 ? p25(誌面構成に対応し、P22まで逆順で抽出) やさしさの現場から ?From the scene of tenderness? 株式会社セルリアンタワー東急ホテル 「やさしい心で、居心地のよいサービスを」 株式会社セルリアンタワー東急ホテルでは2003年からサービス介助士を導入し、現在300余名のスタッフのうち47名が資格を所持されています。就任以来、清掃活動やチャリティ活動などを通した社会貢献も積極的に推進されている総支配人の野々部孝司さんに、接客に対する取り組み方と社会貢献活動についてお話しを聞きました。 株式会社セルリアンタワー東急ホテル 総支配人 野々部ののべ孝司たかしさん 常にやさしい心で 接することが大切 私どもは、東急ホテルズのブランドコンセプト「居心地のよいホスピタリティ」を基本としながら、お客さまへの感謝の気持ちを持つこと、お客さまのご要望に敏感に対応すること、社員の取り組みを積極的に評価することをコアバリューとしてホテルの運営を行っています。 ホテルというのは、海外からお越しの方、ご高齢の方、障がいのある方などさまざまな方が訪れる場所です。そういった方々に居心地のよい空間と満足いただけるサービスをご提供するには、ルールやマニュアルで決められた接客だけではなく、常に「やさしい心」を持って接することが一番大切だと考えています。 訪れる誰もが楽しめる 街づくりに貢献したい 私どもにとってはお客さまからの声が一番の励みとなります。あるとき、視覚に障がいのあるご夫婦にご利用いただいたのですが、障がいのある方だからといって必要以上のお世話をすることは却ってご迷惑だろうと、程よい距離感でのお手伝いを心がけたところ、「私たちは旅行が好きでいろいろなホテルに泊まったけれど、ここが一番居心地がよかったです」と言っていただけました。本当に嬉しかったですね。サービス介助士の導入によって、さまざまな方に対する自然な対応を学べたことが、この評価に繋がったのだろうと感じています。 現在私どもは、聴導犬育成への支援や清掃活動、地域の催しへの参加などを通して、社会と地域への貢献活動を行っています。自分たちの利益ばかりを追求するのではなく、行政や地域と一体となって、訪れる方誰もが楽しめる渋谷をつくっていきたいですね。また、ホテルというひとつのコミュニティにおいて、あらゆるお客さまに楽しんでいただくことを常に考え、チャレンジ精神を忘れずに成長していきたいと思っています。 p24 海洋博公園・ 沖縄美ら海水族館 「特別な1日のために、全力で取り組んでいます」 海洋博公園・沖縄美ら海水族館はジンベエザメやナンヨウマンタなど他の水族館では見られないような魚の展示が人気で、国内外から年間270万人以上の方が訪れます。サービス介助士資格をお持ちで、案内担当として日々お客さまと接している知念比奈子さんに、おもてなしに込める思いや他文化に触れる楽しさについて聞きました。 海洋博公園・沖縄美ら海水族館 案内担当 知念ちねん比奈子ひなこさん 自分たちも楽しめる 異文化交流 当館では現在、さまざまな環境整備に関する取り組みを行っています。例えば館内案内のパンフレットは日本語以外にも14の言語でご用意しており、点字と拡大文字の案内パンフレットもご利用いただけます。 また、タブレットの翻訳アプリを駆使するなどして外国語を話す方々とその場でコミュニケーションが取れるのは、他文化に触れられる機会として、私たちスタッフにとっても大きな喜びになっています。 当館では車いすやベビーカーを無料で貸し出しているのですが、外国人の方は無料でレンタルできることに驚かれます。その驚きように私たちのほうが戸惑ったり(笑)。求められる説明の仕方も異なり、国が違えば常識も変わるという当たり前のことがとても新鮮で、日々楽しくご案内しています。 本当に特別な 1日にしてほしい 当館のおもてなしの基本は、「私たち働く者にとっての今日は日常でも、お客さまにとっては特別な1日であるということを心に留めて、お客さまにとって本当に特別な楽しい1日にしていただけるよう全力で取り組む」ということです。 例えば、水族館を出て駐車場に続く道が上り坂になっているのですが、車いすの介助をされているお客様にお手伝いを申し出たところ大変喜んでいただき、駐車場まで楽しく会話をしながらお送りすることができました。きっとよい思い出として今日のことを思い返していただけると思うと、私のほうが嬉しくなってしまいました。 当館では、サービス介助士講習をはじめ、マナー講習や救命講習などの人材育成に力を入れており、1人ひとり自信を持って対応しております。これからも多くのお客様に笑顔と喜びを感じていただけるようより良いサービスの向上に努めていきたいと思います。 ? p23 大和リゾート株式会社 「学びを生かして、誰もが楽しめるホテルに」 28のリゾートホテルを全国に展開する大和リゾート株式会社では、独自の資格認定や自己啓発支援などを積極的に行い、ホスピタリティの向上を追求されています。運営本部の藤井さんと、10月から南淡路ロイヤルホテルの総支配人に就任された長舩さんに、おもてなしの学びと実践、目指されているサービスについてお聞きしました。 大和リゾート株式会社 運営本部 部長(顧客担当) 藤井ふじい 慶文よしふみさん 南淡路ロイヤルホテル 総支配人 女性活躍推進室 長舩おさふね陽子ようこさん 介助やおもてなしを 学び、実践する 藤井 長年この業界におりますが、年々、ご高齢の方の利用が増えているのを肌で感じています。また、ホテルが歴史を重ねればリピーターのお客さまも年齢を重ねます。ですから、ご高齢の方や障がいのある方に対しての介助技術やおもてなしの心を学ぶことは、非常に重要だと考えています。 長舩 その学びの実践として、当ホテルには「マナーズインストラクター」という認定資格制度があります。数日間の研修、実践を経て認定されるのですが、これがかなり厳しくて、合格率は5割を切るんですよ(笑)。サービス介助士の資格取得を始めとする自己啓発の支援も受けることができますから、向上心を学びに繋げやすい環境と言えると思います。 細やかなサービスで、 おもてなしの幅を広げる 藤井 実は以前、車いす利用のお客さまから大浴場に入りたいというご要望をいただいたときに、バリアフリー対応でないことを理由にお断りしてしまったことがあったのですが、今にして思うと、何らかの方法でお手伝いできたのではないか、と後悔しているんです。 長舩 そういう意味では、サービス介助士の講習で得た知識は今とても役に立っていますね。車いすの操作方法や声かけの仕方を知っているだけでずいぶんご対応が変わります。 藤井 ご案内の文字をご高齢の方が見えやすい色で塗るなど、以前と比べてサービスの細やかさが変わってきていますね。おもてなしの幅が広がったと感じています。 長舩 大和リゾートは「地域発展の原動力になる」ことを目標にしています。当ホテルのある淡路島であれば、鳴門の渦潮や阿波踊りをお勧めしたり、地元の食材を使った料理をお出ししたり。お客さまもわくわく楽しくて、スタッフも地域の皆さんも楽しめる、そんなホテルをつくっていきたいと思っています。 ? p22 イオンエンターテイメント株式会社 「“ありがとう”の感動を大切に」 全国83ヶ所の映画館を運営するイオンエンターテイメント株式会社では、各劇場にサービス介助士を配置し、体系的な研修によってスタッフの対応をブラッシュアップしています。劇場勤務の経験が豊富で、今は人材育成に携わられている若松さんと児玉さんに、映画館ならではのおもてなしについてお話しをお聞きしました。 イオンエンターテイメント株式会社 人事総務本部 人材開発部 部長 若松わかまつ貴倫たかのりさん イオンエンターテイメント株式会社 人事総務本部 人材開発部 児玉こだま 誉子たかこさん 安心して映画を楽しめる おもてなしを 若松 当社の経営理念に「感動創造の匠」という言葉があります。エンターテイメントを扱う会社ですから、何より感動を大切にしなければいけません。ただ、感動といってもさまざまな形があります。お客さまの「ありがとう」という言葉の中にも感動は含まれているということを忘れずに、まずはお客さまが安心して映画を楽しんでいただけるおもてなしをご提供できるようにしています。 児玉 劇場にはさまざまな方がいらっしゃるので、おもてなしの方法もさまざまです。障がいのある方やご高齢の方に対しては、チケット売り場で必ずどんなお手伝いが必要かをお聞きして、それをフロアスタッフやマネージャーに伝え、その方に必要なお手伝いを用意して対応するようにしています。皆さん、ぜひ安心して映画を楽しみに来ていただきたいですね。 お客さまの笑顔に たくさん出会いたい 若松 当社では障がい者雇用にも積極的に取り組んでいます。今も、いきいきと働いてくれているスタッフが各劇場に所属しているんですよ。 児玉 私が劇場勤務だった頃にも、とても優秀なスタッフがいました。彼女は杖を使って移動するのですが、私たちがそれを忘れてしまうくらい活発に動いてくれていました。 若松 サービス介助士の配置を進めたことで、障がいのある方に対しても変に構えずに接することができるようになりましたね。 児玉 私も最初は車いす利用のお客さまに気後れしてしまうところがあったのですが、資格を取ってからは、お手伝いしながら映画の話で盛り上がったり、仲良くなれたのが良い思い出です。私たちにとっては、映画を見終わった後のお客さまの笑顔がなによりの楽しみです。これからもいろいろな方と劇場でお会いしたいと思っています。 イオンシネマ幕張新都心 ? p31(誌面構成に対応し、P26まで逆順で抽出) KIZZNA 紲 きずな 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」2015 Winter Vol.6 vol.6 Kizzna 2015 Winter CONTENTS 31 Interview with leader 「一人ひとりを尊重する駅街エキマチ」を目指して 東日本旅客鉄道株式会社 取締役 東京駅長 江藤?志さん 東京ステーションシティ運営協議会 事務局長 東日本旅客鉄道株式会社 東京支社 総務部 岩見成晃さん 25 担当者インタビュー 「やさしさの現場から」 株式会社セルリアンタワー東急ホテル/海洋博公園・沖縄美ら海水族館 大和リゾート株式会社/イオンエンターテイメント株式会社 21 生きがいインタビュー 舞踊家 大海日出子さん 19 特別インタビュー NPO法人ココロとカラダを育てるハッピープロジェクト 代表理事 ましこりかさん 16 care-fit通信 15 教えて先生! 〜後見制度は、お願い上手の道具のひとつ〜 14 バリアフリー・ファッションショー「バリコレ」レポート 13 おも活 新宿区立愛日小学校 12 ケアフィットファーム勝沼レポート 09 ボランティア活動TOPICS 04 ロングインタビュー「世界を、楽しめ」 バンクーバーパラリンピック銀メダリスト  上原大祐さん 次号予告 『紲 Kizzna』vol.7は 2016年2月25日(木)発行予定です。 ? p30 Interview with leader 「一人ひとりを尊重する駅エキ街マチ」を目指して 昨年開業100周年を迎え、駅舎の復原工事が話題になった東京駅。 東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)では、 「東京ステーションシティ」において周辺の企業と連携した取り組みを推進されています。 古き良き日本の習慣を大切にしながら、 おもてなしの心を広め繋げていきたいと語る江藤?志駅長と、 東京ステーションシティ運営協議会の岩見成晃事務局長に、 未来に向けたお客さまサービスのあり方についてお聞きしました。 東日本旅客鉄道株式会社 取締役 東京駅長 江藤えとう ?志たかしさん 東京ステーションシティ運営協議会 事務局長 東日本旅客鉄道株式会社 東京支社 総務部 岩見いわみ成晃しげあきさん ? p29-27 日本人にとって当たり前の 意識を持ち続けてほしい ――東京駅のお客さまサービスについてお聞かせください。 江藤 私どもでは「一人ひとりを尊重する駅街(エキマチ)」というコンセプトを掲げています。東京駅は1日183万人が訪れるターミナルです。そして、訪れる方々一人ひとりが、目的もバックグラウンドも異なります。急いで電車を乗り換えたい方もいれば、ゆっくり買い物を楽しみたい方もいる。外国からも大勢の方が訪れます。このコンセプトには、今自分の目の前にいるひとりのお客さまを尊重して、その方がなにを求めているのか汲みとって行動してほしいという思いが込められています。  また、私は常々「You have,You pick up,You greet」という3つの言葉を社員に伝えています。東京駅の社員は、ポケットの中にビニール袋を忍ばせています(Have)。これは、ゴミが落ちていたらすぐ拾う(Pick up)ためです。清潔さというのは日本のおもてなしの第一歩ですからね。そして挨拶(Greet)。東京駅には駅社員や店舗スタッフなど5000名が働いています。そういう人たちと言葉を交わし、助け合うこと。さらに、バックヤードからお客さまの目に触れる場所に出るときには必ず一歩立ち止まって挨拶することを取り決めています。いったん心を落ち着けて、お越し頂いてありがとうございます、という気持ちを込めて頭を下げる。そうすればお客さまには自然と笑顔を向けられるようになりますからね。 ――「東京ステーションシティ」の概要について教えてください。 岩見 昨年の開業100周年を迎えるにあたって、東京駅の丸の内駅舎が復原されたことは多くの方がご存知かと思います。一方で、駅周辺のビルや施設も再開発により続々と生まれ変わっています。そこで、駅やその周辺で働く方々のソフト面を充実させるためにJR東日本とグループ会社24社を会員とする協議会をつくったのが2013年のことでした。さらにグループの枠を超えて、丸の内、八重洲、日本橋といった周辺地域の方々とも連携を取りながら、東京駅を中心としたエリアの価値を高めていくためにさまざまな活動をしているのが、私ども「東京ステーションシティ運営協議会」になります。 ――新しいコミュニティづくりをされているというわけですね。 江藤 その通りです。エキナカも充実し、もはや東京駅は通過点ではなくて、駅に留まっていただいて駅そのものを楽しんでいただける機能を持つようになりました。そして、以前は土日には閑散としていた丸の内界隈が観光やショッピングやグルメを楽しむ人たちで溢れかえるようになってきています。そこで、東京駅だけに留まらず、駅周辺の企業にもご協力いただきながらひとつの大きな街をつくっていこうという試みがこの「東京ステーションシティ」なんです。この街全体でお客さまをおもてなししていこうという取り組みですね。 ――毎日さまざまなお客さまが訪れることと思います。なかでもお手伝いの必要な方への対応時にはどんなことを心がけていらっしゃいますか? 江藤 東京駅では、サービスマネージャーという役割を設けて、ご高齢の方や障がいのある方への対応を行うようにしていますが、東京駅には1日に300名もの車いす利用の方が訪れます。正直、場合によっては専門スタッフだけでは対応が間に合わないこともある。そんなときには、気づいたスタッフが率先してお手伝いするように指導しています。でもよく考えるとそれが当たり前だと思うんです。困っている人がいれば助けるというのは、日本人の伝統的な心のあり方ですよね。私はそんな日本人にとって当たり前の意識を社員たちに持ち続けてもらいたいと思っているんです。 岩見 海外の方に日本を楽しんで帰っていただけるようなおもてなしにも力を入れています。インフォメーションセンターでの丁寧なご対応をはじめ、日本語がわからなくても方向など伝えられるような案内サインの掲示や、英語以外の言語対応も推進しています。例えば言葉を使わずに身振り手振りや表情で意思を伝えるノンバーバルコミュニケーションのセミナー開催もその一環ですね。このようなセミナーや講習は、駅社員だけではなくて東京ステーションシティを構成する各企業の方にも参加してもらっています。サービス介助士の講習も同様です。 ――サービス介助士はどのような方が取得されているのでしょうか。 江藤 東京駅ではサービスマネージャー、改札などでお客さまと接するスタッフが取得しています。車いすの操作といった基礎的な部分から、おもてなしの心の大切さといった心構えの部分まで、サービス介助士資格は「一人ひとりを尊重する駅街」の実現に大きく貢献してくれていると感じています。取得者は、胸の名札に「サービス介助士」と書かれていますから、今度注目してみてください。 さまざまな人が行き交う東京駅。「地域の核として、ハードもソフトもさらに充実させていきたい」と江藤駅長。 P27 岩見 東京ステーションシティ全体でも、鉄道関係、物販、ホテルとさまざまな業種の会社が講習に参加したり取得を推奨されています。また、お客さまと応対することのない業種に対しても、講習参加のお声かけをしています。それは、使いやすい設備設計や行き届いた清掃、お客さまの立場に立った商品開発といった陰のおもてなしも、お客さまを尊重する意識から生まれると考えているからです。 ――その他の取り組みと今後の目標について教えてください。 江藤 「キラピカ作戦」と称して、東京ステーションシティ運営協議会に参加されている企業のほか、周辺の企業のみなさまにも声をかけて、年に2回、街の清掃活動を行っています。活動の輪は徐々に広がっていて、45社、400名もの方々に参加いただけるようになりました。これはひとつの例にすぎませんが、そういった普段からのつながりが、いざというときにも役に立つと思っています。 岩見 「餅は餅屋」という言葉がありますが、鉄道に関しては私どもが専門ですが、そうでない分野は他の企業のほうが詳しい。お互いの強みを生かして、お客さまにより使いやすい「駅街」をつくっていければと思っています。東京オリンピック・パラリンピックに向けて、ハード面、ソフト面ともに、さらに充実させていきたいですね。 江藤 今年の3月14日には北陸新幹線が開通し、来年の3月26日には北海道新幹線が開業します。今後益々ネットワークが拡大して、JRをより多くのお客さまが利用され、東京駅にもたくさんの方が訪れることでしょう。  駅というのは出会いの場所です。ここで出会えた方々とのご縁を大切に、世界中から愛される東京駅を、次の100年に引き継いでいきたいと思っています。 お客さまにより使いやすい「駅街」を(岩見) 愛される東京駅を、次の100年に引き継いでいきたい(江藤) 復原された丸の内駅舎のドーム天井。人が集い別れる場にふさわしく、方向を示す干支のレリーフが飾られているそうです。 ? p26 一問一答 東京駅のサービス介助士 資格保有スタッフに お聞きしました。 東日本旅客鉄道株式会社 東京駅 サービスマネージャー 渡邉わたなべ慎一しんいちさん Q 普段の業務内容を教えてください。 A 東京駅に不慣れなお客さまがいらっしゃる場所を重点的に巡回して、乗り換えのご案内や周辺の地理のご案内、また、障がいのある方やご高齢の方のお手伝いを行う「サービスマネージャー」として勤務しています。 Q 接客時に心がけていることを教えてください。 A 障がいのあるなしにかかわらず、お客さまが東京駅を自由に移動して、安全に楽しんでいただけるお手伝いを心がけています。また、駅にいる時間も楽しんでいただけるように、なるべくコミュニケーションを取るようにしています。旅行の感想をお聞きしたり、私も楽しい時間を過ごさせていただいています。 Q サービス介助士の資格を取ってみていかがですか? A お客さまの様子を伺いながら、余裕を持って確実なコミュニケーションが取れるようになりました。プライベートでも車いす利用の方のために押し戸のドアを押さえるなど、自然にお手伝いできるようになりましたね。東京駅では、430名の社員のうち取得者は96名。最近は、私たちが関連企業に出向いて車いすの操作方法などを講習したりしています。 Q 勤務していて一番楽しいと思えるのはどんなときでしょう。 A やはりお客さまからお礼の言葉をかけていただいたときですね。実はつい先ほど、お客さまからお礼のお手紙をいただいたんです。一度ご案内しただけの私の名前を覚えてくださっていて、とても感激しました。これからもお客さま一人ひとりを尊重して、駅員全体でお客さまが楽しんでいただける駅づくりを推進していきたいと思います。 ありがとうございました。ご活躍をお祈りしています!! ? H4 KIZZNA 紲 きずな 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」2015 Winter Vol.6 TAKE FREE!! ご自由にお持ち下さい Interview with leader 「一人ひとりを尊重する駅街エキマチ」を目指して 東日本旅客鉄道株式会社 取締役 東京駅長 江藤?志 東京ステーションシティ運営協議会 事務局長 東日本旅客鉄道株式会社 東京支社 総務部 岩見成晃 担当者インタビュー やさしさの現場から イオンエンターテイメント株式会社 若松貴倫 児玉誉子 大和リゾート株式会社 藤井慶文 長舩陽子 海洋博公園・沖縄美ら海水族館 知念比奈子 株式会社セルリアンタワー東急ホテル 野々部孝司