02 障害者の経験から防災を考える

3.11東日本大震災から10年 障害者の経験から防災を考える②
- 中途失明した翌年が3.11だった視覚障害者 -

3.11東日本大震災から10年 障害者の経験から防災を考える②- 中途失明した翌年が3.11だった視覚障害者 -

防災介助士インストラクターの冨樫正義です。東日本大震災から10年が経過しようとしています。東日本大震災では障害のある人の死亡率が被災住民全体の死亡率の約2倍に上ったとのデータもあります。その時何が起こっていたのか、障害のある人を取り巻く環境について、この10年で変わったこと、変わっていないことを3回にわたり、当事者のお話しからひも解いていきます。
第二回目は視覚障害者でサービス介助士アドバイザーの木暮雅寿さんです。

周囲に迷惑をかけるかもと考え在宅避難をした

ーー東日本大震災が起こった時の状況を教えてください。

木暮さん糖尿病治療のため、2010年11月に入院していましたが、退院し、リハビリセンターへの見学などをして、社会復帰への準備をしている最中でした。
3月11日の震災時は一人暮らしのアパートにいて、ちょうど食事中でカレーを食べているところでした。カレーが飛び散らないように急いで口に入れたことを覚えています。あまりに強い揺れでアパートがつぶれるかもと思いましたが、部屋は問題ありませんでした。
その後停電もなく、ラジオも使えましたので、ラジオで情報収集をしました。情報源があったことは、とても助かりました。しばらくして、お隣の方が一緒に避難しようと声をかけてくれましたが、ラジオの情報から、避難所はパニック状態であることが想像でき、サポートしてくれる人はいるのか、トイレは視覚障害者が一人で使える状態なのか、介助者がいない状態で自分がいくことで周囲に迷惑をかけるのではないか、などを考えた結果、部屋に留まることにしました。当時は週に3日ヘルパーさんに来てもらっていましたが、ヘルパーさんとも連絡が取れたこともあり、家にいた方が安心だと判断しました。
しばらくは外の状況が分からず、ヘルパーさんに買い物などをお願いし、腎機能障害による人工透析は病院の送迎バスを使用して通院していました。

外出時には予備の白杖を持つようにした

ーー東日本大震災後に自身で備えたことはありますか

木暮さん外出する際は、リュックサックに予備の白杖を入れています。
白杖は混雑した状況では使用しにくく、多くの人とぶつかり、蹴られたことで折れたこともありますし、ぶつかった拍子に白杖を落としてしまい、踏まれて折れたこともあります。白杖がないと単独での移動が難しいため、いざという時のために予備を持っています。
また、糖尿病の薬と透析の手帳も入れています。通院している医療機関で治療が行えなくなった場合、他の医療機関においてスムーズに透析治療が行えるように治療内容が記載してあります。
その他、白杖を使用していなくとも周囲に視覚障害者であることを認識してもらうために「視覚障害者」と記入されているビブスを入れています。

人工透析に行けなくなることで命に関わる

ーー災害時一番の困りごとは何ですか?

木暮さん人工透析に行けなくなることです。現在、週3日透析をしに病院に通っていますが、災害により通っている病院が使用できなくなったり、通えなくなると命に関わります。
なんとか薬で3日間はしのげますが、それ以上は厳しいので、自分で透析をしてくれる病院を探すしかありません。

※人工透析療法とは
腎不全のため体内にたまった老廃物や水分を排出するために、人工的に血液の浄化を行うこと。週3回行い、1回の療法で約4~5時間の治療時間を要する。

支援の手を握るために

ーーこの10年で変わったことはありますか?

木暮さん災害時に自分は周囲の人に手間をかけさせてしまう立場であり、避難所等で役割を果たせない立場であることが心苦しく思い、優先に避難誘導してもらわなくとも構わないと考えていましたが、防災のイベントで知り合った災害ボランティア組織のリーダーから「目の前に助けられる人がいるならば、まずはこの手を差し伸べる。ただ、この手を掴もうとしてくれるのか、握り返してくれるのかはその人による。」と言われ、命を懸けて支援してくれる人のためにも、最低限の命を守る対策は自分でしなければならないと思うようになりました。


疾患や障害のある人の命を守るため
組織や地域社会ができることは?

2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震では大規模な停電が生じ、災害拠点病院を含む、200以上の病院で停電しました。このことで、電気が必要な酸素療法や人工透析を行っている人は不安な思いをしました。
2018年の調査では全国での透析患者数は339,841人に達しています。
災害時に疾患を抱えている人が命を守ることを、自己責任だけにするのではなく、社会全体の問題として医療機関、行政、企業が協力・準備していくことが求められています。
防災には自助・公助・共助、それぞれが欠かすことのできない要素です。
多様な人が暮らす・利用する地域や組織には防災のあり方においても多様な対応が必要とされます。
防災介助士では高齢者や障害者等“避難行動要支援者”の応対を体系的に学ぶことができます。
日ごろから意識することで地域や組織の防災力は強くなります。


防災介助士

防災介助士では、災害とは何か、を学び、高齢者や障害者など、災害時に配慮を必要とする、避難行動要支援者への応対について学ぶことができます。
防災においても忘れがちな多様な人への対応、バリアフリー対応についてしっかり備えておきましょう。

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木暮 雅寿(こぐれ まさとし)さんプロフィール
2010年に糖尿病からの合併症により失明。
コールセンターでの電話応対の品質管理や新入社員の電話研修、社員面談など社内で幅広い業務に従事している。
サービス介助士アドバイザー。


【シリーズ】3.11東日本大震災から10年 障害者の経験から防災を考える


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