障害の社会モデル(共生社会と心のバリアフリー)

日本ケアフィット共育機構

2020年を機に
共生社会
心のバリアフリーという言葉を
様々な場面で見かけるようになりました。

そこで欠かせないのが
“障害の社会モデル”という考えです。

ここでは障害の社会モデルが何故必要なのか、サービス介助士との関わりについてもご説明します。

障害の社会モデルとは

ある人が車いすを利用していました。
そのことだけをイメージしてみてください。
何が障害でしょうか?
“立って歩けない”と答える人がいるかもしれません。
しかし車いすで移動できます。
“高いところにある物に手が届かない”と答える人がいるかもしれません。
しかし物が手の届く高さにあれば届きます。

イメージしている車いす利用者の“障害”の中には、実は、その人の身体的な障害だけで起こっているのではなく、何らかのシチュエーションが合わさって発生しているものがあるのではないでしょうか。

車いす利用者は、例えば、階段など立って歩いて移動することが求められる状況で“障害”が発生したり、“高いところに物が置かれている”という環境の時に“障害”にぶつかることになります。

このように考えると、一般的に“立って歩けない” “目が見えない“ “耳が聞こえない”などの心身機能の制約が“障害”と捉えられがちですが、“階段しかない施設”や“高いところに物をおいた陳列”など、社会や環境のあり方・仕組みが“障害”を作り出しているということが分かります。
この障害の捉え方が“障害の社会モデル”という考え方です。

障害の社会モデル

障害の社会モデル
障害の個人モデル(医学モデル)

障害の原因への捉え方には2つあります。

障害の個人モデル
(医学モデル)

障害の個人モデル(医学モデル)

障害や不利益・困難の原因は目が見えない、足が動かせないなどの個人の心身機能が原因であるという考え方。
階段を登れないのは立って歩くことができないから、車いすを利用しているからで、その障害を解消するためには、立って歩けるようになるためのリハビリなどによる個人の努力や訓練、医療・福祉の領域の問題と捉えます。

障害の社会モデル

障害の社会モデル(医学モデル)

障害や不利益・困難の原因は障害のない人を前提に作られた社会の作りや仕組みに原因があるという考え方。
社会や組織の仕組み、文化や慣習などの「社会的障壁」が障害者など少数派(マイノリティ)の存在を考慮せず、多数派(マジョリティ)の都合で作られているためにマイノリティが不利益を被っている、というマジョリティとマイノリティの間の不均衡が障害を生み出していると考え、社会が障害を作り出しているからそれを解消するのは社会の責務と捉えます。

社会的障壁とは?
社会的障壁の具体例

(表は横スクロールしてご覧いただけます。)

内容具体例
事物の障壁
(バリア)
施設や設備などによる障壁 階段しかない入口、路上や点字ブロックの上に停められた自転車、右手でしか使えないはさみなど
制度の障壁
(バリア)
ルールや条件などによる障壁 申込方法が来店のみ・電話のみなどの受付、同伴者を求めるサービス、墨字(印字された文字)のみの試験問題など
慣行の障壁
(バリア)
明文化されていないがマジョリティが従うしきたり、情報提供など 緊急時のアナウンスは音声のみ、注意喚起は赤色を使う、視覚でしか分からない署名・印鑑の慣習など
観念の障壁
(バリア)
無知、偏見、無関心など “こうあるべきだ”、“~できるはずがない”、“障害者はかわいそう”など

これら社会的障壁の多くはマジョリティが障害者などのマイノリティを意図的に排除しようとして生まれたものではなく、マイノリティを考慮していない、もしくはマジョリティのみ優遇されていることを意識していないためにできているということが分かります。

なぜ、
障害の社会モデルが重要なのか

障害の社会モデルが求められている社会的背景

2006年に国連総会において障害の社会モデルの考えが示された「障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)」が採択され、日本は、2014年に批准しました。
この考え方に基づく対応が法的にも求められ、2016年4月から施行された「障害者差別解消法(別のウィンドウで開く)」は、この考え方に基づいています。
また、2020年を機とした共生社会の実現に向けた方針を記したユニバーサルデザイン2020行動計画(UD2020行動計画)においても、心のバリアフリーを推進するための重要な柱として障害の社会モデルの理解することが示されています。

心のバリアフリー
と障害の社会モデル

“心のバリアフリー”と聞くと、“障害者を思いやる” “障害者を助ける” “障害者と交流する”などといった、慈善的、チャリティ精神に近い意味合いで使われていることが多くありました。

しかし、何故障害者が困る状況が生まれるのか、何故障害者との交流に隔たりができるのか、という社会の仕組みや文化などの観点から障害について考えなければ、心のバリアフリーは部分的なものになってしまうでしょう。

2017年にユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議によって決定された、“ユニバーサルデザイン2020行動計画2020(外部リンク)においても、心のバリアフリーには3つのポイントが重要であると説明されています。

  • 障害のある人への社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという「障害の社会モデル」を理解すること。
  • 障害のある人(及びその家族)への差別(不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供)を行わないよう徹底すること。
  • 自分とは異なる条件を持つ多様な他者とコミュニケーションを取る力を養い、すべての人が抱える困難や痛みを想像し共感する力を培うこと。
心のバリアフリー

共生社会
と障害の社会モデル

現代の社会には障害のある人もない人も同じ社会に暮らしています。
その意味では既に“共生社会”のはずですが、障害者などのマイノリティには生きづらい社会となっています。
その原因が個々人の心身機能の障害ではなく、社会の作りにあることを考えなければ本当の意味での共生社会にはならないことがわかりますね。

障害者差別解消法
と障害の社会モデル

障害の社会モデルの考えに基づいて定められているのが障害者差別解消法です。
この法律はすべての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指すために、2016年4月1日に施行されました。
この法律では、行政や民間事業者に対して障害を理由とした不当な差別的な取り扱いを禁止するほかに、障害者から社会的障壁の除去の意思表明があった際に、過重な負担にならないときは必要かつ合理的な配慮をするように努めなくてはならないということが定められています。
この法律は「障害者」を以下のように定めています。

身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

このように、単に心身機能の障害だけでなく、社会的障壁があわさることで制限を受けてるという障害の社会モデルの考えが取り入れられています。

合理的配慮は事業者側に義務がある

なぜ合理的配慮は
義務なのか?

合理的配慮は、国や自治体などは法的義務、民間事業者は努力義務とされていますが、なぜ合理的配慮は義務なのでしょうか?
“配慮”という言葉を聞くと、思いやりの行為と思われがちですが、合理的配慮は、社会的障壁によって生まれた機会の不平等を正すためのものです。
例えば、車いす利用者が、入口にスロープが無く、階段しかない店を利用しようとしている状況があります。階段しかない入口という障壁を作っているのは事業者側です。
障害を作っているのが事業者側であるとすれば、その原因を取り除くのは障害者自身が努力すべきことではなく、事業者に義務があるということが分かります。

企業組織
と障害の社会モデル

障害の社会モデルの考えが障害者差別解消法などにより、企業にも関係することは分かってきましたが、まだまだなじみがないことかも知れません。
しかし障害の社会モデルの考えが身につけば、実は自分たちにこれまで意識していなかった前提条件や無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)を持っていることに気づくことができ、これまでのあり方を見直し、新しい価値を作り出すイノベーションのきっかけにもなるのです。
先ほど説明した障害を生み出す要因である社会的障壁の多くは、マジョリティが意識しないまま生まれているもので、企業や組織ではそのような無意識の積み重ねがその組織の文化や風土を作っていきます。
しかし、変化が激しく、ITなどにより全世界から多様な価値や人が入ってくる現代では、いつまでも同じ考え方では時代が求める価値を提供することは難しく、常に自分たちの前提条件や固定観念を見直しつづけることが大切で、そのようなときに障害の社会モデルの考えが活きていきます。

サービス介助士
と障害の社会モデル

サービス介助士の学びでは、これまでも障害の社会モデルの考えを紹介していましたが、2020年4月からは障害の社会モデルの考えを更に取り入れた内容になっていきます。
「あらゆる場面でケアをフィットする」ことのできる人であるサービス介助士には、障害者だけでなく様々な人の困りごとに対して応対することができるだけでなく、その困りごとを生み出す背景にも気づいて働きかけることが必要です。

例えば接客などで障害のある方への介助などの応対をする人であれば、“自分たち事業者側が困りごとを作り出している”という障害の社会モデルの視点があることで、障害のある人への接遇もよりその人に寄り添ったものになります。

接客に携わっていない人、例えば設計や管理職の方であれば、障害のある人が使いにくくさせている設計がどこにあるか、マイノリティの人に不利益を与えている制度がないか、などの仕組みの部分に意識を働かすことができるようになります。

また、社会は絶えず変化しており、障害も時代とともに変わっていきます。
同じ人でも状況や環境により障害のあり方も変わります。
そのような時は、ハードや制度ではなく常に人の存在、その時その場で必要なことをできる人、“ケアをフィットできる”サービス介助士の存在が欠かせません。

日本ケアフィット共育機構が目指す共生社会

日本ケアフィット共育機構では“誰もが誰かのために、共に生きる社会”の実現を目指し、サービス介助士の育成をはじめ、“あらゆる場面でケアをフィットする”ことを使命としています。

私たちには全員「ちがい」があります。
その「ちがい」に上も下もありません。
しかし、その「ちがい」によって、格差をつけられている現状があります。
私たちは、あらゆる「ちがい」を超えて、誰もが他の人を支え、その人がさらに誰かを支える、相互に作用しあう暮らしやすい共生社会を創りたいと考えています。

日本ケアフィット共育機構について

サービス介助士
防災介助士
認知症介助士
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