合理的配慮とは?障害者差別解消法で法的義務化されました!

2024年4月に障害者差別解消法が法的義務化されました。
公益財団法人 ケアフィット共育機構は1999年の設立以来「誰もが誰かのために、共に生きる社会」を目指し、25年にわたって活動を続けてまいりました。
その学びから、皆さまの合理的配慮への対応のお手伝いができますので、お気軽にご相談ください。

合理的配慮とは?

簡単に説明すると、合理的配慮とは、障害者が社会の中で出会う、困りごと・障壁を取り除くための調整や変更のことです。
2006年に国連で採択された、障害者権利条約(障害者の権利に関する条約:日本は2014年批准)の条文で盛り込まれたこの考えは、障害者権利条約の実効性を持たせるための国内法でもある、障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)においても取り入れられるようになり、認知が広まりました。
2024年4月に改正障害者差別解消法が施行されました。
これにより民間事業者においても合理的配慮が法的義務化されました。
本記事で、合理的配慮とは何かをお伝えし、事業者としてのサービス提供をどうすればいいのか考えていきます。

社会的障壁を取り除く合理的配慮のイメージ画像

合理的配慮の考えを取り入れた法律「障害者差別解消法」とは?

この法律はすべての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指すために、2016年4月1日に施行されました。
障害者差別解消法の条文外部サイト
行政や民間事業者に対して障害を理由とした不当な差別的な取り扱いを禁止するほかに、障害者から社会的障壁の除去の意思表明があった際に、過重な負担にならないときは必要かつ合理的な配慮をするように努めなくてはならないということが定められています。
この法律は「障害者」を以下のように定めています。

身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

このように、単に心身機能の障害だけでなく、社会的障壁があわさることで制限を受けてるという障害の社会モデルの考えが取り入れられています。

障害の社会モデルについてはこちらで説明しています。

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合理的配慮の意味

障害者権利条約外部サイト(障害者の権利に関する条約)では下記のように述べられています。

「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。

そして障害者差別解消法では、これに付随して行政機関等及び事業者に対し、その事務・事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮(「合理的配慮」)を行うことを求めています。

英語ではreasonable accommodationといい、これが現在、‘合理的配慮’と訳されています。
accommodationには‘宿泊施設’などの他に、‘便宜’や‘用立て’、‘調整’といった意味があり、障害者権利条約の定義から考えると、‘合理的便宜・調整’といった意味合いで考えることが妥当でしょう。

なぜ合理的配慮は義務なのか?

2024年4月1日に改正障害者差別解消法が施行され、民間事業者の合理的配慮提供が法的義務化されました。
“配慮”という言葉を聞くと、思いやりの行為と思われがちです。
‘配慮なんだから思いやりでやればいいのは?なぜわざわざ義務にするのか?’ と思うかもしれません。

合理的配慮は、社会的障壁によって生まれた機会の不平等を正すためのものです。
例えば、車いす利用者が、入口にスロープが無く、階段しかない店を利用しようとしている状況があります。
階段しかない入口という障壁を作っているのは事業者側です。
障害を作っているのが事業者側であるとすれば、その原因を取り除くのは障害者自身が努力・工夫すべきことでも、事業者が思いやりでやるものでもなく、事業者の義務であるということが分かります。
また、英語のReasonable accommodationから‘合理的便宜・調整’と捉えると、その意義がより理解できるでしょう。

合理的便宜・調整のイメージ画像

‘合理的’かどうかはが決めるのか?

合理的配慮、の“合理的”とは、何を、誰の視点から見て“合理的”なのでしょうか。
障害者の立場からの“合理的”でしょうか。
障害者差別解消法において‘実施に伴う負担が過重でないとき’とあるので、事業者の立場からの‘合理的’でしょうか。

ここで再び英語のReasonable accommodationから考えてみたいと思います。
‘合理的’という言葉には‘reasonable’の他に‘rational’という単語があります。
‘rational’は自身の経済的・効率的といった観点の合理性というニュアンスで、
‘reasonable’は自分にも他者にも理にかなった合理性という意味合いがあります。
事業者・障害者どちらか一方の要望や事情のみを考慮するものではなく、双方の建設的な対話から相互に理解・納得し、その手段や方法、代替手段の検討されたものが合理的配慮です。
この意義を考えると、‘合理的配慮’が‘rational accommodation’ではないということが分かります。

必要としている配慮はその人の障害の程度やその場の状況などで常に変化するもので、絶対的なものは存在しません。
サービス介助士でホスピタリティ・マインドや介助の学びにおいて、‘ケアをフィットすること’、「対話」を重要視しているのは、このような理由があるためです。

なぜ合理的配慮を
提供しないことが差別になるのか?

例えば、契約に関する情報を墨字(点字に対して一般的に使われている文字)の書類だけでしか提供しておらず、視覚障害者から契約内容の読み上げや、データによる情報提供を求められたとします。
人によっては、

  • 障害のない他の人にそのような対応を普段からしていないので不平等になるから行わない
  • 全ての人に同じ対応をしているから、要望のあった視覚障害者を差別しているわけではない

ということを思い浮かべるかもしれません。

先述の通り、合理的配慮は、社会的障壁によって生まれた機会の不平等を正すためのものです。
上記の状況で言うと、既存のルールでは、紙の書類を読む人だけに情報提供をしていることになり、すでに情報提供という機会に不均衡が生じています。
このように考えると、視覚障害者に代筆代読などの合理的配慮を提供しないことが差別にあたることが分かります。

機会の不平等のイメージ画像

合理的配慮に関連する法律・条例罰則

合理的配慮という考えは以下のような法律・条例で扱われています。

《国連の条約、国が定めた法律》

  • 国連 障害者権利条約(障害者の権利に関する条約)
  • 障害者基本法:障害者の自立・社会参加支援のための基本的理念が定められ、これをもとに様々な法律、計画が推進されています。
  • 障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律):行政機関・事業者において障害を理由とした差別解消を推進するための法律です。
  • 障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律):平成28年の改正では、合理的配慮が法的義務となりました。

《その他主な自治体における条例》

  • 東京都障害者差別解消条例
    (東京都障害者への理解促進及び差別解消の推進に関する条例):民間事業者においても合理的配慮が法的義務となっています。
  • 千葉県 障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例
  • 大阪府 大阪府障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例
  • 横浜市 横浜市障害を理由とする差別に関する相談対応等に関する条例
  • 仙台市 仙台市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も共に暮らしやすいまちをつくる条例

など

事業者としては‘合理的配慮を提供しないことで罰則があるのか?’が気になるポイントかもしれません。

罰則については法律・条例により定めが異なっています。
例えば障害者差別解消法では以下のようになっています。
まず、「第三章 行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置」に下記のような規定があります。

(報告の徴収並びに助言、指導及び勧告)
第十二条 主務大臣は、第八条の規定の施行に関し、特に必要があると認めるときは、対応指針に定める事項について、当該事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。

そして、この規定について下記のような罰則があります。

第六章 罰則
第二十六条 第十二条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。

ここから分かるのは合理的配慮を提供しないことによる罰則ではありません。
そうではなく、合理的配慮の不提供など差別の事案があった際に、その事業者は報告をする必要があり、この報告を怠ったり、虚偽の報告をしたことによる罰則となっています。
ただし、管轄省庁からの指導・勧告や罰則の前に、その対応についての企業姿勢への世論など社会的制裁がありうることは念頭に置いておきましょう。

関連記事企業の合理的配慮提供の義務に関係する法律・条例

合理的配慮に対する企業の取り組み・事例

まず前提として、合理的配慮は事業者と障害者双方の対話から落としどころを決めることになります。
その上で下記のような事例が考えられるでしょう。

  • 入口に段差がある自店舗で車いすユーザーに対して携帯スロープを出す。
    段差を越える介助をする。
  • 視覚障害者との契約の際に、複数人で確認の立ち合いのもと、契約内容の代読や、契約書記入の代筆を対応する。
  • 講演の際に、聴覚障害者に対して手話通訳者の配置や講演内容の字幕化、要約筆記の対応をする。

など

関連記事障害者差別解消法の合理的配慮 企業・事業者の対策と取り組み事例

合理的配慮提供の流れ

それでは事業者は合理的配慮をどのように提供すればいいのかということを、合理的配慮提供までの流れに沿って解説します。
合理的配慮の提供の流れは以下のようなものになっています。

合理的配慮提供の流れ

  • 環境整備
  • 情報公開
  • 意思表明 / 声かけ
  • 対話
  • 事例の共有・検証・改善

① 環境整備

合理的配慮は、障害者のニーズに応じた個別の対応・調整ですが、
そもそも環境が整っていればその調整も必要がなくなるケースもあります。
そこで必要なことが環境整備です。

環境整備には様々な観点から取り組む領域があります。
最も分かりやすい環境整備は、物理的な障壁を取り除くバリアフリー化です。
例えば階段しかない入口にスロープを設置することなどです。

環境整備は、設備のバリアフリー化のように特定の誰かを対象にしたものでははなく、
不特定多数の人が対象となる取り組みです。

その他にも従業員が障害のある人に対してサポートができるように介助を学ぶ研修を実施することなども環境整備に該当します。
従業員が介助を学ぶことは、サポートを必要とする人に事業者として広く対応できるようつながることから環境整備になると言えます。


② 情報公開

合理的配慮の要請をしやすくすることも、事業者と障害者双方のコミュニケーションをスムーズにするためには重要です。
そのために店頭やホームページ、問合せ窓口などで事前に配慮について受け付けていることや、その事業者がどのような環境整備を行い、どのようなサポートを提供しているかということを予め把握できるように情報を公開しましょう。


③ 意思表明 / 声かけ

環境を整備し、合理的配慮に関する情報を公開したうえで、
実際に障害のある人から合理的配慮の提供を希望している旨の意思表明を受け付けます。

この場面では対応する従業員と障害者の個別のコミュニケーションに入ります。
意思表明は障害のある人本人だけでなく、支援者や家族による代理の伝達も受け付けます。

また、障害者側からの意思表明を待つだけでなく、
困っているようであればこちらから声かけすることも意識します。

合理的配慮の要請に関しては障害者のプライバシーに関わる話題に触れる場合もあります。
合理的配慮の要望を受け付ける際には、伝えやすい環境に移動することや、
コミュニケーションツールを用意することも有効です。


④ 対話

対話は合理的配慮の提供において最も重要となる部分です。
合理的配慮は事業者、障害者どちらかの都合が優先されて決められるものではなく、
双方の建設的な対話によって成立するものです。

過重な負担を伴う場合

事業への影響や費用の程度を総合的、客観的に判断したうえで、要望のある合理的配慮の提供に過重な負担が伴う場合は、対話を通じて、事業者が提供可能な代替案となる合理的配慮を提案します。


⑤ 事例の共有・検証・改善

今後、同様の合理的配慮提供の要望があった際に、スムーズに対応できるように事業者内で事例を共有し、内部で事例を蓄積していきます。
同様の要望が継続的に発生する場合は事業者が提供している環境に
何らか改善が必要なことがあるからであり、環境整備を検討します。

まとめ

合理的配慮と聞くと、思いやりの行為と思いがちですが、例えば自店舗で階段しかない入口などの社会的障壁は、それを取り除くのは事業者の責務であるということ、そして、合理的配慮には正解はなく、対話を通じた個別の調整であるということをお伝えしました。

障害者差別解消法が改正されることで、接客などの業務だけでなく、提供サービスそのものを見直す機会にもなります。
障害者差別解消法の合理的配慮の法的義務化を見据えた対策をご提供しています。

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