SDGsの取組みと障害者の関係性

SDGsの取組みと障害者の関係性

“誰一人取り残さない”をスローガンに2030年までに全世界で達成を目指すSDGs(持続可能な開発目標)。
近年多くの企業が取り組みを進めていますが、“自社の事業とどのように繋げればいいか分からない”、“社内での理解度をどのように説明すればいいか分からない”といった課題を感じる企業もあるかもしれません。
事業や自社に関係する“人”(ステークホルダー)という観点からSDGsを考えると事業発展との関連性が見えることもあります。
ここでは障害者とSDGsはどのような関係があるかお伝えしていきます。

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障害者の人数

「令和3年 障害者白書」によると、日本の障害者の人数は964万7千人です。

その内訳は、
身体障害者436万人
知的障害者109万4千人
精神障害者419万3千人となっており、重複障害の人もいるため単純な合計にはならないものの、国民の7.6%が何らかの障害のある人という計算になります。

参考:令和3年度版 障害者白書(外部サイト)

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SDGsの17の目標
障害者への企業の取り組みとの関連

それではここではそれぞれの目標において障害者がどのように関連するか紹介していきます。

貧困をなくそう

目標1貧困をなくそう

ターゲット2.2

ここでは自然災害などの環境変動による貧困化の防止や、社会保障などの基礎的サービスへのアクセスなどについて触れられています。
SDGsはそれぞれの目標との相関関係があり、かつ包括的に取り組むものです。
つまり、障害者の雇用創出やバリアフリーなどの環境整備が貧困化の防止にもつながるということなので、後述する他の目標と合わせて考えてみましょう。

1: 貧困を無くそう(外務省のサイト)(外部サイト)

全ての人に健康と福祉を

目標3全ての人に健康と福祉を

SDGsと高齢者との関連性について紹介する記事でもお伝えした、「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」は障害者にも関係します。
UHCとは全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態のことを言います。

参考:厚生労働省(外部サイト)

この目標3に対する障害者への取り組みは高齢者への取り組みと類似する点があります。
高齢者同様に医療機関利用のためのアクセスの向上や移動支援、障害者にも分かりやすい医薬品・健康促進に関する情報提供の工夫、保険商品の説明における情報保障などの企業の取り組みがこの目標に繋がります。

3: 全ての人に健康と福祉を(外務省のサイト)(外部サイト)

関連記事SDGsの企業の取り組みと超高齢社会の関連性(別のウィンドウで開く)

質の高い教育をみんなに

目標4質の高い教育をみんなに

この目標では全ての人への技術的・職業的スキル獲得や高等教育への平等なアクセスについて述べられています。
文部科学省の「学校基本調査」という統計から、学校卒業後の進学率や進路などについて毎年調査がされています。
障害者の高等教育への進学率については、通常学級所属の障害者の進学率についての統計がないので、全日制・定時制高校と特別支援学校の高等部の卒業後の進路を比較してみます。

4: 質の高い教育をみんなに(外務省のサイト)(外部サイト)

卒業後の進路

出典:文部科学省 「令和2年度 学校基本調査」(外部サイト)より日本ケアフィット共育機構作成

全日制・定時制高校卒業者の半数以上が大学へ進学しているのに対し、特別支援学校からの大学進学率はわずか1.7%です。
一方で就職では、全日制・定時制高校は17.8%、特別支援学校は32.0%と逆転しています。
また、進学・就職以外のその他が特別支援学校の卒業者は6割を超えているのは、特別支援学校の在学数は知的障害者が多く、就労支援などの福祉作業所への入所しているためです。
大学等への進学が望ましいとは一概に言えるものではありませんが、このような割合を見ることで、障害者の進学率を含め、全ての人に平等なアクセスがされているかは改めて検討することができます。
SDGsにおける障害者への教育へのアプローチは、大学では障害者の入学受け入れの体制や合理的配慮を含めた応対の検討、民間教育関連企業では障害特性に配慮した学習ツールや学習指導、など、様々な観点から取り掛むべきことがあります。

安全な水とトイレを世界中に

目標6安全な水とトイレを世界中に

多くの障害者が外出にあたってまず調べるのは、目的地及びそのルート上にあるトイレが利用できる環境かどうか、です。
現在バリアフリートイレの普及が進んでいますが、依然として既存の施設では車いすユーザーなどが利用できるトイレが限られていることもあり、誰もが利用しやすい環境やサービス提供において、トイレ設備の改善は大きなポイントと言えます。

6: 安全な水とトイレを世界中に(外務省のサイト)(外部サイト)

働きがいも経済成長も

目標8働きがいも経済成長も

この目標において企業の取り組みが障害者と関連するのは、障害者雇用に関することでしょう。
近年、障害者雇用数は増加しており、厚生労働省の「令和2年 障害者雇用状況の集計結果」(外部サイト)によると、雇用障害者数は57万8292人となっています。
ただし、実雇用率は2.15%で、法定雇用率達成企業の割合は48.6%に留まっています。

8: 働きがいも経済成長も(外務省のサイト)(外部サイト)

令和2年の民間企業の法定雇用率は2.2%、令和3年3月より2.3%に引き上げられ、民間企業の事業主の範囲も従業員45.5人以上から43.5人以上になっています。

障害者雇用促進法の観点から障害者雇用は多くの企業にとって課題になっていますが少子高齢化で労働力が減少する日本においては、企業が持続的に発展するためにも障害者を含めた多様な人が活躍できる環境作りや風土改革が重要になっていきます。

人や国の不平等をなくそう

目標10人や国の不平等をなくそう

この目標で障害者の観点で関連することは、障害を理由とした様々な差別や偏見・慣習があたります。
障害者差別解消法や障害者雇用促進法などの遵守が企業には求められますが、目標8同様に、多様な人の価値観を包摂し、多様なニーズを対応できることで新たな事業機会になることも考えられます。
“誰一人取り残さない”というSDGsの理念と推進の前提として、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包摂)が欠かすことができません。

10: 人や国の不平等をなくそう(外務省のサイト)(外部サイト)

住み続けられるまちづくりを

目標11住み続けられるまちづくりを

公共交通機関や都市空間のバリアフリー化などの取り組みがこの目標と関連します。
現在は高齢者や障害者など配慮が必要な人への対策としてバリアフリー化が認識されることもありますが、SDGs推進における考え方でもある“バックキャスティング思考”で、2030年以降や未来の事業環境から現在を考えてみましょう。
高齢者が30%を超え、移動に困難を感じる人も増えてきます。
企業が提供するサービスの利用者も高齢化が進むことも考えられます。
それ以外にもベビーカーを利用する人や荷物をたくさん運ぶ人などもいます。
その時、多くの人がバリアフリー化の利便性を感じるかもしれません。
このように“障害者”を起点に未来を考えてみると障害者への施策は障害者だけがメリットを享受するものではなく、より多くの人への利益をもたらすユニバーサルなサービスになる可能性が見いだせます。

11: 住み続けられるまちづくりを(外務省のサイト)(外部サイト)

パートナーシップで目標を達成しよう

目標17パートナーシップで目標を達成しよう

今後の社会の高齢化で様々な課題が発生することが考えられますが、既に社会の様々な場面で、社会的障壁により不便さや課題を感じる障害者と接することで、潜在的なニーズの発見や、解決の糸口を発見することができます。
既存の価値観や思い込みによってマジョリティが気づかない課題を持つ障害者をリードユーザーとして開発や改善のプロセスに加わってもらい、障害者や多様な人と一緒に商品開発やサービス品質の改善に取り掛かるアプローチを「インクルーシブデザイン」と呼びますが、SDGsへの取り組みや今後の持続的発展のためにもインクルーシブデザインのような取り組みから多様な人とのパートナーシップを組むことが有効になります。
日本ケアフィット共育機構では、障害者や企業・自治体の抱える課題に対して中立な立場で様々なコラボレーションやコンサルティングを実施しております。
障害当事者のサービス介助士アドバイザーらと共にサービスの見直しにも関わっており、SDGsへの取り組みには、このような外部リソースを利用することも有効です。

17: パートナーシップで目標を達成しよう(外務省のサイト)(外部サイト)

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SDGsで企業が障害者に関連してのまずすべき
3つのポイント

先述した通り、SDGsの推進には、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)が大きく関連します。
D&Iへの取り組みとして障害者関連からの視点でどのようなことをすべきか紹介します。

障害者の特性の理解

障害者、と一言で言っても、視覚障害者や聴覚障害者、車いすユーザー、など様々な人がいます。
視覚障害者といっても全く見えない人、少し見える人、など障害の程度も様々です。
そして、障害についても心身機能の障害だけでなく、環境や周囲の人の偏見などの社会的障壁からくる障害についても理解することが大切です。
サービス介助士では、障害の理解や多様な人への応対を体系的に学び、障害当事者との対話もあり、このようなコミュニケーションの場を持つことが有効です。

法令遵守

D&I 同様にSDGsの取り組みの際に、障害者差別解消法や障害者雇用促進法などのへ理解を全社的に浸透させることが重要です。
SDGsの推進にあたり、まずは社会市民としての責務を果たすことのできる企業であるためにはこのような法律や国際的な条約から逸脱したことが行われないことが前提と言えるでしょう。

関連記事障害者差別解消法で法的義務化される合理的配慮とは(別のウィンドウで開く)

アクセシビリティ

自分が行きたいと思った場所へ自由に行くことのできる移動に対するアクセシビリティだけでなく、その人の自立や平等な機会の獲得という、広い意味で捉え方でのアクセシビリティはその人の尊厳や基本的人権にも関わることです。
物理的な施設改修などの規模の大きなものだけでなく、掲示物や案内表示の見直しや、制度・慣行の見直し、多様な人に応対するための接遇の強化などソフト面においてもアクセシビリティについて取り組むことは多数あります。

SDGsは17つある目標全てに取り組まなければならない、というものでもなく、自社の事業と関連することから着手するすることで、社会課題を解決しつつ、自社の持続的開発を可能にしていくものです。
数あるSDGsの目標を、障害者という“人”の観点から考えることで、企業や自治体とSDGsの取り組みが関連付けやすくなります。

企業や自治体のSDGs推進の支援

日本ケアフィット共育機構が認定・運営する資格である、サービス介助士、防災介助士、認知症介助士はSDGsと超高齢社会において欠かすことのできない考えを学ぶことができます。

日本ケアフィット共育機構では、上記の資格だけでなく、SDGs推進の課題についてもパートナーシップを活かした支援をご提供しております。

関連ページ日本ケアフィット共育機構のSDGsへの取り組み(別のウィンドウで開く)

日本ケアフィット共育機構では、障害者応対やサービス改善、D&I推進の支援だけでなく、そもそもSDGsに対してどのように取り組めばいいのか分からない、といったことに関しても様々なソリューションを提供しております。
事業や予算にあわせ柔軟に対応しておりますのでまずはお気軽にご相談ください。

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