H1 KIZZNA 紲きずな 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」2016 Spring Vol.7 TAKE FREE!! ご自由にお持ち下さい ロングインタビュー パラ陸上競技 女子100メートル 佐藤智美 繋ぐ、未来へ。 生きがいインタビュー/女優 美月めぐみ ボランティア活動TOPICS P2 KIZZNA vol.7 Theme 繋がる 東日本大震災から、5年の歳月が流れました。 震災は、私たちからたくさんのものを奪っていきました。 一方で、揺るぎないものがあるということを思い出させてもくれました。 それは、家族や、友人や、隣人の温かさ。 電話やSNS、そして直接触れ合うなかで感じられる人との繋がりは、 立ち上がろうとする私たちに、大きな勇気を与えてくれたものです。 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」紲第7号のキーワードは「繋がる」。 登場してくれた人たちの言葉から、私たちが普段忘れがちな、 人や、過去・未来との繋がりの大切さを、もう一度思い出すことができる。 そんな一冊になりました。 P3 KIZZNA 紲きずな 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」kizzna 2016 Spring Vol.7 CONTENTS 04 ロングインタビュー 速くなりたい。 世界の舞台で走りたい。 パラ陸上競技女子100メートル(視覚障害T13クラス) 佐藤智美さん 08 生きがいインタビュー 女優 美月めぐみさん 10 ケアフィットファーム勝沼レポート ケアフィットファーム勝沼のいちねん 11 おも活 活動実績/おも活で学んでほしいこと 12 ボランティア活動TOPICS 13 教えて先生! 成年後見制度について知りたい 14 特別寄稿「防災のために企業ができること」 17 care-fit通信 18 障害者差別解消法について 24 担当者インタビュー「やさしさの現場から」 25 ますます身近になる福祉車両 31 Interview with pioneer 誰もが移動を楽しめる社会へ WHILL株式会社 代表取締役 兼 最高技術責任者 福岡宗明さん 発行人 畑中稔 発行所 公益財団法人日本ケアフィット共育機構 〒101-0061東京都千代田区三崎町2-2-6 TEL:03-6261-2333FAX:03-6261-2334 URL:http://www.carefit.org E-mail:toiawase@carefit.org 製作 タクトシステム株式会社 制作 株式会社フリート 編集長 中川純一 編集 城田晃久 安藤康之 取材・文 城田晃久 竹馬絵子 藤村恭子 撮影 大木大輔 大森裕之 三輪友紀 阿部栄一郎 アートディレクション 笛木暁 デザイン 田辺淳志 印刷 日経印刷株式会社 本誌の一部あるいは全部を無断で複写、複製、転載することは禁じます。 Kizzna 2016 Printed in Japan P4-7 大切にしているのは、 気持ちの強さ。 速くなりたい。 世界の舞台で走りたい。 パラ陸上競技 女子100メートル(視覚障害T13クラス) 佐藤 智美 Profile さとう ともみ 1990年生まれ。福島県二本松市出身。パラ陸上競技女子100メートル(視覚障害T13クラス)の日本記録保持者。2011年IBSA(国際視覚障害者スポーツ連盟)世界大会日本代表、2013年、2015年IPC(国際パラリンピック委員会)世界選手権日本代表。リオデジャネイロパラリンピックでもメダル獲得を期待されている、パラ陸上競技界のホープ。東邦銀行陸上競技部所属。 パラリンピック出場という夢をかなえるために環境を変え、常に向上心を持って競技に取り組む佐藤智美さん。その原動力はどこにあるのか。東北の厳しい寒風が吹き始めた年の瀬に、所属する東邦銀行陸上競技部が練習場として使っている、福島大学の陸上グラウンドを訪ねました。 視覚障がいのクラス分けについて パラ陸上競技(障がい者陸上競技)では、障がいの度合いによってクラス分けされており、視覚障がい者のトラック競技はT11〜13に分かれる。T13クラスは、「視力が0.03から0.1、視野が5度から20度の者」と規定されており、競技はガイドランナー(誘導役)なしで行われる。 あれ、見えているのかな?そう錯覚するほど、陸上トラックでの立ち居振る舞いは自然に見える。勤務先の東邦銀行本店でも、すいすいと廊下を歩き、階段を上る。「慣れているところだと、白杖は使わないです。初めての場所では使いますが。杖を持たずに歩いていると、道を尋ねてもちゃんと相手してもらえないことも(笑)」。と話すのはパラ陸上競技の、女子100メートル(視覚障害T13クラス)日本記録保持者、佐藤智美さん。右の視力はなく、左も「ぼんやりと見える程度」。それでも100メートルを13秒02で走り抜ける、スーパーアスリートだ。 ――陸上競技を始めたきっかけはどんなことだったのですか? 「福島県立盲学校の中学部にいた頃に、県総合文化体育大会に出場したのがきっかけです。出場しようと思ったのは…出てみようかな、って、気軽な感じで。優勝できて、『自分にはこんな才能があったんだ』と。走る面白さに目覚めた、って感じです。陸上を始める前は、特にスポーツとかはやったことなかったです。子ども時代は、あんまり外でも遊ばなくて、無口で…なんだろう、明るくはなかったですね」 取材の緊張からか、はにかみがちに言葉を探しながら話す。その様子は、失礼ながら、世界を舞台に戦うアスリートのイメージとはかけ離れていた。 ――東邦銀行の陸上競技部には、どんな経緯で入部されたのですか? 「盲学校を卒業したあと、パン屋さんで働きながら、陸上を続けていたんです。8年くらいやってたのかな。でも、どうしてもリオパラリンピックを目指したいと思って。そんなときに東邦銀行の川本和久監督にお話をいただいたんです。環境を変えることについては、特に葛藤とかはなかったです。とにかく速くなりたい、世界の舞台で走りたい、それしか頭になかったので。銀行に入ってからは、すごく成長できました。最近特に、アスリートとして、気持ちの強さっていうのはすごく大事だと思うようになりました」 とりあえずやってみて、 できるまで頑張る。 パラリンピックに出ることで、 もっと変われる気がする。 ――気持ちの強さというと、例えばどういう? 「身体のメンテナンスだったり、そういう、なんだろう…生活にしろ、練習にしろ…なんていうんですか?」 ――ストイックさ? 「そう、それ(笑)」 少し拍子抜けしつつも、人生の一大決心をこともなげに語る様子のなかに、太い一本の芯が透けて見える気がしてきた。 ――練習で大変なことは? 「特にないです(笑)。でも、目では見分けが難しいので、走り方を身体で覚えるようにはしています。コーチの姿勢を真似して、身体を使って理解して。その繰り返しです。とりあえずやってみて、最初できなくても、できるまで頑張るっていう気持ちでやってます。生活面で言うと、遠征に行ったときは、ホテルのシャワーの場所や、バイキングの食事の配置とかがわからない。その辺りは皆さんにサポートしてもらっています」 ――できるまで頑張るというやり方は以前から? 「いや、最近(笑)。陸上を始めてから、走り方にしろ、普段の生活にしろ、まずやってみる。私から合わせていくことができるようになりました。やってみないと、できるかどうかもわからないですもんね。そういう風に考えられるようになったのも、成長できたところかな」 ――佐藤さんにとって、陸上競技の魅力とは? 「私、陸上がなければ今の自分はいなかったと思うんです。陸上を始めて、外に出るようになって、いろんな方に出会えて、サポートしていただいて。先輩、コーチ、職場の方々…人との出会い、繋がりができた。感謝の気持ちがたくさんあります」 「陸上がなかったら、私、たぶん病気になってたんじゃないかな(笑)」と語る佐藤さん。陸上競技を愛する気持ちがひしひしと伝わってくる。 ――これまでで一番印象に残っているのはどの大会ですか? 「2011年の4月にトルコのアンタルヤで開催されたIBSAの世界大会です。日本代表として世界と戦う初めての大会でもあったんですが、3月11日に東日本大震災があって。そんな状況だったので、周りの人からは出場を反対されたんです。不安な気持ちもあったのですが、どうしても出たくて」 ――お住まいがある二本松市も被害を受けましたよね? 「はい。まだライフラインも復旧してないし、交通も麻痺してました」 ――それでどうやってトルコまで行けたんですか? 「ある日、郡山から新宿まで道路が復旧した、ってテレビのニュースで流れたんです。それを聞いて、必死に高速バスの会社に電話して。なかなか繋がらなくて何度もかけ直しました。それで東京まで出て、あとはなんとか」 唖然とした。たとえ健常者であっても躊躇する状況で、そこまで強い意志を持って行動できるものなのだろうか。 ――どうしてそこまでして出場を? 「被災して苦しい思いをしている方々に、元気と、明るいニュースを届けたいと思ったからです」 ――でも、ご自身も被災されているわけですよね? 「家にはあちこちヒビが入ってました。電気もまだ来てなかったのかな?すごいと思ったのは両親ですね。そんな大変なさなかに、なにも言わずに郡山まで車で送ってくれたんです。なにも語らないけど、温かさはすごく伝わってきました」 ――不安はなかったんですか? 「うーん。着いたはいいけど、帰れなかったらどうしよう、とか(笑)。それより、皆さんにいいニュースを届けたいという気持ちが強かったです。結果、銅メダルを獲得できました。本当は勝ちたかったけど、この際メダルは何色でもいいやって」 語る様子はさっきまでと変わらない。しかし、言葉に飾りがない分、気持ちがダイレクトに伝わってくる。自分のことを顧みず、誰かのために突き進む。彼女のなかにある、魂の部分に触れた気がした。 ――佐藤さんにとって、リオパラリンピックはどういう存在ですか? 「夢ですね。今までずっと、パラリンピックに出場したいっていう気持ちを持ってここまできたので。なにより、パラリンピックに出ることで、自分ももっと変われるんじゃないかと思うんです。出場するだけじゃなくて、変わりたい。変わらなきゃ、という気持ちが強いですね」 生まれ故郷である二本松の“提灯祭り”が大好きな、どこにでもいそうな25歳。しかしその小さな身体には、凛とした魂が燃えている。きっと今年、遠くリオの地から、私たちに希望を届けてくれるに違いない。 1.本店営業部食堂前にて。後ろには各部が獲得したトロフィーが並ぶ。2.東邦銀行陸上競技部は2011年創部。まだ規模は小さいが実力者が揃う。3.人懐っこい笑顔で誰からも愛される存在。4.渡辺真弓コーチ(写真右)と。二人三脚で練習に励む。 P8-9 Worth living interview 生きがいインタビュー No.03 女優 美月めぐみさん みんなに楽しんでもらえることが、何よりの喜び。 障がいの有無に関わらず、理解と共感を。 そして上質なエンターテインメントを。 見えない垣根を取り払って、誰もが楽しめる空間をつくりたい。 障がいのあるなしに関わらず楽しめる “バリアフリー劇団”で活躍する全盲の女優。 舞台、といってもフラットな空間にパーテーションと一揃いの机と椅子、そして電子ピアノが置かれているだけ。体(てい)はごくシンプルな舞台といったところ。ただ、少し様子が違うのはその客席。40名ほどの観客のうち、半数近くの人が、手話で会話をしたり、点字のパンフレットを読みながら開演を待っている。ここで行われるのは、「演劇結社ばっかりばっかり」(以下ばっかりばっかり)の演劇公演。ばっかりばっかりは、今回のインタビューの対象である、全盲の女優、美月めぐみさんの所属する劇団。誰もが楽しめる“バリアフリー演劇”を掲げて活動している団体だ。 耳心地のよい朗々とした声は、経験豊富な舞台女優のそれ。「特に養成所とかで学んだわけではないんです。演劇を始めた頃に、元NHKの地方局に勤めていた演出家の方に教わったくらいで。もともと文章を言葉にする能力が高かったんじゃないかな」。国語の成績だけはよかったから、と笑う。子どもの頃からオーディオドラマが好きで、演じることに興味はあったが、中高生の頃はバンド少女。本格的に演劇に携わり始めたのは20歳を過ぎてからだった。「最初は、朗読劇だったら私でもできるんじゃないかな、という興味から始めたんです。次第に脚本や演出、音楽担当なんかもこなすようになって、そのあたりからハマっていきました」。役者としては朗読劇を中心に活動していた美月さんにとって転機となったのは、現ばっかりばっかり主宰であり美月さんの夫でもある、鈴木大輔さんの「だったら、見えない人の役で出ればいいじゃない」という言葉だった。最初から見えない設定であれば、必然性を持って舞台に上がれる。そのちょっとした発想の転換が、その後二人が中心となって立ち上げた、ばっかりばっかりのコンセプトに繋がっていった。 誰もが同じ空間を共有し、 理解し合える。 そのきっかけになりたい。   「私たちは、障がいのあるなしに関わらず、一人でも多くの人に、同じ空間でエンターテインメントを楽しんでもらいたいんです」と語る美月さん。会場は、車いすでも入れるフラットなスペースを選び、希望者には最寄り駅まで送迎を行う。また、視覚障がいのある人のために点字のパンフレットを用意し、聴覚障がいのある人のために、舞台奥の壁に、フキダシのような字幕を流す。そして役者は、どこにいるかわかりやすいよう、鈴や鳴子を身につけ、足音を立てて歩き、ゆったりしたリズムでセリフを発する。これらはすべて、活動を続けながら積み重ねてきた工夫だ。美月さんは、「エンターテインメントに触れる機会の少ない障がいのある人たちには、思い切り楽しんでもらえる場をつくりたいし、健常者の人たちには、同じシーンで泣いたり笑ったりすることで、障がいのある人とも感覚を共有できることを知ってほしい」と語る。 美月さんは、小中学校の福祉の授業にゲストティーチャーとして招かれることも多いそうで、「私が笑い話みたいに体験談を話すものだから、子どもたちの反応もすごくいいんです。そんな様子に触れるたびに、同じ空間で、生の声で伝えることの大切さを実感しますね」と語る。今後の目標は、ばっかりばっかりの演劇が、世の中に当たり前のものとして受け入れられるようになること。「日常生活で、同じ空間に障がい者がいるのが当たり前の環境だったら、みんな、私が舞台にいても違和感を感じないはずですよね。いつか私たちの活動が、福祉という視点ではなく、一般の演劇として見てもらえるようになったらいいな、と思っています」。このインタビューのテーマである生きがいについて聞くと、「私は、自分が楽しいこと以上に、相手に喜んでもらえることが嬉しいんです。活動を続けるうちに、いろいろな繋がりもできて人の輪が広がる。障がいのある人もない人も、一緒に泣いたり、笑ったりできる場をもっと増やして、お互いが理解し合えるきっかけになれたら嬉しいですね」と語ってくれた。底抜けの明るさで、周りの人たちまでハッピーにしてくれる美月さん。これからも、たくさんの人に笑顔を届けてくれることだろう。 Profile 女優 美月めぐみ(みづきめぐみ) 1964年福島県生まれ。生後40日で先天性の視覚障がいであることが発覚。少女時代から音楽や演劇に興味を持ち、20代の半ば頃から朗読劇のサークルに所属、演劇活動を開始。2007年に主宰の鈴木大輔氏と「演劇結社ばっかりばっかり」を立ち上げ、現在に至る。 演劇結社ばっかりばっかり 2007年結成。「観る側も、演じる側も、バリアフリー」を理念として掲げ、障がいのあるなしに関わらず楽しむことができる、言葉にこだわったエンターテインメントと、“バリアフリー演劇”を追求している。 URL:http://www.bakkaribakkari.net/ P10 ケアフィット ファーム勝沼 レポート ケアフィットファーム勝沼のいちねん ケアフィットファーム勝沼でのブドウづくりの一年を振り返りました。 暑い日が続きましたが、おいしいブドウがたくさんとれました。 4月草刈り、消毒 草刈りは、見た目は地味ですが、怠ると虫がつく原因になってしまうので、とても大切な作業です。 5月つる縛り、片落とし、房づくり まんべんなく育つようにつるを誘引(つる縛り)し、枝分かれしている房を摘むことで、甘くておいしいブドウができあがります。 6月ジベ処理 成長を促すためのジベ処理を行います。この頃になると、だんだんブドウらしくなってきます。 7月袋掛け 虫や鳥からブドウを守り、農薬が掛からないようにする袋掛け。収穫はもう目の前です。 8月収穫 待ちに待った収穫!自分で摘み取って食べるブドウの味は格別です。来年は一緒にいかがですか? ケアフィット ファーム勝沼の ワインが飲める店 水道橋「TomyGrill」 オーナーシェフ/ソムリエ中富雅己さん ケアフィットファームのワインはどれもポテンシャルが高く、当店でも人気商品のひとつです。なかでも好評なのは「極のしずく」ですね。優しい甘みが特徴で、すっと軽く飲めるので、デザートワインとしてお勧めしています。「菱山のしずく」は、さわやかな酸味があり、暖かい日の午後などにぜいたくにワインを楽しむ、といったシチュエーションにぴったりだと思います。「光陰のしずく」は、重すぎず軽すぎない、ちょうどいい飲み口なので、いろいろな料理によく合うワインです。ワインは、その年の気候などにもよりますが、一般的に、樹齢を重ねるほど深みが増してきます。ケアフィットファームのワインをこれからも、楽しみにしています。 ケアフィットファームのワインの購入はこちらから http://store.shopping.yahoo.co.jp/carefitfarm/ 「TomyGrill」はワインに合う食事を楽しめる、水道橋で50年続く老舗洋食店。ソムリエ資格を持つ3代目オーナーシェフの中富さんが、20種類以上のワインのなかから、料理やその人の希望に合わせてワインを選んでくれる。「いろいろな人にいろいろなワインを楽しんでいただきながら、ゆったりした時間を過ごしていただきたいと思っています」。(中富さん) Wine&洋食TomyGrill 〒101-0061 東京都千代田区三崎町2-9-11TYビル1F TEL:03-3556-5220 URL:http://tomygrill.com P11 おもてなしの心、 おもいやりの心を大切に。 おも活 「そっと、さっと、あんしんを。」プロジェクト ボクがお助けノ介だよ! 両親とおじいちゃん、おばあちゃん、そして妹と暮らす11歳の元気な男の子。正義感が強くて、困った人を見ると放っておけないがんばり屋さんなんだ。今日もおも活、がんばります! おも活とは・・・ 日本ケアフィット共育機構のサービス介助士・講師が小学校を訪問し、障がいのある方への案内方法やレクリエーションを通して、子どもたちに相手の立場になって考えることの大切さを伝える活動。日本ブラインドサッカー協会が開催するダイバーシティ教育プログラム「スポ育」実施校に対しても活動を展開し、2020年に向けてボランティア文化を育てていきます。 「おも活」五箇条 社会にはいろいろな人が暮らしていることを知ろう 相手の身になって、ものを考えよう 相手を思いやる気持ちを持とう しっかりとあいさつしよう 家族やお友達に対して、「おも活」を始めてみよう 活動実績 2015年度実施校 2016年1月末現在 大田区立道塚小学校4年生97名 新宿区立愛日小学校4年生43名 府中市立住吉小学校6年生97名 清瀬市立清瀬第六小学校4年生100名 所沢市立富岡小学校4年生60名 江戸川区立南小岩小学校4年生68名 所沢市立北野小学校4年生89名 新宿区立鶴巻小学校5年生21名 台東区立石浜小学校4年生42名 大阪市立扇町小学校4年生58名 八王子市立長沼小学校4年生65名 アイマスクをした状態で、音の出るボールを転がし、音と声によるコミュニケーションの大切さを体験します。 おも活で学んでほしいこと アイマスクをして介助される体験では、周囲の声かけやサポートの大切さを、介助する体験では、相手の立場に立った声かけやサポートができるようになってほしいと思っています。 また、障がいのある方だけがお手伝いを必要としているのではなく、お友だちや家族など、身近な人もお手伝いを必要としていることに気づき、自分には何ができるのかな、と相手を思いやる気持ちを学んでほしいです。参加してくれた子どもたちが、おも活が終わって後片付けをしているときに「お手伝いします」と声をかけてくれたり、アイマスクなど使った物をきれいにまとめてくれたりすると、「すぐに思いやり活動を実践してくれている!」と嬉しくなりますね。 サービス介助士インストラクター 東谷和子(あずまやかずこ) 学校関係者、保護者の皆さまへ 日本ケアフィット共育機構では「おも活」に参加していただける学校、施設を募集しています。どうぞお気軽にお問い合わせください。 公益財団法人日本ケアフィット共育機構 〒101-0061 東京都千代田区三崎町2-2-6 TEL:03-6261-2333 FAX:03-6261-2334 WEB http://www.carefit.org/ P12 ボランティア活動TOPICS インドに支援物資が届きました! 全国の皆さまから寄付をいただいた衣類などの支援物資が、インドの子どもたちや高齢者に届けられました! 協力団体である「ケアフィットインド」代表のManuel氏とケアフィットインドのボランティアによって、新年に合わせて、児童施設や高齢者施設の皆さんに、暖かい衣類が配布されました。これからも子どもたちや高齢者が安心して暮らすことのできる環境のために日本から少しでもできることを継続していきます。今後も皆さまの温かいご理解とご協力を何卒よろしくお願いします。 「東京都スポーツ推進企業」に認定されました! 日本ケアフィット共育機構が、東京都より「東京都スポーツ推進企業」として認定を受けました! 「リレーションセンターTASKAL」として継続して行ってきた、障がい者スポーツイベント・大会におけるサービス介助士による介助ボランティアが対象となりました。スポーツでしか味わうことのできない感動を誰でも感じることができるために、サービス介助士の学びを発揮できるよう始まった「リレーションセンターTASKAL」。ベビーカーの預かりや熱中症予防の呼びかけ・対応、来場いただいた皆さまへのご案内など、介助のお手伝いに留まらず、会場全体をおもてなしする存在へ発展しています。 サービス介助士ボランティア/リレーションセンターTASKAL 2015年、「リレーションセンターTASKAL」では、多くのイベントに関わってきました。 2020年を4年後に控えた今年はさらなる発展を目指しています! 2016年TASKAL参加予定イベント情報 2/28(日) Jリーグ東京ヴェルディ ホームゲーム 会場:味の素スタジアムほか 3/12(土) 第6回わいわい スポーツ教室(杉並区) 会場:高井戸地域区民センター 3/21(月休) さいたま市ノーマライゼーション カップ(ブラインドサッカー) 会場:さいたま市内(予定) 3/26・27(土日) KPMGブラインドサッカー クラブチャンピオンシップ2016 会場:富士通スタジアム川崎(予定) 4/29・30(金祝・土) 第15回EJDFAデフリーグ (ろう者サッカー) 会場:大井ふ頭中央海浜公園 P13 教えて先生! 成年後見制度について知りたい どこで、誰に相談するべき? CASE3 成年後見制度に興味があるのですが、どこに相談すればよいですか? ※成年後見制度とは、認知症などの理由で判断能力の低下した人の財産管理などを成年後見人が代理をしたりする制度です。 Q 判断能力が低下した母のために成年後見制度の利用を検討しています。どんな制度なのかよく知らないのですが、どこに相談にいけばよいのでしょうか? A 各自治体やさまざまな専門職に窓口があります。まずは地元の成年後見センターや、司法書士会などが開催する相談会を調べてみましょう。 先生より 成年後見の制度を利用される方の数が年々増えていることを各所で実感します。超高齢社会を迎えている日本においては、今後も増え続けるのではないでしょうか。とはいえ、まだ身近な制度とまでは言えず、制度について知りたい、相談したいといった場合、どこに行けばよいかわからない、といった質問をよくいただきます。 成年後見人は、法律で除外されている人(未成年など)を除いて、原則誰でもなることができるので、さまざまな専門職や自治体などが携わっています。例えば、東京司法書士会では、総合相談センターで毎週相談会を行っていますし、「公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート」の東京支部では、毎週電話による相談を受け付けています。また、弁護士会や社会福祉士会などほかの士業団体や、各自治体の社会福祉協議会の成年後見センター(※)でも相談会を行っているところが多いと思われますので、問い合わせてみてください。 私も新宿区社会福祉協議会の成年後見センターが開催している面談相談会の相談員を担当しています。原則は来所いただく形態ですが、難しい場合にはご自宅などへの訪問相談も行っています。 リーガルサポートや社会福祉協議会では、成年後見セミナーも開催しており、成年後見ってなに?という方には有用です。さらに、成年後見制度を利用するべきか判断したい方や、利用したいけれど疑問や不安があるという方は、一度各種の面談相談をお受けになられることをお勧めします。 (※名称はそれぞれ異なります) 公益社団法人 成年後見センター・リーガルサポート TEL:03-3353-8191(東京支部)HP:http://www.legal-support.or.jp/ 今回の先生 諏訪司法書士事務所 司法書士 諏訪達也さん 平成18年に司法書士登録をして、ちょうど10年になります。不動産登記・商業登記・債務整理・民事訴訟・成年後見と司法書士が行える業務はほぼすべて行っています。各種分野での経験値をさらにアップさせて、市民の皆さまのお役に立てればと思います。 諏訪司法書士事務所 TEL:03-5363-8970 P14 特別寄稿 防災のために 企業ができること 防災を「自分ごと」にする研修で人づくりを 被災者4万件の声を教訓に「知識の備え」 災害直後に身を守るための準備や訓練だけが「防災」ではありません。大切なのは、災害後に個人レベルでどのような困難があるのかをリアルにイメージすること。困難を克服し生活再建を果たすための支援制度や仕組みを知ること。そんな「知識の備え」こそが、企業内に災害に強い人材をつくり、防災を「自分ごと化」するのです。災害に強い企業をつくるための防災人材育成研修が今求められています。 防災は組織の隅々まで 「自分ごと」になっているか 「会社で事業継続計画(BCP)を策定しているが、従業員や現場に浸透しない。フィードバックが得られない」と感じていませんか。災害時に事業を継続することは、企業だけではなく従業員やその家族の生活のためでもあります。しかし、これらを訴えるだけで防災文化を組織に根付かせることは一筋縄ではいきません。そこで、東日本大震災後に約4万件の無料法律相談事例(被災者の生の声)をとりまとめ、データベース化した経験から、真に防災を「自分ごと」にする「生活防災」研修プログラムを提案します。 発災後の事業や生活を 等身大でイメージし 「自分ごと」に 災害発生の瞬間や直後に命や財産を守ることだけが防災ではありません。災害「後」には、想像を絶する生活上の悩みが押し寄せてきます。「家も、仕事も、家族も、すべてを失った。一体どこへ行って、何をすればいいのか」「家も仕事も失い住宅ローンだけが残ったが破産しかないのか」「さまざまな料金の支払いはどうなるのか」「通帳や証明書もないが生活はどうなるのか」。災害後の生の声を知ることで、「被災」がよりリアルにイメージされ、防災意識が強くなります。こうして、企業の事業継続や危機管理がはじめて「自分ごと」になるのです。 一歩を踏み出すための 「知識の備え」とは何か 「罹災証明書」は、被災者に対して自治体が発行する証明書であり、これを起点にさまざまな支援が始まる重要な書類です。住居が被災すれば、「被災者生活再建支援金」が法律に基づき支給される場合があります。災害で亡くなった方のご遺族には、「災害弔慰金」の支給がなされます。これら支援制度の存在はあまり知られていないのが現状ですが、存在だけでも知っておけば、災害から立ち直る「レジリエンス(強靭性)」を持つことができます。企業にとっても、あらゆる困難に対応できる強い人材の育成に繋がります。 2015年11月、日本ケアフィット共育機構セミナールームにて、本稿執筆者である、岡本正先生による「災害復興法学」のセミナーが開催されました。 Pro file 岡本正(おかもとただし) 1979年生まれ。神奈川県鎌倉市出身。弁護士。医療経営士やマンション管理士の資格も持つ。震災対応の経験から「災害復興法学」を創設。中央大学大学院公共政策研究科客員教授、慶應義塾大学法科大学院講師、(公財)東日本大震災復興支援財団理事ほか役職・公職多数。近著に『災害復興法学』(慶應義塾大学出版会)。組織の防災研修・社員研修・リスクマネジメントに関してお気軽にご相談ください。 http://www.law-okamoto.jp/ P15 care-fit通信 防災介助士トピックス あの日から、5年。 東日本大震災の教訓を、未来に生かすために― 東日本大震災から5年が経ちます。 未曾有の大災害を経験した私たちですが、どのような教訓を学び、どのような対策を実践しているでしょう。日頃からもしものことを考え、常に災害に備えていますか?自分が災害に遭ったときに、正しく行動し、周りの人たちと助け合える自信はありますか?もしかしたら、この5年の間に、無意識に災害を「他人事」として自分から遠ざけてしまっている人も多いのではないでしょうか。 あの日から5年が経ったこの節目に、もう一度あのときのことを振り返り、いつなんどき、自分や自分の大切な人の身に降りかかるかもしれない災害に、自分はどのように対応できるのか、じっくり考えてみてはいかがでしょうか。 「避難行動要支援者名簿」について 東日本大震災において、被災地全体の死者数のうち65歳以上の高齢者が約6割、障がい者の死亡率は被災住民全体の死亡率の約2倍でした。また、救助活動にあたった消防関係者にも多くの犠牲が出ました。このときの教訓から、2013年に災害対策基本法が改正され、市町村を対象に高齢者、障がい者、その他配慮の必要な人たちを対象とする「避難行動要支援者名簿」の作成、関係者への提供といった規定が設けられました。この名簿の活用により、支援を必要とする人の存在を把握でき、いざというときには、障がいの区分に配慮しながら情報伝達や救助活動を行うことができるのです。 大切なのは、日頃の備えと助け合い。 「防災介助士」とは? 地震・台風・火山噴火などの自然災害、大規模な事故や感染症、テロなどの人為的な災害など、現代の災害は多様化、大型化しています。さらに日本では、高齢化が進むに伴い、避難行動要支援者も増えています。また、災害時に行政が機能不全に陥ることも考えられます。ですから、万一のときに適切な行動を取り、被害を抑えるためには、日頃からの備えと市民レベルでの助け合いが必要となります。「防災介助士」は、災害についての知識や、応急救助などの技術を持つ、いざというときに頼れる存在なのです。 震災後の 防災意識の変化 東日本大震災後の2011年11月に東京都が実施した調査では、防災用品の準備や飲料水などの備蓄をしていると答えた人がそれ以前と比べて8割前後まで増えている一方で、避難場所の確認、耐震診断、応急手当の知識の取得などをしているという人は減少しています。自らの安全や応急手当を学ぶ、防災介助士のような防災を学ぶ場が必要とされています。 防災用品の準備 飲料水・食糧、生活必需品の準備 避難場所や避難経路の確認 耐震診断や建物・塀などの点検・補強 応急手当の知識の取得 80% 60% 40% 20% 65% 82.1% 53.9% 78.3% 58.6% 43.6% 20.8% 11.2% 33.7% 7.8% 平成15年 平成23年 出典:東京都生活文化局「インターネット都政モニターアンケート調査」(平成23年11月17日) 防災介助士資格に関する詳細・お問い合わせはこちら! http://www.carefit.org/ P16 care-fit通信 認知症介助士トピックス 認知症は、こわくない。 認知症と寄り添う、お互いさまの社会へ 第三回(最終回) 第二回では、認知症が始まると本人にはどのような変化が訪れるのか、どういった気持ちになっていくのかということから、周囲のよりよい受け止め方を考えてきました。最後となる今回は、今後の超高齢社会において、認知症を必要以上に恐れることなく、社会全体が受け入れ支えていくためのさらなる具体的なアドバイスを、宇良千秋先生から教えていただきます。 長寿社会となった今、認知症は誰もがなる可能性のある病気です。一方、ひとり暮らしの高齢者は今後ますます増えると言われています。「そうした人々を支えることができるのは、何よりも地域の人の理解と見守り、すなわちさりげない気配りです。近所の人たちがひとり暮らしの認知症高齢者に自然と寄り添ってあげられる空気をつくっていくことが、今後の超高齢社会には一層強く求められています」と宇良先生。 認知症が始まると、本人はさまざまな形で生活のしづらさを感じるようになります。それまでできたことが思うようにならず不安を感じたり、うつ状態になり生活が不活発になることもあります。 こうした状態に陥るのを防ぐためにも、認知症になっても慣れ親しんだ環境で一定の生活パターンや馴染みの人間関係を維持し、楽しみや生きがいの持てる生活を継続することが大事なのです。友人や家族と過ごす、趣味の時間を楽しむといった何気ないことが、とても重要な意味を持つのです。 「一番よいことは、認知症になる前の健康な段階から、仕事でも趣味でも人間関係でも、人生を通じて追求したい生きがいを持っていただくこと。生きがいや楽しみのある方は、たとえ身体機能や認知機能がおとろえても、実り豊かな老後を過ごされることが多いのです。今後、多くの人が認知症になる可能性があるのですから、そのときに、なるべく生活の質を落とさずにいられる社会となってくれることが理想です」 いずれは自分も誰かの助けを必要とするときがやってくるかもしれないと思えば、いま認知症の人々を手助けすることは特別なことではなく、「お互いさま」なのです。正しい知識が多くの人々に共有されることで、認知症であろうとなかろうと、すべての人が安心して暮らせる未来がやってくるのではないでしょうか。 宇良先生が講師を務めた、日本ケアフィット共育機構主催セミナーの様子 Pro file宇良千秋先生 東京都健康長寿医療センター研究所「自立促進と介護予防研究チーム」研究員(心理学博士) 取材・文:竹馬絵子 撮影:三輪友紀 認知症介助士 資格のご案内 超高齢社会を迎えた日本。認知症はすべての人にとって他人ごとではありません。ご家族、ご自身、お客さま、誰しもが認知症と診断される可能性はあるのです。認知症介助士は、認知症についての正しい知識と適切なケアを身につけたい方に最適の資格です。認知症のご家族をお持ちの方、認知症のお客さまと接する可能性のあるサービス業に従事されている方は、取得を目指されてはいかがでしょう。 詳細・お問い合わせはこちら! http://www.carefit.org/ P17 サービス介助士資格取得講習会 受講者の声 日本ケアフィット共育機構が開催するサービス介助士資格取得講習会には、毎回さまざまな企業の皆さんにご参加いただいています。今回は、各支店でサービス介助士の資格取得を進めている「東京スター銀行」の皆さんに、講習会の感想と、サービス介助士についてお話しを聞きました。 Q1 講習会で主に学んだことはなんでしたか? Q2 サービス介助士資格取得後、どんな変化がありましたか? Q3 サービス介助士資格の意義は、どんなことだと思われますか? 松原佳裕様 日比谷支店 アセット(融資)担当 日比谷支店では、ご高齢のお客さまが多いということもあり、支店スタッフ18名のうち、12名がサービス介助士資格を取得されているそうです。(2015年6月現在) A1 伝票の文字の色や大きさ、普段私たちがなんとも思わない段差、照明の明るさなどについても、障がいのある方やご高齢の方にとっては使いにくいことがあるということを学べました。 A2 見えにくそうにしている方にはメガネをお勧めしたり、聞こえづらそうな方には少し声を張って話しかけるなど、自然に接客を工夫するようになりました。 A3 銀行は、お客さまとの信頼関係が何より大切です。お客さまのほうに一歩踏み込むためには、よりお客さまのことを理解しないといけないので、サービス介助士資格を取ることで、相手の立場に立って考えられるようになったのは、とても意義があると感じました。 佐藤由美様 仙台支店 事務/受付担当 仙台支店では、13名中3名が取得されています。融資取扱い店舗ではないため、資産運用のご相談の来店が多いそうです。(2015年6月現在) A1 今までは、筆談を行う際には、楷書で丁寧に書くことが大切だと思っていました。ところが、講習のなかで、ポイントを簡潔に書くことの方が重要だということを知り、知らないうちに、お客さまにご迷惑をおかけしてしまっていたということに気付かされました。 A2 買い物をしているときなども、障がいのある方やご高齢の方を見て、「危険なことがあるかもしれない」と、自然に見守りができるようになりました。資格を取得することで、自信がついたのかな、と思います。 A3 実技教習では、いろいろな業種や職種の方が参加されていて、私たちのようなサービス業だけでなく、他業種の皆さんにとっても、介助の考えが必要とされていることがわかりました。 池田真澄様 平塚宮の前支店 事務/受付担当 平塚宮の前支店は9名の少人数で対応している店舗なので、担当業務が多岐にわたるそうです。サービス介助士資格は9名中6名が取得されています。(2015年6月現在) A1 資格を取得する以前は、とにかく大きな声でご説明をしていたのですが、必要以上に周囲に声が漏れてしまって、お客さまへの配慮が足りなかったな、と反省しました。なんでも手伝おうとするのが、必ずしもよいというわけではないということを学べました。 A2 車いす利用の方には腰を落として目線を合わせるということを教えていただきましたが、座っている方にも同様に接するようになり、お話ししやすくなりました。 A3 仕事だけでなく、普段の生活や家庭のなかでも生かせる資格だと思います。わかっているようで、実はわかっていないことが多いということに気付かされました。疑似体験を受けるだけでも意義があったと思います。 サービス介助士 資格のご案内 サービス介助士とは、高齢の人や障がいがある人を手伝うときの「おもてなしの心」と「介助技術」を学び、相手に安心していただきながら手伝いができる人のことで、駅や空港、銀行、ホテルなどで活躍しています。お仕事をお持ちの方でも平均2ヶ月で取得できるサービス介助士資格。個人、法人問わず参加できる無料の講座説明会も行っていますので、ぜひ一度お問い合わせください。 詳細・お問い合わせはこちら! http://www.carefit.org/ P18 あなたの会社、対応は万全ですか? 2016年4月 (障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律) 障害者差別解消法が施行されます。 Q 障害者差別解消法とはどんな法律ですか? A 障がいを理由とする差別の解消を推進する法律です。すべての人がお互いに人格と個性を尊重して共生する社会の実現を目指します。 Q 障害者差別解消法ではどんなことが定められているの? A 一般の企業や店舗などでは、障がいを理由に「不当な差別的取扱い」をしてはならない。 「不当な差別的取扱い」の例 ・車いす使用者に対して段差を理由に入店を断る。 ・視覚に障がいのあることを理由にアパートを貸さない。 ・障がいを理由にスポーツジムへの入会を断る。 A 障がいのある方に対して、社会的障壁※1を取り除くために必要で「合理的な配慮」に努めること。※2 (※1)障がいのある方が、日常生活や社会生活を営む中で、不自由を感じる原因となっている設備やもの・制度・慣行・偏見など。 (※2)行政機関では義務 「合理的な配慮」の例 ・段差がある施設にいらした車いす利用の方に、段差を超えるお手伝いをする。携帯スロープをかける。 ・弱視の方に対して文字を大きくするなど、見やすい工夫をする。 ・聴覚に障がいのある方に対して、筆談などにより分かりやすい説明をする。 ご相談ください! サービス介助士12万人以上の実績! 日本ケアフィット共育機構 日本ケアフィット共育機構では、障害者差別解消法の正しい理解の仕方や、お客さまサービスの検証、見直し、教育・研修などを、ワンストップでお手伝いいたします。 Employee training 社員研修 ・サービス介助士育成 ・セミナー・勉強会の実施など Manual preparation マニュアル作成支援 ・「障害者差別解消法」対応マニュアル ・介助ハンドブックなど Consulting コンサルティング ・障がいのあるお客さまへの対応の仕方 ・施設のバリアフリー・チェックと改善提案など 公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 〒101-0061東京都千代田区三崎町2-2-6 TEL:03-6261-2333 FAX:03-6261-2334  WEB:http://www.carefit.org/ P19 Care Fit Interview 「その一歩を踏み出すためのお手伝いを」 単に人を配置するだけでなく、ホスピタリティ精神に則った警備業務を行うことをモットーとしている「株式会社オリエンタル・ガード・リサーチ」。同社では、安心・安全なサービスを提供するために、各種資格の取得を奨励するなど、人材教育にも力を入れています。 お客さまに合った対応を 提供するために、 社員教育を徹底 当社では、それぞれのお客さまに合った対応をしなければ、警備の本質である安全・安心を確保することはできないと考えています。そこで、全社員が車いす利用の方や視覚障がいのある方のご案内ができるようにと、10年ほど前から接遇教育を開始しました。現在、車いす利用の方、視覚障がいのある方のご案内は、年間10万件を超えるほどになっています。介助の技術だけでなく「気づき」を得られることで接遇スキルも上がっていると信じ、継続して教育を行っています。 さらに、平成28年度には、東京事業部管内の500名の社員へ、認知症サポーター講習を修了させる予定です。当社が東京駅で車いす利用の方への駅構内移動介助業務を開始して間もないころ、お客さまからの感謝の手紙に「東京駅まで電車で30分の距離でも、外出するには大変な勇気が必要なのです」と書かれていました。それを読んだ安藤弘二会長の「その一歩を踏み出すためのお手伝いをしたい」という言葉がきっかけとなり、それ以来、JR東日本、東京メトロなどの駅で、ご案内を継続させていただいております。皆さまに、より安全に快適に、そして満足していただくために、社員教育を続けていきたいと思っています。 株式会社オリエンタル・ガード・リサーチ 代表取締役会長 安藤弘二さん (株)オリエンタル・ガード・リサーチは創業30周年を迎えたセキュリティのプロフェッショナル集団。ビルや駅構内・大学・ホテルなどの施設警備や内部保安、工事現場、道路での交通誘導やイベント警備、現金や貴重品などの輸送業務、人材派遣業務など幅広いサービスを展開。また、サービス介助士をはじめとする専門的な技術や知識とともに高いホスピタリティを身につけた警備員を育成し、鉄道会社をはじめ多数の顧客から高い評価を受けている。 「ありがとう」と言われると心が温かくなるんです。 株式会社オリエンタル・ガード・リサーチ 池袋駅勤務 永瀬雅人さん 警備の仕事をしていると、安全・安心は当たり前なので「ありがとう」と言われることはめったにないのですが、車いす利用の方や視覚に障がいのある方のお手伝いをするようになって、この言葉をいただくことが多くなり、励みになっています。サービス介助士を取得する前は、安心してご利用いただくために「お手伝いをしなくてはならない」と義務のように考えていましたが、取得後は、「お手伝いをさせていただく」という想いに変わり、笑顔で接遇できるようになりました。 オリエンタル・ガード・リサーチの各種業務内容 施設警備・交通誘導警備・集金代行 イベント警備・業務請負・人材派遣業務 株式会社オリエンタル・ガード・リサーチ 詳しくはホームページをご覧ください。 http://www.ogr-jp.com 右側のQRコードからウェブサイトがご覧いただけます。 お問い合わせはお気軽に! 03-3839-1877 WEB  http://www.ogr-jp.com P24(誌面構成に対応し、逆順で抽出。P20まで) From the scene of tenderness やさしさの現場から 福祉車両特集 移動の未来を考え続ける人たち。 車を使っていろいろな場所に移動するのは、とても楽しいものです。この「移動の喜び」を、誰もが、いつでも、いつまでも味わい続けるにはどうしたらいいのか。そんなことを、常に考えている人たちがいます。 本田技研工業の中村さんは言いました。「誰もが車に乗れて、楽しめて、行きたい場所に行くためのお役に立ちたい」。トヨタ自動車の大野さんも「誰もがあらゆる場所に出かけられて、思い出をつくれる社会を目指したい」と答えてくださいました。 このお二人のような想いを持った人たちのおかげで、福祉車両は時代とともに進化し、私たちの暮らしに浸透しつつあります。今回の取材を通して、これから先、私たちの移動はもっともっと快適で楽しくなるに違いないと、確信を強めることができました。 ■本田技研工業株式会社 ■Honda Cars 東京中央 南大沢店 ■トヨタ自動車株式会社 ■トヨタハートフルプラザ名古屋 P23 「福祉専用という垣根をなくしたい」 本田技研工業株式会社 作る人 日本本部 販売部 福祉事業室 室長 中村彰宏なかむらあきひろ さん 日本本部 販売部 福祉事業室 主任 尊田秀俊そんだひでとし さん 自操車両と介護車両という両軸から、福祉車両開発を行っている本田技研工業。生活のなかに溶け込み、「福祉」という概念自体を感じさせない車づくりをコンセプトとして、個人ユーザーを中心に、移動する喜びを提供しています。福祉事業室の中村彰宏さんと尊田秀俊さん、そして販売店であるHonda Cars東京中央南大沢店の佐々木祐一さんと松本剛さんに、お話しを伺いました。 普段づかいでも 楽しめる福祉車両 尊田 当社の福祉車両開発への取り組みは、「普段づかいでも楽しんでいただける車両」をコンセプトとしています。例えば、スロープを倒して収納して、多彩に空間をアレンジすることができるように、といった工夫ですね。いずれは「福祉専用車両」という垣根をなくしていきたい、というのが目標です。普段車いすを利用しているお父さんが、気軽に家族を車に乗せて出かけて、みんなが楽しめる。そんな日常生活における喜びの実現に向けて、車両メーカーとして、できることに取り組んでいます。 私たちの福祉車両への取り組みは、1976年、自操車両の開発からスタートしています。最初は、下肢を使えない方でも運転できる「テックマチックシステム」の開発に取り組み、翌年には、「フランツシステム」と呼ばれる、両上肢が使えない方向けの機能を搭載した車両をリリースしました。これは、国内では当社だけがご提供する技術としてご利用いただいています。 誰もが移動の喜びを 感じてほしい 中村 福祉車両開発に限らず、社会にどのように貢献していくかという姿勢は、常に持ち続けなければいけないと思っています。当社では砂浜をキレイにする「ビーチクリーン活動」という活動を実施しているのですが、そこで使われる清掃車両の開発も自社内で行っています。 私たちは、あくまで「移動の喜びを追求する」という、個人に寄り添ったコンセプトの元、開発を行ってきました。当社の基本理念に「人間尊重」という言葉があります。その理念に基づいて、お客さまの生活の質の向上をお手伝いしていきたい。すなわち、福祉車両開発を通して、誰もが車に乗れて、楽しめて、行きたい場所に行ける。そして障がいのある方でも活躍できる。そんな機会や場の拡大をサポートし続け、より多くの人々のお役に立つことが私たちの願いです。これからも、「ホンダにお願いしてよかった」と喜んでもらえるよう、努力を続けていきたいと思います。 中村さん(左)と尊田さん(右)。「これからも移動の喜びのための取り組みを続けます」。 P22 「運転の魅力を提供し続けたい」 Honda Cars 東京中央 南大沢店 売る人 店長 佐々木祐一ささきゆういち さん 営業 松本剛まつもとたけし さん 佐々木さん(右)、松本さん(左)。助手席が回転するため乗降しやすい「FIT」。 アルミスロープで車いすに乗ったまま移動できる「N-BOX+」。 事故を起こした方に 「もうやめましょう」と 佐々木 ホンダには「3つの喜び」というモットーがあります。「買って喜び、売って喜び、創って喜び」というものです。先日、ご高齢のお客さまが事故を起こしてしまいました。新しい車をご提案することもできましたが、「そこに売る喜びがあるのだろうか」という思いから、お客さまと話し合い、車を引き取ることにしました。スタッフには、「私たちの対応が商品」だということを常々伝えています。 運転の魅力は、移動して人と会い、一緒に何かをする、ということ。それこそ、私たちがお客さまに提供し続けていきたいものなのです。 利用する方に合わせた ご提案を 松本 「オレンジディーラー」では、私のようなサービス介助士の有資格者が勤務しています。私も、サービス介助士の研修で高齢者の疑似体験や介助演習をしてからは、利用される方がどういう使い方をしているのか、ご自宅前の道路の広さなどの状況をお聞きして、適したタイプの車種をご提案できるようになりました。同時に、お店のなかだけでなく公共の場でも、率先してお声をかける自信がつきましたね。 オレンジディーラー 「オレンジディーラー」各店では、サービス介助士などの資格を持った専門スタッフを配置して、クオリティの高いホスピタリティを提供している。家庭で使える軽自動車や小型車、助手席回転シート車、さらに車いすごと乗れる車など、幅広い車種を取り揃えており、オレンジディーラーのなかでも、特に設備や展示・試乗車、専門スタッフの充実した店は「マスター店」と呼ばれている。 P21 1960年代から障がい者向け車両の開発を行い、1996年に「ウェルキャブ」という名称で福祉車両を本格展開。現在、個人向け、福祉施設・病院・法人向けと、さまざまなシーンで活躍するラインナップを揃えるトヨタ自動車株式会社。ウェルキャブの企画・開発・販売を手がける大野修一さんと、サービス介助士資格保有者でもある、トヨタハートフルプラザ名古屋の中吉祐一さんに、お話しを伺いました。 作る人 トヨタ自動車株式会社 国内企画部 商品企画室 ウェルキャブグループ長 大野修一おおのしゅういち さん 「誰もが外に出て、楽しめる世界の実現に向けて」 ニーズに幅広く応える 福祉車両「ウェルキャブ」 当社では、障がいのある方はもとより、高齢の方でも何不自由なく移動できるように、という思いから、業界に先駆けて福祉車両の生産を手がけ、近年は「ウェルキャブ」の開発に力を注いでいます。お客さまにとっての車の魅力とは、機能面だけではなく、スタイルや仕様など多岐に渡っています。ですから当社では、できるだけ一般車両と同じように福祉車両も選んでいただきたいと考え、さまざまな車種にウェルキャブを設定できるようにしております。ウェルキャブの最新機能としては、助手席を手動で回転、チルト(傾斜)させ、楽な姿勢で乗り降りできる「助手席回転チルトシート」があります。回転する速度が遅い電動と比べて、雨天時に、シートや乗るご本人、介助される方が濡れてしまうといった問題を解決できます。さらにポルテ・スペイドでは、助手席側のドアが大開口のスライドドアになっていて、駐車スペースがあまりなくても乗降しやすくなっています。 少しでも快適に 車を楽しめる世界に 車いすに乗ったままの移動は、車両の揺れで姿勢が保てないなど、車いすを利用されている方にとって、必ずしも快適とは言えないのが現状です。そこで当社では、「車に乗ったときでも快適に座れる車いす」として、「ウェルチェア」という車いすを開発し、販売及びレンタル事業(※)にも取り組んでいます。また、多目的トイレの場所をナビゲートするアプリを、試験的に東海3県限定で展開しています。今後はよりよい情報の追加やエリアの拡大に取り組んでいく予定です。 私たちは子どもの頃から、おもちゃの車や三輪車、自転車などに乗って、自分の世界を広げてきました。障がいのある方やご高齢の方でも、気軽にさまざまな場所に出掛けて、楽しみ、思い出をつくれる。そんな世界を実現する一助として、私たちの福祉車両やその周辺サービスを活用していただきたいと思っています。(※豊通オールライフがレンタル事業を展開) トヨタ自動車が開発した「ウェルチェア」。上体が安定する、シートベルトが通しやすいなど、車両メーカーならではの工夫が施されている。 P20 「本当に必要とされている車をご案内したい」 トヨタハートフルプラザ名古屋 伝える人 店長 中吉祐一なかよしゆういち さん 常にお客さまの 身になって行動する 当展示場では、勤務している3名のうち、2名がサービス介助士資格を保有しており、残りの1名も近いうちに取得予定です(※)。当店に来店されるお客さまのなかには、利用されるご本人はもちろん、そのサポートをしているご家族もいらっしゃいます。初めての介護で不安を感じている方も多く、私たちが、サービス介助士の知識を生かして移乗や介助の方法をアドバイスさせていただくと、とても喜んでいただけます。また、お客さまによって障がいの部位や程度に違いがありますから、お迎えする際には、お客さまの身になって、こちらがどう接すれば喜んでいただけるかを常に考えるようにしています。 車はとても大きな買い物ですから、慎重に選んでいただかなければなりません。特に福祉車両の場合は、機能や使い心地をじっくり吟味して選んでいただく必要があります。当展示場ではこれからも、お客さまが安心してお話しいただける雰囲気づくりや、サービス介助士の知識を生かしたアドバイスなどを通して、お客さまが本当に必要とされている車をご案内できるよう、ホスピタリティ・マインドを高めて対応していきたいと思っています。 (※2016年1月現在) トヨタハートフルプラザ 「ウェルキャブ」を専門に展示、試乗することができる展示場。2016年1月現在、全国に10店舗が展開されている。プラザ内は車いすでの移動を前提として、トイレも含めたバリアフリー化はもちろん、展示されている車の間隔も広めに取るなど、配慮が行き届いている。また、福祉車両の説明には福祉に関する専門的な知識が必要となるため、ハートフルプラザのスタッフには、サービス介助士資格の取得が推奨されている。 急に倒れたり、跳ね上がったりしないよう、スロープ板ひとつにも細やかな配慮が施されている。 関連会社との連携により、用途に合わせた補助装置の架装が可能。幅広いニーズに応えられる。 P25 誰もが移動を楽しめる世の中へ ますます身近になる福祉車両 福祉車両というと、デイサービスなどで使われるワゴン車を思い浮かべる方も多いかもしれません。医療施設や福祉施設で多く導入されているため、そのイメージが強いですが、現在は個人向けの車種も多く販売されており、なかでも軽自動車は年々右肩上がりで販売台数が伸びています。 福祉車両の種類 福祉車両と呼ばれる車は、大きく2種類に分けられます。 介護車両 トヨタ自動車のシエンタ。車いす仕様に加えて助手席回転チルトシートを標準装備するタイプも。 障がいのある方やご高齢の方でも車を使って移動しやすくなるように開発された車です。シートが回転、昇降、傾斜することで、身体を大きく動かさなくても乗り降りができ、車いすからの移乗もしやすくなるタイプと、車いすごと乗れるタイプがあります。最近は、見た目も通常車種とほとんど変わらず、スタイリッシュに乗りこなせる車種が増えてきました。 自操車両 本田技研工業のフランツシステム。上肢を使わなくても、足元の装置を操作することで運転ができる。(足動装置) 下肢に障がいがある方向けに手でアクセルとブレーキを操作して運転ができる手動装置と、上肢に障がいのある方向けに足で操作して運転ができる足動装置があります。身体の状態に応じて各補助装置を取り付けることができます。日本は海外と比べて自操式車両の普及度が低いとされており、誰もが運転を楽しめるシステムづくりが期待されています。 福祉車両開発の背景 福祉車両の開発が盛んに行われるようになったのは、1981年に国際障害者年を迎え、社会全体で障がいのある人をサポートしていこう、と言われ始めた頃。当初は自操車両の開発に主眼が置かれていましたが、やがて高齢化が社会問題化するにつれて、各メーカーが介護車両の開発にも着手するようになりました。回転型シートやスロープのついた車両などが続々とリリースされ、現在は、電動車いすごと乗れる車両や、車いすを載せない場合にはシートを倒して一般車両と同じように使える車両など、私たちのライフスタイル、ライフステージに合わせてさまざまな選択肢から選べるようになってきました。 トヨタ自動車が1970年代に開発した、ハイエースハンディキャブ。 P31(誌面構成に対応し、逆順で抽出。P26まで) KIZZNA 紲きずな 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」Kizzna 2016 Spring Vol.7 CONTENTS 31 Interview with pioneer 誰もが移動を楽しめる社会へ WHILL株式会社 代表取締役 兼 最高技術責任者 福岡宗明さん 25 ますます身近になる福祉車両 24 担当者インタビュー 「やさしさの現場から」 福祉車両特集 本田技研工業株式会社/Honda Cars東京中央 南大沢店 トヨタ自動車株式会社/トヨタハートフルプラザ名古屋 18 障害者差別解消法について 17 care-fit通信 14 特別寄稿「防災のために企業ができること」 13 教えて先生!成年後見制度について知りたい 12 ボランティア活動TOPICS 11 おも活 10 ケアフィットファーム勝沼レポート 08 生きがいインタビュー 女優 美月めぐみさん 04 ロングインタビュー「速くなりたい。世界の舞台で走りたい。」 パラ陸上競技 女子100メートル 佐藤智美さん 次号予告 『紲Kizzna』vol.8は 2016年5月25日(水)発行予定です。 P30 バリアを打ち破れ Interview with pioneer 誰もが移動を楽しめる社会へ “スマートな移動”を追求する、ハードウェアベンチャーの挑戦 WHILL(ウィル)株式会社は、大手企業に勤めていた若者たちが「誰もが移動を楽しめる社会」を実現するために設立したベンチャー企業。製品であるパーソナルモビリティ「WHILL」は、簡便な操作性、段差や狭い場所での旋回も苦にしない機能性、そして近未来を感じさせるデザインが反響を呼び、ユーザー数を着々と増やしています。創業者のひとりであり、技術部門の統括責任者を務める福岡さんに、同社が目指す理想の社会像や、福祉車両の意義についてお話しを伺いました。 WHILL株式会社 代表取締役 兼 最高技術責任者 福岡宗明ふくおかむねあきさん 1983年生まれ。名古屋大学大学院工学研究科卒。在学時から福祉や医療分野に興味を持っており、卒業後はオリンパス株式会社で医療機器の研究開発エンジニアとして勤務。2012年、杉江理さん、内藤淳平さんとともに「WHILL株式会社」を設立。技術部門の統括を担っている。 P29-28 「つくりたいし、つくれるし、つくるべき」。 ならばやらない理由はない。 ――「WHILL」の魅力を教えてください。 まずはデザインですね。車いすユーザーの方のなかには、見た目なんて気にしない、という方もいらっしゃるのですが、そういう方でも、「WHILL」で近所をひと回りしてくると、「これ、いいね」となる(笑)。これはアメリカのユーザーさんから聞いた話なのですが、以前は車いすで外出すると「MayIhelpyou?(お手伝いしましょうか?)」と声をかけられていたのが、「WHILL」に乗るようになってからは、「Cool!(カッコいい!)」と言われるようになったそうなんです。これはユーザーの方にとって、とても大きな違いだと思います。 ふたつめの魅力として、走破性が挙げられます。大きな特徴は前輪です。「オムニホイール」と呼ばれる仕組みを採用しているのですが、24個の小さなタイヤでひとつの大きな車輪を形づくっています。加えて四輪駆動を採用することで、高い段差も超えられて、かつ小回りが利く。必然的に行ける場所が増えますから、ユーザーは外に出かけたくなります。週に1回しか外出しなかった方が、「WHILL」を購入してからは3回、4回と外に出るようになった、という声もよく聞きます。 ――会社はどのような経緯で設立されたのでしょう。 大学の同期メンバーで卒業後につくったモノづくりサークルが始まりです。それぞれ会社に勤めながら、休日や夜間に集まって自由にモノづくりをしていたのですが、あるとき「途上国でも普及できるような安価な車いすがつくれないか」というアイディアが生まれました。途上国向けのアイディアは結局実現しなかったのですが、その後の調査で、ある車いすユーザーの方から「100m先のコンビニに行くのも諦めている」という話を伺ったんです。 物理的なバリアだけでなく、車いすに乗って出かけること自体にためらいや不安を感じてしまう、そんな心理的なバリアが存在するということに気づかされた私たちは、それなら、「誰もが乗りたくなるような、カッコいい車いすをつくろう」というコンセプトでプロジェクトを立ち上げました。そして、いまの「WHILL」の原型となる試作機を東京モーターショーに発表したところ、とても大きな反響をいただいたんです。 ――それで会社を立ち上げたのですか? いや、その時点では起業はおろか、製品化も頭にありませんでした。メンバーはそれぞれ会社に勤めていましたし、ひとつの製品を世に出すためには、大変な労力がいるということもわかっていましたから。製品化に踏み切ったのは、ある方の言葉がきっかけでした。「本気でやる気がないなら今すぐやめろ。プロトタイプ止まりで市場に出ないなら、期待だけさせて残酷だ」と。そこで立ち上げたのがこの「WHILL株式会社」です。 P27-26 誰もが移動を楽しめる 社会づくりの力になりたい とはいえ、全員が仕事をすぐに辞められる状況ではありませんでしたから、最初は3名でスタートしました。当初は、部品の調達もままならない状況でしたね。部品メーカーさんを訪ねては、この製品の可能性を必死に説明しました。そんなことを繰り返しているうちに、賛同してくれるメーカーさんも徐々に増えてきて、なかには、「共感しました。必ず上司を説得します」と言ってくださる方もいました。たくさんの方が、実績もお金もない私たちに、心意気で協力してくれたんです。そこでできた繋がりは、今でも大きな財産です。 ――福岡さんは、なぜこの会社に参加しようと思われたのですか? 日頃から、エンジニアは人に喜ばれるモノをつくらないと意味がないと思っていました。試作機が反響を得たときに、「欲しいと思ってくれる人が大勢いるのにつくらないのは、エンジニアとして筋が通らない」と思ったんです。自分はこれをつくりたいし、自分たちならつくれるし、なによりつくるべきだと思っている。これだけ動機が揃っているんだから、やらない理由はないだろう、という気持ちでしたね。 それに、私の家系は、エンジニアの血筋なんです。父、祖父、曽祖父と、専門は違えど、代々モノづくりに携わってきました。曽祖父は、日本で初めて国産の機関車を手がけた人だったのだそうです。そんな祖先のフロンティア精神が、自分のなかに眠っていたのかもしれません。 ――「すべての人の移動を楽しく、スマートに」を理念とされています。 「すべての人」というのは、障がいのある人もない人も含めて、老若男女すべてということです。私たちは、誰もが「WHILL」のような乗り物を使って、移動を楽しめる社会を目指しています。 先日、「WHILL」のシェアリングサービスを実施しました。まず、お子さんがこの珍しい乗り物に乗りたがりました。当然、親御さんも一緒に「WHILL」で移動します。それを見た若い人たちも興味を持ってくれて、もちろん車いすユーザーの方からも試乗したいというご要望があって。つまりそこでは、誰が障がい者で、誰が健常者なのかといったことは関係なく、みんなが移動を楽しむ、という現象が起きたんです。まさに私たちが目指している世界でした。これが当たり前の風景になれば、きっと、100m先のコンビニに行くのを諦める人はいなくなる。そう確信しました。 ――福祉車両の現状についてどのようにお考えでしょうか。 介護施設などでヒアリングすると、ほとんどの人が外出はあまりしない、と答えられるんです。なぜなら、外出先で転んだりトラブルが起きたときに、ご家族など介護や介助をされている方の力では助けることが難しいことがある。だから外出を控えているというんです。そんな状況では、みんな息が詰まってしまいますよね。もし「WHILL」のような乗り物で安全に出かけられるようになれば、ご本人の精神的な負荷も減らせるし、サポートされているご家族の負担も減らせる。福祉車両にはそのような役割が期待されていると思っています。 また、日本では、欧米と比べて法規制が厳しい部分があります。例えば、手が動かせるから、という理由で電動車いすの補助を受けられない場合があります。動かせるといっても、女性やご高齢の方の力では、行けるところが限られてしまいますよね。障がいがあることを理由にして、その人の選択肢を狭めてしまうのは、おかしなことだと思いませんか?障がいのあるなしに関わらず、行きたい場所に移動したい、それもできるだけ楽しくスマートに、という気持ちはみんな同じだと思うんです。 ――今後はどのような展開をお考えでしょうか。 近いところでは、GPSやSIMカードを搭載し、ネットで居場所を確認したり、転倒した場合にアラームが鳴る機能などの「見守りサービス」を開発しています。また、将来的には自動走行やAI技術の搭載も検討しています。また、今後は情報インフラの整備がさらに求められていくと思います。例えば車いすで通りやすい道や、使いやすいお店の情報、多目的トイレの位置などの情報を整備して、ネットを通じて提供していく。他社や自治体と協力してなにができるか、積極的に検討していきたいですね。2020年には東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。世界から注目されるイベントに向けて、誰もが移動を楽しめる社会づくりの力になれることを願っています。 若いメンバーが集い、それぞれの得意ジャンルを生かしながら日々前進している。 7.5pの段差を乗り越えられ、後輪を中心にその場で回転することができる。スピードや進行方向は手元のコントローラーで制御。振動も少なく、乗り心地も快適。行きたいところに自由に行ける、未来のパーソナルモビリティだ。 グッドデザイン賞2015グッドデザイン大賞(内閣総理大臣賞)、日経優秀製品・サービス賞2014最優秀賞など、さまざまな賞を受賞。各界から注目されている。 H4 KIZZNA 紲きずな 見えなかった景色が見えてくる「気づきのマガジン」2016 Spring Vol.7 TAKE FREE!! ご自由にお持ち下さい Interview with pioneer 誰もが移動を 楽しめる社会へ WHILL株式会社 代表取締役 兼 最高技術責任者 福岡宗明 担当者インタビュー やさしさの現場から 福祉車両特集 本田技研工業株式会社 中村彰宏/尊田秀俊 Honda Cars東京中央 南大沢店 佐々木祐一/松本剛 トヨタ自動車株式会社 大野修一 トヨタハートフルプラザ名古屋 中吉祐一