02 Shiro Taroshi’s Report

ロシア ワールドカップ観戦
サッカー大好き芸人
シロたろしがお届けする
「ロシアのバリアフリー
⁄ ユニバーサル事情」

掲載日:

皆さんこんにちは。お笑い芸人のシロたろしと申します。
サッカーが大好きで、ロシアワールドカップも6月20日から7月1日の日程で生観戦してきました。すごく楽しかったです!
僕は「ライター芸人」として、かれこれ 3年ほどフリーペーパー“紲”編集に関わらせていただいておりまして、おかげでバリアフリーやユニバーサルといった課題についての関心は、芸人のなかでも随一だろうと自負しております。
そんなご縁もあり、このたび、「リベル・ケアフィット」にて、ロシアのユニバーサル事情についてのレポートを書かせていただけることになりました。前後編に分けてお届けしますので、ぜひご一読いただければと思います!

モスクワの街とシロさん

前回大会のブラジルに続いて
日本を応援するためロシアまで駆けつけました!

前編「ロシアの街のバリアフリーについて」

ロシアといっても広いので、街については、モスクワをサンプルにお話しさせていただこうと思います。モスクワは、言わずと知れたロシアの首都で、ロシアを訪れる人は必ずと言っていいほど立ち寄る街でもあります。

モスクワの街では、やたらと豪華な建物が目につきます。壁には彫刻が施されていて、神殿みたいな柱が立っていて、入口は荘厳な扉で。ああ、美術館があるなあ、と思って近くに寄ってみたら、普通に地下鉄の駅だったり、アパートだったりします。おそらく、日本とは違って、建物をひんぱんに建て替える文化がないんじゃないでしょうか。手間暇かけてつくった築100年くらいの建物を、そのまま使い回しているという印象でした。

モスクワの地下鉄駅

まるで美術館…でも普通の地下鉄駅です。

古い歴史、
だからこそバリアフリーの課題

建てられた時にはバリアフリーは意識していないでしょうから、駅や商業施設には段差も多く、大きな荷物を持って移動するときにはかなりストレスを感じました。また、地下鉄のホームはシェルターがわりになっているそうで、とても深いところまで降りるのですが、ホームに降りるエレベーターがある駅は、僕が見たかぎりありませんでした。

さらに、街の中心地や駅前は基本的に石畳です。車いす利用の人や白杖利用の人にとっては、ロシアの街にはかなりのバリアがあるのではないか、というのが率直な感想でした。実際に、ロシアで車いすや白杖利用の方はそこまで多くは見かけませんでした。おそらく街には出ないか、車が主な移動手段なのでしょう。

ただ、障がいのある人たちへの配慮は随所に見られました。駅には障がい者用の入り口が別に設けられており、必ず車いす利用者用のトイレもありました。(開き戸引き戸なのが残念!)また、駅の一角に障がい者用の休憩所が設けられているなど、今ある設備を障がいのある人も使えるように工夫する意識は見えました。

駅の車いす使用者用トイレ

駅の車いす使用者用トイレが。
しかし開き戸なので使いにくい設計。

スタジアム内のバリアフリーは?

一方、スタジアムには、このワールドカップに向けて新しく建てられたり改築されたりしているため、現代的な配慮が多く取り入れられていました。障がい者用ゲートの存在はもちろん、ボランティアスタッフが車いす利用者に寄り添って障がい者用のエリアに案内していましたし、売店にも障がい者優先窓口があったほどです。(これは日本では見たことがないので、ぜひ取り入れて欲しい!)

障がいのある方用の窓口

障がいのある方用の窓口。
普通の窓口よりカウンターが低くなっています。

車いす利用者用の観覧スペース

車いす利用者用の観覧スペースも広く設置されています。車いす利用者スペースと介助者用と思われるいすが交互に配置されており、日本でもなかなか見かけない設備だと思います。一方で、車いす用スペースと椅子が交互に配置されていて、車いす使用者同士で観戦しようとするといすを隔てるため距離が出てしまいます。これは、車いす使用者は介助者と一緒に観戦する、という思い込み、“心のバリア”の一種といえるかもしれません。ロシアの街なかでも、車いす利用者がひとりで移動している光景はほとんど見かけませんでしたし、ロシアでは「障がい者は介助者と一緒に行動する」のが考え方の根っこにあるのかな?と感じました。

ロシアのバリアフリー事情から考える日本のこれから

スロープ

階段にはスロープがありましたが、
車いすで上るには勾配がきついです。

これは僕の一方的な推測ですが、ロシアは「一応君たちの居場所を作ってあげているよ」というスタンスから「共生できるようにバリアを減らしていこう」というスタンスへの過渡期なのではないかと思います。実際に、電車とホームの隙間を埋めるタラップを使っているところも見かけましたし、ターミナル駅には車いすで乗れる大きさのエレベーターも設置されていました。

2020に向けて日本が取り組むべきこと

今回ロシアを旅してみて、日本のバリアフリー設備はかなり進んでいるんだな、という感想を持ちました。ただ、やはり古い建物や駅などには無理にバリアフリー化を進めようとするあまり、「これは実用的ではないな」という点が散見されます。できれば、普段その場所を利用する僕たち一般市民の声を吸い上げてくれるような仕組みがあるといいかもしれないですね。

それから、言葉の問題。僕にとってのロシア語がそうだったように、ほとんどの外国人にとって、日本語は未知の言語です。日本では、駅や空港は英語や中国語のサインが充実していると思いますが、街のお店だとまだまだ多言語対応とは言えないですよね。例えばレストランだったらメニューの英語版を用意する、簡単な指差し会話ツールなどを携帯しておくといった工夫はあっても良いのではないでしょうか(これは個人でもできそうですよね)。僕も、ロシアの小さな定食屋で、英語メニューいる?と出してもらえたときは泣くほど嬉しかったですから。

後編「ロシアのホスピタリティについて」に続く

シロたろし さん

ライタープロフィール

シロたろしさん

トゥインクル・コーポレーション所属のピン芸人。
サッカーが大好きで、日本代表と生まれ故郷のJリーグクラブ「ザスパクサツ群馬」を心のチームとして応援している。ワールドカップ現地観戦はドイツ、ブラジルに次いでロシアで3カ国目。
芸人活動のかたわら「ライター芸人」として、さまざまな冊子やWEB媒体で取材、ライティング、編集の仕事に携わっている。
フリーペーパー“紲”編集員のひとりでもある。

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