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※本記事はヨミドクターで連載している『街で障害のある人と出会ったら~共生社会のマナー』外部サイトの内容を掲載しております。
サービス介助士インストラクターの冨樫正義です。今回は以前のコラムに引き続き、認知症と思われる高齢者への応対についてです。
ここ数年、認知症高齢者の 徘徊(はいかい) が原因と思われる事故のニュースをしばしば耳にします。高齢者が行方不明になったという行政の無線放送を聞くこともあります。
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/fumei/H29yukuehumeisha.pdf外部サイト
認知症の症状により、自分がどこにいて、何をしたいのかわからなくなって徘徊につながるケースは、生命に関わることもあり、とても危険です。そうなる前に、気が付いた人が声をかけ、身の安全を確保したいところです。
では、なぜ認知症の人は徘徊するのでしょう。徘徊という言葉には、「あてもなく歩き回ること」という意味があるため誤解されがちですが、実は、認知症による徘徊の場合、何かしらの理由があって歩いていることが多いのです。ご自身の目的に向かって歩いている場合も多く、一見して徘徊とは思われにくいこともあります。
認知症の症状には、基本的に誰にでもみられる「中核症状」と、人によって異なる「行動・心理症状(BPSD)」があります。
中核症状とは、認知症の中心となる症状で、記憶力の衰えによる「記憶障害」、今いる場所や時間、いつも顔を合わせている人が誰か分からなくなる「見当識障害」や「判断力の低下」などがあります。
「行動・心理症状(BPSD)」は中核症状にともなって起きる二次的な症状で、個人差があり、要因には「不適切な環境」「不適切なケア」「その人の性格」「感染症や脱水などの身体的な疾患」「薬の副作用」などが考えられます。複合的な要因で起こることもあります。
徘徊も行動・心理症状の一つです。
中核症状の記憶障害により、今住んでいる家の記憶が抜けてしまい、幼少の頃に住んでいた家の記憶しかない場合、その人の置かれた環境や性格が作用して、そこに行こうという行動につながります。
仕事を引退した記憶が抜けていれば、仕事に出かけようとします。
家を出たものの、記憶障害により出かけた目的を忘れ、見当識障害により今いる場所も分からなくなり、慌てて歩き回ってしまう……
これが徘徊となります。このような時の心理状態が不安でいっぱいなのは、想像できますね。
実際、街中で不安な様子の高齢者に出会った際は、どのように声をかければいいのでしょうか。
まずは笑顔で近づきましょう。
そして「こんにちは。いいお天気ですね」など、差し障りのない言葉をかけてみましょう。そのうちに落ち着いてきて、何かしらの記憶が戻る場合もあります。
急に「大丈夫ですか。交番に行きましょうか」などと言うと、かえって不安を与えてしまいパニックになることもあるため、注意しましょう。
椅子に座らせるなど、落ち着いた環境で話すように努めれば、外出した理由や家族に関する話が聞けることもあります。身に着けているものから住所がわかる場合もあります。徘徊だとわかったら、「一緒に道を尋ねに行きましょうか」と、さりげなく交番や駅の事務所に誘導します。
超高齢社会の日本において、認知症は誰にとっても無関係ではありません。
認知症になっても住み慣れた地域で安心して暮らせるためには、地域の人の理解が不可欠です。
身近に認知症の方がいる場合は、いざという時に相談できるよう、地域包括支援センターや社会福祉協議会、自治体の担当課などの連絡先も調べておくと安心です。
(冨樫正義 サービス介助士インストラクター)
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